1 ベレン大都市圏は、近年の急激な人口増加により人口220万人を超えるブラジル国内でも有数の都市部となり、中心部には20階以上の高層ビルが乱立するようになった。それに伴い犯罪も増加しており、また、管内にはブラジル国内三位の規模を有する約39,000人(平成24年度時点)の日系社会があり、ベレン市内のみならず、トメアスを始めとする州内各地の移住地に居住しているが、犯罪は大都市圏のみならず地方部において増大している。
例えば、ベレン近郊の代表的移住地であり、ベレン大都市圏を構成するサンタイザベル・ド・パラー市周辺(ベレン市から約50km)でも、2~3年前より在留邦人(永住者)や日系人農業者の住宅を中心に侵入強盗被害が連続的に発生していたが、今年に入り、後述のとおり、「ニッポン・オペレーション」という日系社会と州警察当局との連携で犯罪者の一斉逮捕につながる成果があり、日系社会における犯罪取締りの好事例となった。このような背景から今般、汎アマゾニア日伯協会のイニシアチブで、パラー州公安局による本年2回目の安全対策セミナーが日系社会の安全に対する意識の向上と対策の強化を図るとの目的で、サンタイザベル・ド・パラー市で開催された。
また、本セミナー開催の背景には、当館とパラー州公安局との日頃からの緊密な関係、ロッシャ局長の日系社会に対する極めて好意的な配慮があった。
2 セミナーは、9月27日(金)15時より18時30分まで3時間半に亘り開催され、トメアス、カスタニャールを含む州内陸部を中心に約60名の日系社会関係者が参加し、熱心な意見交換が行われた。
州側より、治安当局の最高責任者であるロッシャ公安局長を筆頭に、サンタイザベル文民警察署長など地元警察幹部が参加した。冒頭、ロッシャ局長より、地域の犯罪動向、治安対策に関する州政府の取り組み、日系社会との連携による捜査オペレーションの好事例の紹介などが行われた。
具体的には、以下の点につき説明があった。
(1)パラー州全域での警備体制について、圧倒的な警官の不足を改善すべく努力しているが、10月以降、然るべき訓練を受けた文民警察官、軍警警察官をそれぞれ1000人規模で増員するとともに、退役警官の再雇用を促進する予定であり、警備車両、装備の充実についても積極的に行っており、日系移住地においても、警官の増員、パトカーの追加配置などの改善が見られるとの見通しが立っている。
(2)ブラジル全国で問題となっている麻薬取引関連の犯罪については、件数的には僅かながら減少しているが、押収量は増加している(10月中旬には500キロを超えるコカインがベレン大都市圏内で押収された)。麻薬はあらゆる凶悪犯罪に繋がるものであり、若年層の間でも蔓延しつつあることから、教育面を含めた重点的な取り組みが進められている。
(3)治安の改善は警察だけで行われるものではなく、地域社会全体で取り組むべき課題であるとの考え方から、警察、教育、保健衛生の各行政機関が連携して社会環境を整備するUPP事業(UNIDADE DE POLICIA PACIFICADORA)も州内全域で徐々にではあるが進められている。
3 ダマセーノ文民警察サンタイザベル署長からは、サンタイザベル市周辺の日系人を標的とした侵入強盗で、犯人逮捕に至るまでの経緯が説明された。また、右逮捕にあたっては本年1月以降、現地日系社会との連絡会を頻繁に設け、警察と日系社会が緊密に連携する捜査活動「ニッポン・オペレーション」を展開したことが功を奏したとの報告があった。同オペレーションでの犯人逮捕後、類似事案は発生していないことから、確認されただけでも被害者数20名以上に達していた日系人を狙った一連の事件は、同グループの犯行であったと推測されるとの説明があった。
更に、同署長より、今回のオペレーションの教訓として、以下の分析結果が提示された。
(1)犯人側は、日系人(若しくは在留邦人)を、換金性の高い日本メーカーの電化製品や、自宅に多くの現金を保有している格好の標的であると見なしていた。
(2)日系人は行動パターンが規則的で抵抗することが少なく、かつ、警察に届け出ず泣き寝入りすることが多いため、逮捕される可能性が低いと考えていた。
(3)一連の犯行は一定の時間帯に集中し、その手口も同一であった。
重要な点は、被害にあった日系人が警察を信頼して被害届を提出したことと、文民警察、軍警察、連邦警察の三者の連携が確保されたことであると考えられる。犯罪は、仕事を終えて帰宅する18時から20時の時間帯に集中的に発生していること、帰宅時は注意が散漫になるので降車時が最も危険であることなど、犯罪の共通性も明らかになった。
4 今回のセミナーは、総じて地元の日系社会を対象としたものであったが、ロッシャ局長を始めとする州公安局幹部の様々な指摘は、ベレンやブラジルの他の地域の在留邦人や日系人にとっても有益なものであったと考えられる。
また、ロッシャ局長他が述べていたように、在留邦人の皆様におかれても、万が一被害に遭われた際は、各警察署へ被害届の提出をお願い致したく、防犯対策についても日頃から注意して頂きたい。
なお、パラー州治安当局がまとめた、過去5年間のベレン大都市圏(ベレン市、アナニンデウア市、マリトゥーバ市、ベネビデス市、サンタイザベル・ド・パラー市、サンタ・バーバラ市)における主要犯罪の発生件数は下記のとおり。
犯罪種別 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
犯罪認知総件数(件) |
127,896 |
121,984 |
200,592 |
193,888 |
173,612 |
(内訳) |
|
|
|
|
|
対物犯罪 (件) |
77,921 |
66,907 |
147,515 |
140,353 |
124,738 |
窃 盗 (件) |
22,293 |
19,403 |
48,558 |
49,661 |
44,349 |
強 盗 (件) |
43,728 |
37,898 |
89,353 |
80,748 |
72,050 |
強盗殺人 (件) |
113 |
101 |
120 |
57 |
61 |
その他 (件) |
11,787 |
9,505 |
9,484 |
9,887 |
8,278 |
対人犯罪 (件) |
43,352 |
47,434 |
46,238 |
46,690 |
42,262 |
殺 人 (件) |
1,057 |
1,169 |
1,490 |
1,076 |
1,043 |
傷 害 (件) |
15,735 |
15,814 |
14,563 |
14,431 |
12,577 |
その他 (件) |
26,560 |
30,451 |
30,185 |
31,183 |
28,642 |
性犯罪 (件) |
781 |
964 |
929 |
922 |
931 |
強 姦 (件) |
264 |
447 |
815 |
804 |
840 |
その他 (件) |
517 |
517 |
114 |
118 |
91 |
その他の犯罪 (件) |
5,842 |
6,679 |
5,910 |
5,923 |
5,681 |
出所:パラー州公安局
(ア)シナリオ1
ルセーフ大統領(PT) 41%
ネーヴェス上院議員(PSDB) 14%
カンポス州知事(PSB) 10%
(イ)シナリオ2
ルセーフ大統領(PT) 39%
シルヴァ元環境相(PSB) 21%
ネーヴェス上院議員(PSDB) 13%
(ウ)シナリオ3
ルセーフ大統領(PT) 40%
セーラ元州知事(PSDB) 18%
カンポス州知事(PSB) 10%
(エ)シナリオ4
ルセーフ大統領(PT) 39%
シルヴァ元環境相(PSB) 21%
セーラ元州知事(PSDB) 16%
(ア)シナリオ1
ルセーフ大統領42%,シルヴァ元環境相29%。
(イ)シナリオ2
ルセーフ大統領47%,ネーヴェス上院議員19%。
(ウ)シナリオ3
ルセーフ大統領44%,セーラ元州知事23%。
(エ)シナリオ4
ルセーフ大統領45%,カンポス州知事18%。