伯国内唯一のフリーゾーンを抱えるマナウス市は、その経済成長に伴い人口が増加し、2000年に140万人だった人口は現在183万人を数え、ブラジル国内で7番目に人口の多い都市となった。以前からマナウスは「陸の孤島」であり、ブラジルの他都市のように道路網が発達していないため、地理的要因から犯罪者の市外への逃走が難しいことから犯罪も少なく、他地域からの犯罪者の流入も少ないといわれてきたが、近年では航空運賃の低下やマナウス市民の所得の高さなどを背景として他州からの犯罪者の流入が増加する傾向にある。その状況下で強盗、強盗殺人事件数は大幅に増加しており、2011年にはマナウス市のみで年間約9万2千件の犯罪が発生し、そのうち殺人事件は925件を記録した。殺人に関しては、リオデジャネイロ市(人口630万人/1,628件)、サンパウロ市(人口1,120万人/1,196件)と比較して、人口比の発生率が非常に高い。
マナウス市における過去3年間の犯罪発生件数 |
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犯罪種別 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
殺人 |
675 |
765 |
925 |
強盗殺人 |
22 |
27 |
41 |
殺人未遂 |
499 |
465 |
642 |
傷害 |
13,914 |
14,071 |
14,662 |
強盗 |
24,947 |
24,144 |
31,176 |
窃盗 |
39,281 |
36,056 |
38,226 |
強姦 |
433 |
686 |
933 |
銃刀違法所持 |
629 |
641 |
634 |
車両押収 |
1,277 |
1,359 |
2,122 |
薬物所持・使用 |
1,157 |
1,566 |
1,494 |
薬物密輸 |
698 |
920 |
1,257 |
合計 |
83,532 |
80,700 |
92,112 |
(アマゾナス州保安局提供)
この状況に対して、2011年1月に就任したオマル・アジス現アマゾナス州知事は治安対策を最優先課題として位置づけ、「RONDA NO BAIRRO(ホンダ・ノ・バイホ、地域密着型機動警ら隊)」という新パトロール・通報システムを導入した。これは、2台のバイク及び1台のパトカーに1つの地区(バイホ)の特定エリアを24時間パトロールさせるもので、パトカーにはGPSや車両情報等のデータ確認が可能なタブレットPCの他、通信司令センターから直接操作可能な6台のカメラが搭載されている。またこのシステムでは、住民が自分の居住する地区を見回るパトカーに直接通報できるのが大きなメリットである。住民からの直接通報により短時間でパトロール隊が現場に到着できること、また住民とパトロール隊との連携が強化されることで、「RONDA NO BAIRRO」はパトカーの「即応力」と日本の交番の「地域密着」という2つの利点を兼ね備えたシステムとなっている。同システムの導入のためアマゾナス州政府は最新の設備を備えたパトカー300台を新たに投入し、2012年2月より、最もマナウス市内で凶悪犯罪の多い北部地区から運用が開始されている。
その後、同システムは市内各地区に順次導入され、現在では市内の3分の2の地域をカバーし、導入から半年が経過した現在ではマナウス市内の各地区で顕著な治安の改善が見られる。1,700人の警察官がパトロールにあたる北部地区では、半年間でそれぞれ殺人が20%、盗難/空き巣が25%、強盗が22%減少している。また、日本人移住者や駐在員が多く居住する市内のCentro-Sulブロックにおいては、7月末のシステム導入後一ヶ月で殺人の発生件数が0件(その前一ヶ月は8件)、盗難/空き巣が前年同月比24%、強盗が33%減少、全体の犯罪発生率は21%の減少(前年同月比、以下同様)を見せている。フリーゾーン進出企業のほとんどが所在する工業団地のある市内東部地区についても、以前は北部地区についで凶悪犯罪が多い地域であったものの、7月末の導入以来1ヶ月で殺人が38%、強盗/窃盗が48%、傷害が19%それぞれ減少していることから、マナウス在留邦人の生活エリアにおける治安状況が改善していることがうかがえる。
開始から半年が経過したRONDA NO BAIRROは一定の成果を見せており、アマゾナス州保安局は2012年10月までにマナウス市内全域をカバーし、今後はマナウス周辺の市にもシステムを導入する予定としている。ただし、殺人や強盗等の凶悪犯罪が減少している一方で、麻薬関連の犯罪は集中パトロール開始後も55%の増加を記録する等、いまだ課題も残っている。これに対しアマゾナス州政府は、コロンビア・ボゴタ市のアンタナス・モックス元市長との対話を通して、かつて「世界一危険な都市」と言われたボゴタ市の殺人発生件数をここ10年で75%減少させた元市長のノウハウをマナウス市にも応用するとしている他、パトロールにあたる警察官のトレーニングを米国FBIの協力を得て行う計画を発表している。マナウス市の治安状況は、伯北部経済の要であるフリーゾーンへの企業進出や企業の業務拡大にも影響することから、同システムの拡張により今後更なる治安の改善が期待される。
8月3日に開催された国連総会は、シリアのアサド政権を非難し、全当事者に暴力停止を求める決議案を賛成多数(賛成133カ国、反対12カ国、棄権31カ国)で採択した。本件採択に際し、伯も賛成票を投じた。なお、国連総会決議は、国連安全保障理事会決議と異なり法的拘束力はなく、過半数で採択される。
8月14日、南米諸国共同体(UNASUL)は、パラグアイのルゴ前大統領の弾劾は非民主的な手続により行われたとして、同国の資格一時停止を決定。なお、UNASULは、22日、米州機構総会において、パラグアイの同機構資格の一時停止についても主張したが、コンセンサスが得られず、可決には至らなかった。
(1)政見放送が8月21日から開始される等、10月7日(日)の市長及び市議会議員選挙に向けた選挙戦が本格化。なお、有権者20万以上の市における市長選挙では、有効票の過半数を獲得する候補者がいない場合、上位2名による決選投票が10月28日(日)に行われる。
(2)現在、サンパウロ市長選に関しては、野党PSDB(ブラジル社会民主党)のセーラ元サンパウロ州知事と連立与党PRB(ブラジル共和党)のルッソマーノ下院議員による首位争いが繰り広げられているが、8月28日及び29日に行われた世論調査(Datafolha社)では、ルッソマーノ候補の支持率が31%、セーラ候補が21%となっており、ルッソマーノ候補が優勢となっている。なお、政見放送開始後、PTのアダッジ候補の支持率が伸びている(8月20日:8%→8月28日:14%)ことは注目される。また、リオデジャネイロ市長選については、同世論調査で、パエス現市長(PMDB(ブラジル民主運動党)、与党)の支持率が53%となっており、2位のフレイショ候補(PSOL(社会主義自由党)、野党)の13%を大きく引き離しており、同市長の人気がうかがえる。また、国政との関係でも注目されるベロオリゾンテ市長選については、ラセルダ現市長(PSB(ブラジル社会党)、与党)が46%、ルセーフ大統領が擁立したアナニアス候補(PT、与党)が30%となっており、ラセルダ現市長の再選の可能性が高まっている。レシフェ市長選については、ルーラ前大統領が擁立したコスタ候補(PT)が29%、ジュリオ候補(PSB)が29%と拮抗した世論調査結果となったが、7月19日の世論調査ではコスタ候補が35%、ジュリオ候補が7%であったことを考慮すると、ジュリオ候補の支持率が急激に伸びている。これは、カンポス・ペルナンブコ州知事(PSB党首)の影響が大きいと考えられる。
8月3日から14日まで被告弁護団による口頭弁論が連邦最高裁において行われた後、報告判事及び見直し判事による報告が行われた。その際、見直し判事が弁護団の主張の一部(メンサロン事件の真相は選挙のための裏金作りであり、選挙違反ではあっても刑法犯ではない)を受け入れ、クーニャ元下院議長(PT)の無罪を主張したが、30日、11名の連邦最高裁判事のうち、有罪を主張する判事は8名、無罪は2名となり、同元下院議長の有罪が確定。メンサロン事件で有罪となる初めての政治家となった。これに伴い同元議長は、本年のサンパウロ州オザスコ市長選への出馬を断念した。
(1)約2ヶ月前の国立大学教員のストライキに端を発した国家公務員ストは、その後、保健省、労働雇用省、財務省、外務省、社会保障省、連邦警察等の政府職員が加わり、ピーク時には参加者が約30万人にも膨れ上がった。港湾の税関職員ストによる通関ストップや外国製医薬の不足、出入国管理官ストによる空港の大混乱等、経済活動や市民生活にも多大な影響をもたらした。
(2)一律22%の給与改定の即時実施を求める公務員組合に対し、連邦政府は一律15.8%の改定を明年から2015年にかけて3回に分けて行うことを提案。交渉は一旦決裂したが、8月24日、ルセーフ大統領が「15.8%か、ゼロか」との最後通告を行ったことにより、28日、ストを行っていた公務員の約90%が政府案を受け入れ、ストの終結を決定した。但し、連邦警察官、国税検査官等、残り約10%の公務員は政府案を拒否し、ストを継続することにしている。