Embaixada do Japão

トピックス 2013年09月号

サンタカタリーナ州産生鮮豚肉の対日輸出解禁と同州政府及び関連業界の期待と課題

我が国政府は、2013年5月24日付官報(農林水産省令第42号)により、日本へのサンタカタリーナ州産生鮮豚肉の輸入解禁を公表し、サンタカタリーナ州政府及び関連業界は、一様に豚肉の世界第一位の輸入国である日本への輸出開始に大きな期待を表明している。

サンタカタリーナ州は、世界第4位の生鮮豚肉輸出国であるブラジルの総輸出量(58万トン)の25%のシェアを占める国内最大の豚肉輸出州である。2007年5月に国際獣疫事務局(OIE)より口蹄疫ワクチン非接種清浄地域として認定を受けていたが、これはサンタカタリーナ州が、同州が接するパラナ州、リオグランデドスル州及びアルゼンチンがすべてワクチン接種清浄地域であるという利点を活かし、10年以上に亘る厳重な家畜の州内への持ち込み禁止措置と監視の努力を続けた成果である。一方、日本の豚肉国内消費量は年間約170万トンで、そのうち78万トンを輸入する、世界最大の豚肉輸入国である。

今回の我が国政府の決定は、我が国にとり、口蹄疫に関する「地域方式」(注:国全体が清浄地域でなくてもOIEから清浄地域認定を受けた地域からの輸入を解禁する主義)を適用する初めてのケースとなった。

6月10日、サンタカタリーナ州政府、サンタカタリーナ肉類産業組合(Sindicarne)及びサンタカタリーナ州工業連盟(FIESC)は、共催で、コロンボ州知事、ロドリゲス農務漁業長官、アギアール州議会議員、バルガス伯豚肉生産輸出業協会(Abipecs)会長、ペドロゾ同州農牧連合(FAESC)会長、アヴィラ同州肉類産業組合(Sindicarne)会長、コルテ州工業連盟(FIESC)会長、ランズナスターaurora社長等約200名が一同に会する『サンタカタリーナ州豚肉及び日本市場に関するパネル』を開催した。招きに応じ、日本政府からは内山在クリチバ総領事、森田在ブラジル日本国大使館書記官等が参加した。 同パネルでは、今回の輸入解禁を勝ち取るための伯側関係者の努力と日本側関係者の協力への称賛の言葉が相次いで述べられ、日本市場への豚肉輸出解禁についての祝賀感と期待感が会場を支配した。

同パネルで出席者は、強い期待感の根拠として、①日本の市場規模が大きく極めて安定していること、②世界でも最も厳格な規制が課されている日本市場解禁によるサンタカタリーナ州産豚肉の国際的評価の向上、③海外輸出先の多角化・拡大促進への期待(特に韓国を始めとするアジア地域)、④小規模養豚生産者の雇用と収益向上による生産チェーンの強化、⑤日本市場における伯産鶏肉輸出の成功(注:我が国に輸入されている鶏肉の約90%が伯国産)から、日本市場についての見識と経験、流通経路等を豚肉輸出に際しても利用できること、等を挙げていた。

その一方、冷静なコメントも出された。例えば本パネル会場では、コルテFIESC会長は、次の作業は日本の需要に合わせた商品の研究を行ない、同州産の高い品質を確保しつつ、各企業は合理化と効率性を高める努力を行なうこととし、また政府に向けても、日本向けの輸出を既に実施している他国の商品価格との比較で競争力をつける必要から、更に飼料価格、港湾並びに労働経費等の問題を克服しなければならない点指摘した。また、コロンボ知事は、すぐによい結果が得られると考えるのは早急であり、長期間かけて日本の消費者の信頼を勝ち取らねばならず、州としては、豚肉生産に係る衛生環境の整備・維持に努め、口蹄疫ワクチン非接種清浄地域のステータスを守りつづけるべく不断の努力をする責任があり、企業は、競争力を強化するべく努力を続ける必要がある旨指摘した。

また、報道によると、8月13日にサンタカタリーナ州シャペコ市において同州政府主催で行われた「サンタカタリーナ州産豚肉の品質と日本市場」と題されたパネルイベントで、在京ブラジル大使館のノジョーザ書記官(伯農務省アタッシェ)は、日本がその国内消費量の半分を、米国(輸入豚肉シェア40%)、カナダ(同20%)、デンマーク(同15%)から輸入している中で、サンタカタリーナ州産豚肉が競争力を強化する必要があるものの、現状では「(豚肉を輸出する際に、)米国やカナダから日本へ15日間で到着するところを、ブラジルからの場合40~45日間も要する。」と述べ、輸送に係るインフラ整備を早急に行う必要がある旨述べている。

先6月27日には東京にて、コロンボ知事及び関係主要業者が参加し、同州産豚肉のPRを行うセミナーが開催された。既にBRF社やセアラ社等伯側業者は日本の業者と緊密に引き合いを行っており、同州産の対日輸出の第一陣は本年7月中旬に出荷された(BRF社とセアラ社)。同州産豚肉の日本市場への浸透はブラジル側関係者の努力にかかっているが、二国間の経済関係の強化に貢献する一要素として今後の動向が注目される。

なお、サンタカタリーナ州、リオグランデドスル州は、アルゼンチン産に勝るとも劣らないヨーロッパ種牛の良質の牛肉生産地であり、今後我が国の牛肉輸入解禁を追求することも考えられる。しかし、食事の席の話ではあるが、サンタカタリーナ州政・財界の主要人物(複数)は、「同州産等南部諸州の良質の牛肉はサンパウロ方面等国内需要を満たしていない状態であり、南部諸州は牛肉の輸出は行っていない。輸出されているのは、ルーラ元大統領の一族の企業が2大輸出業者であるようにマットグロッソ以北の諸州産の牛肉である。」と話していた。伯国内での需要が好調である限り、南部産牛肉の輸出は当面なさそうである。

パネル主要出席者の様子(雛壇) パネル主要出席者の様子(雛壇)

参加聴衆の様子(場内)参加聴衆の様子(場内)

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日伯首脳会談

9月5日(木),G20サミット出席のためにロシア・サンクトペテルブルクを訪問中の安倍総理は,ルセーフ大統領との間で日・ブラジル首脳会談を行ったところ,概要以下のとおり。

1.二国間関係,経済分野での協力

冒頭,安倍総理から,ルセーフ大統領の来日を引き続きお待ちしている,日本とブラジルは基本的価値を共有するパートナーであり,歴史と伝統に培われた特別な信頼関係を今後も大切にしたい旨述べた。

これに対してルセーフ大統領より,訪日への期待を改めて述べつつ,アベノミクスが成功裏に成果をあげていることをお祝いしたい,かかる政策は金融危機の復興に取り組む先進諸国の手本になる旨述べ,さらに日本企業の対ブラジル投資への高い評価と一層の期待が示された。

これに対して安倍総理からは,アベノミクスへの評価に対する謝意とともに,インフラ整備,防災分野での協力,国境なき科学計画に代表される人材育成等様々な分野において,日本として一層の協力をしていきたい旨述べた。

2.スポーツ・人的交流

安倍総理から,我が国も出場を決めた来年のワールドカップ及び2016年オリンピック・パラリンピック・リオデジャネイロ大会の成功を祈念する旨述べるとともに2020年オリンピック・パラリンピック東京大会開催への期待を述べたところ,ルセーフ大統領は,2016年のワールドカップでは日本とブラジルが決勝戦を戦うことができればすばらしい,東京開催決定をお祈りしたい旨述べた。

3.経済分野,G20

ルセーフ大統領より,G20における課題として,拡張的金融政策の今後の調整が新興経済国に与える影響を考えるための議論が必要であるとの発言があったのに対し,安倍総理からは,今回のG20の成長と雇用というテーマは時宜を得たもの,経済政策の透明性を確保していくことが重要である旨述べた。

4.国際情勢

安倍総理より,国連安保理改革に関して,実現可能な案を模索し,改革に向けたモメンタムを高めていくべく,引き続きG4間の連携が重要である旨述べたのに対し,ルセーフ大統領からは,安保理を改革してその正統性を高めることは,現下のシリア情勢への安保理の対応にみられるようにますます重要になってきていると述べるとともに,サイバーセキュリティに関しても多国間の枠組みを作っていくことが重要であると述べた。

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(写真提供:内閣広報室)

(写真提供:内閣広報室)
(写真提供:内閣広報室)

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岸田外務大臣の訪伯

岸田外務大臣は,9月2日(月)から5日(木)にかけてブラジルを公式訪問したところ,概要は以下のとおり

1.日伯外相会談

2日(月)12時10分から約2時間30分,フィゲイレド外務大臣と日伯外相会談及びフィゲイレド大臣主催昼食会を行ったところ,概要は以下のとおり。
なお,外相会談に先立ち,外交・公用査証免除措置に係る書簡の署名式が両外務大臣の間で行われた。

(1)二国間関係

(ア)両国外相は,両国は日系人という人的絆を背景とした長い歴史と伝統に培われた特別な信頼関係にあることを確認し,政治,経済関係に加え,教育,科学技術,国際場裡での協力,文化やスポーツ等広い分野で両国の関係が発展していることを歓迎。

(イ)本年6月末に予定されていたものの,ブラジルの国内情勢により延期となったルセーフ大統領訪日について,両国外相は右早期実現に向け両国政府が調整することで一致した。

(ウ)両国外相は,日伯修好通商航海条約締結から120周年を迎える2015年を,両国双方で多くの行事を実施するだけでなく,両国関係の更なる強化・深化するものとして盛り上げていくことで一致した。

(エ)両国外相は,両国間の外交・公用査免措置への署名が行われたことについて,両国の交流促進に資するものとして評価した。また,先般受刑者移送条約が実質合意に至ったことについても,司法分野の協力に資するものとし歓迎した。

(オ)岸田大臣から,プレソルト海底油田に関連した造船分野での協力や,深海共同調査など科学技術交流が進展していることを例示し,両国関係では科学技術や産業協力を通じた多層的な協力関係を拡大する多大な可能性があると述べ,フィゲイレド外相から地デジ日伯方式のように両国間の科学技術分野での協力が更に発展することへの期待感が表明された。

(カ)岸田大臣から,先般開催された第4回日伯賢人会議で両国首脳への提言が作成されたが,実り多い議論を成果につなげるために政府間で対応すべき課題を両国で取り組みたいと述べ,フィゲイレド外相は我が国からブラジルへの投資が拡大することへの期待感が表明された。

(キ)フィゲイレド外相は,サンタカタリーナ州産豚肉に関する先般の輸入解禁決定を歓迎すると述べ,岸田大臣は,関係者の努力の成果であり喜ばしい旨応答した。

(2)地域情勢

岸田外務大臣から,東アジア地域情勢及び我が国の立場について説明を行い,フィゲイレド外相からは中南米情勢及び地域統合の動きについて説明があった。

(3)国際場裡における協力

岸田外務大臣から,国連安保理改革,核軍縮,世界貿易(WTO)等,国際場裡において両国間で協力していきたい旨述べ,フィゲイレド外相も同意する旨応じた。

2.その他の日程

(1)ブラジリアにおいて,岸田大臣は日系下院議員や日系判事と懇談し,二国間関係の発展の協力への期待感を表明した。

(2)サンパウロにおいては,ビジネスの最前線で活躍するブラジル日本商工会議所関係者との意見交換を行い,また,様々な分野で活動する知日家との懇談では,貿易投資,文化交流,スポーツ交流における協力の強化について意見交換した。さらに,日系団体代表との懇談では,日系社会の課題や人物交流についての意見交換を行った。また,上記日程の他に,イビラプエラ公園内の開拓者先没者慰霊碑を訪れ,献花を行った他,日本館,移民史料館,日系農場等を視察した。

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国外処罰

1.平成17年に静岡県湖西市で発生した女児死亡人身事故事件に関し,自動車運転過失致死罪で起訴されたパトリシア・フジモト被告に対し,サンパウロ州裁判所は,12日,禁固2年2か月及び運転免許証の停止6か月の第一審判決を言い渡した上で,禁固刑に代え,1年間の社会奉仕活動を行うこと等を命じた。同判決を受け,検察側及び弁護側双方が控訴した。

2.ブラジル連邦警察は,平成18年に静岡県焼津市で発生した母子殺害事件のエジルソン・ドニゼッチ・ネベス被疑者を再逮捕した。

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外交

.米国によるブラジルの通信傍受疑惑
  • (1)7月7日,オ・グローボ紙は,スノーデン元CIA職員が情報漏えいした内容として,ブラジルは米国国家安全保障局(NSA)による情報収集の主たる標的の一つとなっており、本年1月だけでブラジル国内において23億件に上る大量の通信を傍受していた旨報じたところ,ブラジル政府からは米国情報機関によるブラジル国民に対する諜報活動に深い懸念が示され,ルセーフ大統領も,「ブラジルの立場は明確である。ブラジルは,他の国々と同様,このような方法(通信傍受)で他国に干渉するやり方には同意しない。国際電気通信連合(ITU)及び国連人権理事会に対して問題を提起する。米国の政府機関による違法行為が確認された場合,ブラジルの主権及びブラジル国民に対する人権への侵害ということになる。」と述べた。
  • (2)8月26日,カルドーゾ法相は,通信傍受に関する調査団を率いて,ワシントンを訪問し,バイデン米副大統領らとの会談を行い,NSAによる情報収集につき詳しい説明を求めるとともに、米国の情報機関が伯国内で通信傍受を行う場合には,事前に伯裁判所の許可を得るとの協定を締結するよう提案したが,米国側から満足な回答を得られず,ベルナルド通信相などの関係閣僚は米国による通信傍受を激しく批判した。ルセーフ大統領も,かかる米国の対応にいらだちを募らせていた。
  • (3)そのような状況の中で,9月1日,グローボTVは,スノーデン元CIA職員が入手した機密文書に基づくものとして,NSAがルセーフ大統領の電話及び電子メールを極秘裏に傍受していたことが明らかになった旨報じた。これを受け,5日,ロシア・サンクトペテルブルグで開催されたG20サミットにおいて,ルセーフ大統領は,オバマ大統領は,米国によるルセーフ大統領個人に対する通信傍受に関し,「直接的かつ個人的に」責任を有しており,11日(水)までに米国政府として回答する旨述べたことを明らかにするとともに,国連に対し,プライバシーの侵害に関する新たな定義を設定するための提案を行う旨述べた。
  • (4)ルセーフ大統領は,10月23日に国賓として米国訪問を予定していたが,7日(土)に米国に派遣される予定であった先遣隊を中止し,さらに16日に行われたオバマ大統領との電話では,事実関係の時宜を得た解明が行われず,それに伴う説明及び(通信)傍受活動停止の約束が成されていないことを考慮し,17日,両大統領はルセーフ大統領の米国訪問の延期を決定した。
2.ボリビア上院議員のブラジル亡命
  • (1)昨年5月,伯政府に政治亡命を申請し,在ボリビア伯大使館において保護されていたボリビアのロジェ・ピント上院議員が,23日(金),ボリビア政府の許可を得ることなく,サボイア在ボリビア伯公使(臨時代理大使)及び伯の海兵隊員2人とともに,公用車2台でラパスを脱出し,24日(土)午後,ブラジル(マット・グロッソ・ド・スル州コルンバ市)に入国した。コルンバ市では,フェラーソ上院外交国防委員長が一行を出迎え,一行は同委員長の友人が所有する自家用機に乗り,25日(日)未明にブラジリアに到着した。
  • (2)ピント上院議員は,モラレス政権下で,野党の有力議員として政府に批判的な立場を取ってきた。昨年5月,モラレス政権の不正及び麻薬組織との関係について告発した後,生命の危険にさらされているとして,在ボリビア伯大使館に保護を求め,ブラジルへの政治亡命を求めた。同年6月,伯政府は,同議員のブラジルへの亡命を認めたが,モラレス大統領はこれを批判し,ボリビア政府として同議員に安導券(通行の安全を保障する許可証)を発給しなかったため,同議員は同伯大使館内での生活を余儀なくされた。
  • (3)伯政府は,ピント議員の伯への入国が,安全な移送措置をとることなく行われたことは受け入れられないとして,サボイア臨時代理大使の行為を批判した。
  • (4)25日(日),ボリビアのダビラ通信大臣は,「ボリビア政府は,ピント議員を逃亡犯罪人とみなしており,その出国に関して伯政府に説明を求めるが,本件が二国間関係に影響を及ぼすことはない。」との声明を発表した。

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内政

1.外務大臣の交代

ピント議員の伯への入国問題を受け,26日,伯大統領府は,パトリオッタ外務大臣が辞表を提出し,ルセーフ大統領がこれを受理した旨発表したところ,大統領府公式声明は以下のとおり。

26日,ルセーフ大統領は,パトリオッタ外務大臣による辞表を受理し,次期外務大臣としてフィゲイレド国連代表部大使を指名した。

ルセーフ大統領は,パトリオッタ外務大臣の2年以上にわたる任務への尽力に謝意を表し,同大臣を新たに国連代表部大使に任命した。

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