ブラジル全州を見渡しても、幾つかの事項において相当の地位を有するパラナ州(州都クリチバ市)であるが、日本人一般にはサンパウロ州やリオデジャネイロ州ほどの知名度は得られていない。今月は知る人ぞ知るパラナ州の代表的なポテンシャルについて紹介する。
ブラジル南部3州の最北に位置し、同南部地域とブラジル国内その他の地域間の物流を陸路で行う際には、必ずパラナ州を通ることになる交通の要衝。また、国内最大の消費地であるサンパウロにも比較的近く、かつ他のメルコスール3国へのアクセスにも有利な立地にある。
同州主要港であるパラナグア港は、ブラジル第4位の輸出入取扱量を誇る。
なお、世界三大瀑布の一つとして有名な「イグアスの滝」と関連の諸施設は、パラナ州西部のアルゼンチン・パラグアイとの国境地帯に所在。
テーラ・ロッシャと呼ばれる肥沃な土壌が多く、早くから農業開発が進められた。
(収穫・生産高)
・第一位:トウモロコシ、フェイジョン豆、鶏肉
・第二位:大豆、小麦
1995年以降税制優遇措置を導入して外国企業誘致等により工業化を推進した結果、自動車部門を主体にクリチバ首都圏を中心に外国自動車メーカーが相次いで進出し生産を拡大、それを支える関連産業も発展。
我が国とパラナ州との関係は、1930年代にサンパウロ州から日本人移住者が北パラナ等に入植した時に始まった。パラナ州には約15万人(北パラナ約10万人、クリチバ約4万5千人)の日系人が在住していると見られ、既に世代は五世までに達している。パラナ州の日系人は、現在も多くが農業に従事しているが、政治、経済、教育、医学、司法等の各分野でも大いに活躍している。また、同州から本邦への出稼ぎ者数は約7万人と見られている。パラナ州の日系人の評価は、誠実、勤勉等、非常に高く、おかげで我が国に対する評価も極めて親日的で、かつ日本語を解する質の良い労働力を提供できる素地がある。
地形的に河川に恵まれたパラナ州には、フォス・ド・イグアス市に世界第2位(中国の三峡発電所が世界最大)の14,000メガワット(MW)の発電能力を有するイタイプー水力発電所(パラグアイとの共同経営でブラジル側の権利は7,000MW、なお日本最大の黒川ダムは発電能力1,932MW)があるほか、パラナ州電力公社(COPEL)が州内に1,200MWを超える3つの水力発電所を含む19発電所(水力17、火力1及び風力1)で発電能力4,552.11MW(伯全体の発電能力の4.05%に相当)を有し、更に2ヶ所の発電所を建設中である。また、私企業等の発電能力は、約4,900MWであり、この結果、イタイプー発電所を含めた州内の発電総能力は約17,787MWと伯国内でも非常に電力に恵まれた州となっている。
上記は代表的な諸点を紹介したが、同州の利点等の詳細については、以下の公開サイトが参考となる。
こうした利点が見られる同州であるが、残念ながらいわゆるブラジルコスト(複雑かつ高率の税制、各種公共サービスの非効率、労務管理コスト、物流インフラの不完全性等)はここでも存在し、同州内に既に進出した日本企業等もご苦労されている。在クリチバ日本国総領事館としては、在ブラジル日本国大使館及びパラナ日伯商工会議所と連携しつつ、出来る限りの支援を今後とも行っていく所存。
エルサレムの大統領官邸におけるペレス大統領との会談(写真:Avi Dodi)
ワシントンにおける、ヒラリー米国務長官との共同記者会見(写真:State Department)
10月7日及び28日、ブラジルの全国市長及び市議会議員選挙が実施された。
アダッジ次期サンパウロ市長のルセーフ大統領表敬 (写真: Roberto Stuckert Filho/PR)
1.概要
森林法改正をめぐっては、本年5月、ルセーフ大統領は、同改正法案のうち農牧業推進に有利な内容の条項(計12条)につき拒否権を行使し、計32条を追加・修正する暫定措置令(以下「MP」)を制定した(※)ところ、MPの法律化に向け、連邦議会での審議が行われてきた。((※)本年6月号大使館情報参照)
その後、9月25日、連邦議会は、MPの一部を農牧業推進に有利となる内容に再度修正した上で法律化を承認し、大統領による裁可に付されたところ、10月17日、大統領は、右修正MPの一部につき拒否権を行使するとともに、MPではなく大統領令を制定することで、拒否権行使により生じた森林法の欠落条項を穴埋めするとの対応をとった。
2.大統領が拒否権を行使した主なポイント
(1)中規模及び大規模農牧場主が行うべき河岸植生回復義務の最低面積(河岸からの幅)を、当初のMPと比較して5m緩和する。また、大規模農牧場主が行うべき河岸植生回復の面積(河岸からの幅)の算定を州政府が行うこととする。
(2)河岸植生回復を行うにあたり、外来果樹やユーカリ等の単一栽培を認めることとする。
(3)乾期に水流がなくなる川幅2mまでの涸れ川について、農牧場の規模に関わらず、河岸から最低5m幅の植生回復義務を課す。
3.新たに制定された大統領令の主なポイント
(1)農地環境登録システムの規定
農牧地の環境情報を電子上で一元的に管理する「農地環境登録システム」を規定し、ブラジル全土の農牧地における環境の状況を把握する。
(2)環境規制プログラムの規定
上記システムに登録された農牧地の環境情報をもとに、森林法の実施を推進するための「環境規制プログラム」を規定。違法状態にある森林伐採地への植生回復義務については、以下のとおり規定。
ア 農牧場の規模に応じた植生回復義務の面積(河岸からの幅)を規定。
イ 河岸植生回復を行うに際しては、在来種を含むこととし、植生回復地における外来種の割合は50%を超えないこととする。
4.今次決定の影響等
(1)今回の大統領による一連の決定は、違法伐採者への特赦は認めない、違法森林伐採を助長しない、社会的な公正性を確保する、といった伯政府が掲げる基本姿勢を貫いた結果と言える。一方で、今次決定は、森林伐採地の植生回復義務の緩和等を目的にMPを修正した連邦議会の意思を無視するにとどまらず、議会での更なる紛糾を避けるため、拒否権行使により生じた森林法の欠落条項の穴埋めを、議会承認を経る必要のない大統領令で規定するものであった。(2)このため、農牧業推進派の連邦議員からは政府に対する反発や不信の声も聞かれているほか、新大統領令そのものの違憲性を疑う声も噴出するなど、今後の政権運営への新たな火種となる可能性も否定できない。
(2)今後、政府は、新たに制定した大統領令の合憲性を証明するのみならず、「農地環境登録システム」や「環境規制プログラム」の詳細規定に向けては、農牧業推進派・環境推進派を問わず幅広く意見を集約し、合意形成を推進していく必要がある。