本年のワールドカップが閉幕してからはや4ヶ月が経ったが、今でもブラジル人の記憶に強く残っているものを一つ挙げるとするならば、日本代表の試合後、日本の観戦者の方々がゴミ拾いを行ったあの光景かもしれない。誰の出したものであるかどうかに関わりなく、自主的にゴミを片付ける日本人の姿は、ブラジル国内外の報道で取り上げられるなど、大きな注目を浴びた。これは日常的に競技場でサッカー観戦に親しんでいるブラジル国民の目には、普段見られない光景であっただけに、より一層の衝撃として映ったことだろう。
日本代表の試合はアレーナ・ペルナンブコ(レシフェ)、アレーナ・ダス・ドゥナス(ナタル)、アレーナ・パンタナール(クイアバ)の3カ所で行われたが、そこで邦人サポーターが、応援に用いた青い袋を利用して試合中に出たゴミを拾ったというニュースが「グローボ」電子版や「フォーリャ・デ・サンパウロ」電子版などのブラジルの有力メディアをはじめ、各地の地域紙などで取り上げられた。「日本人が教養を顕示」「日本人の連帯」「日本人応援者が教育の『ショー』を披露」「拍手」など、日本人の公衆道徳や教育について高く評価する内容の記事が多く見られた。
(右写真:ニュースサイト、グローボのスポーツ専門ページ掲載の記事)
7月11日、リオデジャネイロ州政府の環境局において、ワールドカップの試合後に清掃活動を行った全ての日本人を対象として、感謝状の授与が行われた。授与にあたってカルロス・ポルチーニョ環境局長は、その行動をもってブラジル人に自発的な形での環境保全の大切さを伝えたとして、これら「持続可能な応援」を行った日本人観戦者に対する謝意を表明し、また、州政府としてもこの例を見習い、州民の環境意識を高めるための政策を行っていきたい、との意気込みを述べた。式典には、ブラジル及びリオデジャネイロ州在住の日系コミュニティの代表として、鹿田リオデジャネイロ州体育文化連盟会長、松浦リオ日系協会会長、高尾リオ日伯文化協会副会長、小林リオ日本商工会議所会頭、髙瀨前在リオデジャネイロ総領事が出席した。
表彰に際し、髙瀨前総領事は教室掃除の習慣などを挙げながら、今回の日本人サポーターによる行動が、自らの生活する空間を他人ではなく自らが綺麗にするということを学ぶ、日本の伝統的な教育文化に由来していること、また、見ず知らずの外国人に対しても分け隔てなく優しく接してくれた、ブラジル人のホスピタリティに対する恩返しの気持ちから発したものでもあることを説明した。
表彰状仮訳:
「持続可能な応援」への特別な感謝
リオデジャネイロ州環境局はここに、2014年ワールドカップブラジル大会に参加し、清掃活動を行った日本人観戦者を表彰する。スタジアムにおける日本人グループによるこの行動は、環境保全に関わる諸活動を振興し、奨励するものである。
また、この式典の様子はスポーツ専門チャンネルで生放送のリポートが行われるなどし、大きく取り上げられた。
世界有数の観光地であるリオデジャネイロ市では、2016年のオリンピック開催を控え、環境問題への対応が課題の一つとなっている。同市は昨年、他の大都市に先駆け、路上のゴミのポイ捨てに罰金を科す「ゴミゼロ法」を施行した。リサイクル促進のために、ゴミ分別の啓発活動も盛んに行われている。このように、リオデジャネイロでは環境保全の意識向上が特に大きな話題性を持つテーマとなっている。
リオ市内に最近新しく出店したスーパーマーケットに設置されている分別ゴミ箱
国際協力機構(JICA)は、ブラジル開発商工省及び全国工業職業訓練機関(SENAI)と共同で日伯技術協力プロジェクトとして「造船業及びオフショア開発人材育成プロジェクト」を9月より開始した。
ブラジルでは、2005年以降、南東部沿岸(オフショア)における超深海油田(プレソルト油田)の発見が相次いでおり、ブラジル石油公社(Petrobras)は2020年までに国内の石油・LNG生産のうち約30%がプレソルト油田から採掘されると試算している。このプレソルト油田の開発にあたって2020年までに約10兆円規模の生産開発用の船舶が新たに必要とされているが、増大する船舶需要を支えるための造船技能者の不足が大きな課題となっている。このため、ブラジル政府は造船産業における技能者の人材育成を量・質の両面で底上げするための技術協力の実施を日本政府に要請していた。
10月初めには、日本の国土交通省から長期専門家として重入(しげいり)氏が派遣され、約4年間にわたるプロジェクトが本格的に始動することとなった。本プロジェクトでは、開発商工省に対する造船産業政策に関する能力開発を行うほか、溶接工等の造船技能者の養成を行っている全国工業職業訓練機関(SENAI)の中核指導者に対し、日本の造船所等での研修を通じて指導技術の向上を図る等、ブラジルにおける造船技能者の能力向上を目指す。造船分野においては、日本の大手造船企業のブラジルへの進出が相次いでおり、技術協力の成果がこうした日本企業へ裨益することも期待されている。
写真:SENAIにおける溶接訓練の様子(写真提供: 渋谷敦志/JICA)
(1)10月5日(日),ブラジル大統領選挙が実施され,ルセーフ大統領は41.59%(約4千327万票),ネーヴェス候補は33.55%(約3千490万票)を得票し,両候補が26日(日)に行われる決選投票で争うこととなった。事故死したカンポス候補を継ぎ,一時はルセーフ大統領を凌ぐ勢いを見せたシルヴァ候補は21.32%(約2千218万票)を得たが第3位に留まり敗退した。
(2)各候補者の得票数を州別で見ると,北部・東北部及び南部・中西部・南西部の間で明確な差が出た。具体的には,ルセーフ大統領が優勢であったのは北部と東北部に位置する15州であり,特にピアウイ州(71%),マラニャン州(70%),セアラ州(68%)では極めて高い得票率を得た。ネーヴェス候補については,主にサンパウロ州を含む南東部,南部及び中西部に位置する9州で多数を占め,特にパラナ州(50%),サンタカタリーナ州(53%)での得票率が50%を超えたほか,サンパウロ州では44%の得票率を得ている。
(3)なお,在外投票を行った約14万1500人の有権者の間では,ネーヴェス候補が49.5%,シルヴァ候補は26%,ルセーフ大統領は18.35%の得票数であり,国内とは構図が異なっている。
(1)10月26日(日),当国で大統領選挙の決選投票が実施され,与党PT候補のルセーフ大統領が51.64%(約5450万票),野党PSDB候補のネーヴェス候補が48.36%(約5104万票)の得票率(何れも有効票)を獲得し,伯の民政移管以降最も僅差となる3.28%(約346万票)の得票差でルセーフ大統領が逃げ切り,再選を決めた。
(2)ルセーフ大統領は27州中15州で勝利を収め,貧困層が集中する東北地域ではルセーフ大統領は72%,ネーヴェス候補は28%の得票率であり,北部においても,ルセーフ大統領が57%の得票であったのに対し,ネーヴェス候補は43%とルセーフ大統領が優勢であった。他方,ネーヴェス候補は,経済都市が集中し,比較的裕福層が多い南東部(ネーヴェス候補:56%,ルセーフ候補44%),中西部(57%,43%),南部(59%,41%)で勝利し,特にサンパウロ州ではネーヴェス候補64.3%,ルセーフ大統領は35.7%の得票率であり,ネーヴェス候補が圧勝した。なお,両候補の出身州であるミナスジェライス州においては,ルセーフ大統領は52.4%,ネーヴェス候補は47.6%と約50万票の差を付けてルセーフ大統領が勝利した。
(1)10月26日(日),ブラジル大統領選挙決選投票にて再選を果たしたルセーフ大統領が以下のとおり勝利宣言を行った。
全ての伯国民、そして連立党幹部等に感謝申し上げる。特に、ルーラ元大統領に対して心からの感謝を申し上げる。全ての伯国民に対して、自分が国、祖国そして国民の将来のために捧げることを誓う。今回の選挙キャンペーンを通じて国が二分されたとの見方があるが、自分は信じていない。今回の選挙キャンペーン中に行われた様々な議論を通じて、より良い未来そして国を前進させるためのエネルギーが生まれたのである。
第2期政権では、対話をより積極的に行うことを約束する。今回の選挙で自分が再選されたことは、有権者による、より良い政府への変化に対する期待に票が集まった結果と考えるので、次期政権を通じて、第1期政権よりも遙かに良い大統領になりたいと思う。
今回の選挙で最も聞かれた言葉は「変革」であった。このため、第2期政権では、大きな変革を実施したい。市民社会の全てのセクターとの対話を通じて、現状の問題の解決法について議論し、迅速に解決を図りたい。改革の中で最も重要なのは政治改革である。政治改革に関する国民投票を行い、議論を深めることで、正当な政治改革を実施していきたい。
政治改革のみならず、一層の汚職撲滅にも邁進したい。また、経済に関しても、経済成長の回復をはかり、雇用や所得水準の上昇を保障するとともに、産業強化を図りたい。また、インフレを抑え、また財政再建に係る責任を果たす。仕事・雇用に価値を与え、女性、黒人、若者に優しい社会を創りたい。そして教育、文化、科学、イノベーションを重視して政策を行いたい。
(2)また,アエシオ・ネーヴェス候補は敗北宣言を行い,同宣言の中で有権者や支援者に対して感謝の意を述べるとともに,ルセーフ大統領の成功を祈念するとともに,ブラジルが一つになって当国の優先課題に取り組んでいくよう新たな期待を共有すると旨述べた。
(1)10月27日,スウェーデンのサーブ社はブラジル政府と次期戦闘機グリペンNG36機について54億米ドルの販売契約の締結を発表した。この契約はブラジル産業への技術移転を含む今後10年間の産業協力契約であり,本契約にはグリペンNG戦闘機36機のほか,システム及び関連装備の開発・生産が含まれている。2019年から2024年の間に伯空軍に引き渡される計画となっており,ブラジルはスウェーデンと並んで,次世代型のグリペン戦闘機を運用する最初の国となる。
(2)36機のグリペン戦闘機は,ゴイアス州アナポリスに所在する第1防空群に配備され,空域監視,識別,攻撃等の防空任務に就く計画である。首都防空を担うこの同部隊は,ミラージュ2000戦闘機が老朽化で除籍された2013年12月に保有する主力戦闘機を失い,現在はミラージュ2000戦闘機より性能の劣るF-5戦闘機を運用している状況である。2016年のオリンピック時に首都防衛任務を達成するため,現在,旧式のグリペン戦闘機をスウェーデン空軍から借用するための交渉が続いている。伯空軍によれば,新戦闘機が引き渡されるまでの間,ブラジル政府は12機のグリペンC/D戦闘機を一時的に借用することが可能であるが,金額や協定内容については現在政府内で協議中である。