Embaixada do Japão

トピックス 2014年8月号

安倍総理の訪伯

(1)主要日程

 8月1日(金曜日) (ブラジリア)

ブラジル経済界との意見交換会
日系議員及び政府高官との懇談
サッカー感謝の集い
歓迎式典
日・ブラジル首脳会談
日伯賢人会議メンバーとの意見交換
覚書等文書発表式
共同記者発表
ルセーフ大統領主催午餐会
記念植樹及び日系団体代表との懇談

8月2日(土曜日)(サンパウロ)

開拓先没者慰霊碑参拝、献花、日本館視察、記念植樹
内外記者会見
日伯医療分野規制に関するセミナー
アルキミン・サンパウロ州知事との会談
ビジネスセミナーにおける中南米政策スピーチ
ブラジル日本移民史料館視察
日系人との懇談(日系政治家、日系主要4団体、活躍する日系人若者)
日系団体主催歓迎会
Sport for Tomorrow(日伯スポーツの絆)
和食セミナー・料理講習会

(2)首脳会談概要
  • (ア)冒頭発言
    ルセーフ大統領からの冒頭の歓迎の辞に続いて,安倍総理からルセーフ大統領の心のこもった歓迎に感謝を述べるとともに,ワールドカップ大会運営の成功に祝意を表明した。安倍総理は,祖父の岸信介総理大臣が半世紀余り前に日本国総理として初めてブラジルを訪問し,父の安倍晋太郎が外務大臣として1985年にブラジルを訪問した時には自分も同行しており,歴史的意義を感じると述べた。
  • (イ)二国間関係総論
    両首脳は,2015年の外交関係開設120周年を契機とした両国関係の更なる強化・深化のため,記念行事を実施することを確認した。また,安倍総理は,2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向け,スポーツを通じた国際貢献策「Sport for Tomorrow」を実施することを紹介した。両首脳は,リオオリンピックの経験・知見を東京オリンピックにつなげていくことで一致し,また今回の訪問を機に戦略的グローバル・パートナーの関係を構築し,両国関係のレベルを更なる高みに引き上げ,このパートナーシップを一層強固にするために外務大臣間の定期的な対話を行うことに合意した。
  • (ウ)経済関係の強化
    両首脳は,造船,インフラ整備,石油・ガス開発,医療等の分野での両国経済関係の深化と拡大について幅広く意見交換を行った。安倍総理は,日本の造船・海運企業が提案しているロジスティックハブシステムの導入について働きかけ,ブラジルの穀物輸送改善のための両国の官民によるダイアログの立上げを提案し,ブラジルの薬事規制の効率化を求めるなど,高い技術と経験を有する日本企業のブラジルへの展開を後押した。ルセーフ大統領はインフラ整備やエネルギーの分野でビジネスチャンスが溢れていることを紹介し,日本企業がブラジルの幅広い分野で更なる投資を行うことへの強い期待を表明した。
  • (エ)科学技術イノベーション及び教育
    両首脳は,益々幅と厚みの増した二国間関係を強化するため,宇宙・海洋分野での協力進展,「国境なき科学」計画を通じた優秀なブラジル人留学生受入れ,ブラジルにおける日本語教育の充実,女性の活躍促進について意見交換した。安倍総理から,人材育成を通じた協力を推進するため,今後3年間で900名程度の研修員を受け入れる意図を表明し,ルセーフ大統領からは感謝の意が表明された。
  • (オ)国際問題
    両首脳は国連やG20といった国際場裡における協力について意見交換を行い,安保理改革や,気候変動における新たな国際枠組みの構築等に向けての協力を推進していくことで一致した。
  • (カ)地域情勢
    安倍総理から,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から,日本が進める安全保障政策,及び先般閣議決定した安全保障法体制の整備の方針について説明し,また日中関係及び北朝鮮問題情勢に関して,安倍総理より日本の基本的立場を説明した。またルセーフ大統領からは中南米情勢等に関して説明があった。
(3)その他

その他,安倍総理のブラジル訪問の評価や中南米政策スピーチ,共同声明等の詳細については,外務省HPをご参照ください。

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内政

1.大統領選挙候補の決定
  • (1)7月5日,ルセーフ大統領(PT)及びネーヴェス上院議員(PSDB)は,選挙高等裁判所(TSE)において,大統領候補の登録手続を行った。右手続きは,同5日をもって締め切られ,今回の大統領選挙が合計11名の候補者により争われることが確定した。候補者は以下の通り。

(ア)ルセーフ大統領(PT)
(イ)ネーヴェス上院議員(PSDB)
(ウ)カンポス元ペルナンブコ州知事(PSB)
(エ)ジョルジ元下院議員(PV)
(オ)エヴェラルドPSC副党首(PSC)
(カ)エイマエル元下院議員(PSDC)
(キ)フィデリクスPRTB党首(PRTB)
(ク)アルメイダPSTU党首(PSTU)
(ケ)ジェンロ元下院議員(PSOL)
(コ)イアシ准教授(PCB)
(サ)ピメンタPCO党首(PCO)

  • (2)なお,今後の選挙日程は以下の通り。

7月6日:選挙キャンペーン開始
8月19日~10月2日:政見放送
10月5日:投票(第1回目の投票)
10月11日~24日:政見放送
10月26日:決選投票

  • (3)6日,選挙キャンペーンが開始され,112日にわたる選挙戦の火蓋が切って落とされた。ルセーフ大統領は,大統領候補としての公式サイトを開設し,公式サイトにアップした動画の中で,現政権の業績を紹介するとともに,他の候補に対し,構造改革等,政策論議を中心とするハイレベルの選挙戦を行うよう呼びかけた。また,同大統領は,現政権が世界に先駆けてインターネット民事法を制定したことを強調し,再選した場合,「更に早く,安く,安全なインターネット環境を整備する」ことを約束した。
  • (4)一方,野党のネーヴェス議員及びカンポス元州知事の両候補は,それぞれの副大統領候補とともに,サンパウロの「日本祭り」に参加した。また,カンポス元州知事は,6日から7日にかけて,シルヴァ副大統領候補とともに,ブラジリア近郊の町を訪れ,有権者とスキンシップをとりながら支持を訴えた。7日,ネーヴェス議員は「与党PTは,W杯の成功を選挙に利用しようとしているが,選挙の結果がW杯に左右されることはないであろう。」と述べ,PTの動きを牽制した。また,同候補が「選挙戦が本格的に始まるのはW杯の閉幕後である。」と述べたように,今のところ,各候補の動きはこれまでの選挙と比べて鈍く,今回の選挙戦はスローな出だしとなった。
2.2014年大統領選挙:ダタフォーリャ社世論調査
  • (1)ダタフォーリャ社が7月15日から16日にかけて223市の5,337人を対象に実施した世論調査によれば,現時点における各大統領候補の支持率は以下の通り。

 

4月

5月

6月

7月初旬

今回

ルセーフ大統領        

38%

37%

34%

38%  

36%

ネーヴェス上院議員

16%

20%

19%

20%  

20%

カンポス前ペルナンブコ州知事

10%

11%

7%

9%   

8%

他候補の合計

6%

7%

9%

9%   

8%

白票/無効票/誰にも投票しない

20%

16%

17%

13%  

13%

分からない

9%

8%

13%

11%  

14%

  • (2)今回の調査では,ルセーフ大統領(PT)が首位を維持しているものの,現政権に対する評価は悪化した。また,決選投票では,野党のネーヴェス候補(PSDB)が今回初めてルセーフ大統領と並んだことが注目されている。ただし,ルセーフ大統領の支持率(36%)に対し,他候補の支持率の合計も36%となっているが,±2ポイントの誤差を考慮すれば,現時点においては選挙が決選投票にもつれ込むか否かは不透明な状況にある。
  • (3)決選投票に関する調査結果は以下の通り。

(ア)ルセーフ大統領44%,ネーヴェス議員40%

(イ)ルセーフ大統領45%,カンポス前州知事38%

上記(ア)の場合,±2ポイントの誤差を考慮すれば,ルセーフ大統領とネーヴェス議員は,ほぼ引き分けの状態にあると見られている。

  • (4)フォーリャ・デ・サンパウロ紙の分析記事
    W杯開幕後,国民感情は好転し,伯代表がチリに勝利した際,ルセーフ大統領の支持率が上昇しかけたが,準決勝でドイツに屈辱的な敗北を喫し,3位決定戦でもオランダに完敗したことにより,ルセーフ大統領の上昇傾向は立ち消えた。伯代表の惨敗により,運営面での成功に対する評価も影を潜めている。ただし,野党候補の支持率は横這いとなっており,野党が伯代表の敗北による恩恵を被ることはなかった。今回の調査で増えたのは,「態度未定」だけである。W杯の大統領選挙に対する影響は,与野党とも得点なしの引き分けとするのが妥当であろう。

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外交

1.プーチン露大統領の訪伯
  • (1)7月14日,ルセーフ大統領は伯を公式訪問したプーチン露大統領を迎えた。プーチン大統領は13日,ワールドカップ・ブラジル大会の決勝戦をルセーフ大統領とともに観戦し,15日にはフォルタレーザで開催されるBRICS首脳会合に出席した。
  • (2)プーチン大統領の伯訪問の機会に,両国間での貿易総額を100億ドルへと増加させることを目的とする伯露通商経済協力行動計画への署名が行われた。伯露間の貿易額は,プーチン大統領が前回訪伯した2004年より倍増しているが,伯からの輸出は露が2012年に伯産豚肉に検疫上の障壁を設けたために25%減少している。そのため同行動計画には,「伯露間での検疫サービスを同等のものにすることを目的として,技術的情報の交換を向上させる。」との文言が挿入されており,プーチン大統領は「現状の問題を克服するためにも一刻も早く行動を起こす必要がある。」と述べている。
  • (3)現在,伯から露への輸出は一次産品や半製品に集中している一方で,露からの輸入は工業製品に集中しているため,ルセーフ大統領は貿易を拡大させるのみならず,貿易を多様化させる必要性を強調している。また同大統領は,両国間での投資拡大への期待も示した。伯中央銀行のデータによれば,2013年,伯に最も多く投資した40ヶ国に露は含まれておらず,伯政府は石油や鉄道分野等において露が参入する大きな潜在性があると考えている。
  • (4)プーチン大統領は首脳会談において,ロシア,ベラルーシ及びカザフスタンから成るユーラシア経済同盟と南米諸国共同体(Unasul)の統合や同経済同盟とBRICSの関係強化を提案した。外交筋や専門家は,プーチン大統領による右提案を露の影響下にある地域にとっての交易相手を拡大する試みであると分析している。また同大統領は,BRICSの政治的重みを増加させ,国連等のフォーラムにおいて米国及びその同盟国への対抗勢力とさせたい考えを主張した。
  • (5)なお,両国首脳は,首脳会談においてウクライナ情勢については触れなかった一方で,ルセーフ大統領は,シリア情勢や中東問題におけるロシアの立場を賞賛した。プーチン大統領は,今次訪問の機会を利用し,ウクライナ情勢をめぐる西側諸国による制裁による国際的孤立から逃れることを欲している。
2.BRICS首脳会合:伯大統領府の発表
  • (1)7月15日,ルセーフ大統領は,フォルタレーザにおいて開催された第6回BRICS首脳会合の本会議において,BRICS開発銀行及び緊急準備アレンジメントの設立を宣言した。同大統領は,グローバルな金融枠組みの向上のために重要な2歩が踏み出された旨述べた。
  • (2)BRICS銀行の取締役会の初代代表にはロシアが就任し,理事会の初代代表にはブラジルが就任。また,初代銀行総裁にはインドが就任した。初代地域事務局は南アに設置され,銀行本部は上海に設置される見込み。なお同銀行は,積立金と同額の1千億ドルの資本を有する見込み。
  • (3)ルセーフ大統領は,「本銀行は,主な国際金融機関のクレジットの不十分さを補完することで,発展途上国におけるインフラの資金調達需要の代替案となろう。」「本合意によって,既存の金融メカニズムを補完することでIMFが脆弱な経済を救済することを可能とし国際金融の安定性に貢献するだろう。」と説明し,国際経済の新たな枠組におけるBRICSの役割を強調した。
  • (4)また,ルセーフ大統領は,国連安保理及びIMFの改革についても要請し,BRICS諸国は多極化する世界に向けた透明で民主的そして有効な多国間主義という約束について強調した旨述べた。
3.習近平中国国家主席の訪伯
  • (1)7月17日,ルセーフ大統領は伯公式訪問中の習近平国家主席と首脳会談を行い,また合意文書への署名も行った。同国家主席の中南米訪問は,2013年の就任以来初めてであり,2014年は両国にとり調和及び協力の40周年記念となっている。中国は,2006年以降,伯の主要な貿易パートナーであり,2013年の二国間貿易は833億ドルに達し,2014年には900億ドルを超えるものと見込まれている。
  • (2)署名式典では,32の合意文書への署名が行われ,交通,エネルギー,インフラ,防衛,通信・リモートセンシング,通商及び教育等の幅広い分野に及んだ。ルセーフ大統領は,伯のエネルギー分野における中国のプレゼンスの拡大を歓迎しており,鉄道,湾港,空路,陸上分野における入札の機会が開かれている旨述べ,アグロビジネスの分野でもより幅広い協力を強化していくと述べた。また中国は、首脳会談において、エンブラエル社のジェット機及び航空機60機の購入、ブラジル産牛肉に対する制限の解除及び、中国自動車企業Cherryが4億ドルを投資して工場建設をすることを表明した。
  • (3)オランダ伯外務省東アジア局長は,伯は輸出品目において高付加価値製品の割合の増加に関心を有しており,現在輸出の80%を占める鉄鉱石,大豆及び石油のほか,高付加価値製品の割合を拡大させるために大きな努力を行っている旨述べている。また同局長は,右3分野においては中国から多くの投資が行われているが,加えて工業,ハイテクノロジー,重機,自動車等の分野においても中国からの投資が拡大しており,伯はEmbraerの航空機販売の増加及び中国市場での牛肉のアクセス平常化を期待しているほか,教育,文化,宇宙科学・イノベーション及び衛星分野においても交流を拡大していきたいと述べている。更に,最も期待できる分野として,鉄道・湾港等のインフラ分野での交流の進展を挙げており,伯の北部と中央北部地域における投資が不足しており,中国には発達した技術がある旨指摘している。
  • (4)またルセーフ大統領は,中国国際放送によるインタビューに応じたところ,概要以下のとおり。

(ア)今日,中国は伯の最大の貿易パートナーであり,また伯への大きな投資国である。伯は中国における大きなプレゼンスを築きたいと考えており,既にいくつかの伯企業が中国に進出している。両国は最高の関係を有しており,伯は中国への多くの食物や鉄鉱石を輸出している。関係の成熟化により,伯工業製品の中国への輸出も増加していくであろう。

(イ)伯は鉄道分野に大きな関心を有している。中国は鉄道分野に大きな投資を行っており,知見,経験及びノウハウを有しているため,中国が伯の鉄道分野に参入することを望んでいる。

(ウ)BRICS首脳会合の主要な成果は,BRICS開発銀行創設と緊急準備アレンジメントの実現であると考えている。BRICS開発銀行は,先進国に対する回答であり,景気を後退させ,雇用を削り,社会包摂プロセスを止める結果になることを行うことはできないと考える国々に対する融資元となることを意味する。

4.伯印首脳会談
  • (1)16日,ルセーフ大統領とモディ首相は,伯大統領府での首脳会談において合意文書への署名を行った。合意文書の中には,アマゾン地域での火事に対応することを目的とした,環境及び衛星データ処理といった分野も含まれている。本合意文書の1つは,クイアバに所在する,天然資源を扱う伯陸上測候所において,印のリモートセンサー衛星からデータを受信し,その処理を拡大するための条件について規定している。
  • (2)伯外務省によれば,両国間での貿易は,2003年の10億ドルから2013年には94.9億億ドルへと拡大しており,伯にとり12番目の貿易パートナーとなっている。カリージオ伯外務省中央・南アジア・オセアニア局長は,モディ首相就任直後の訪伯は伯印関係の活力を示す重要なものであり,2006年より戦略的パートナーシップ関係にある両国は,国際的なフォーラムにおいても長い間協力関係にあると述べている。また同局長は,新たな政府と更に関係を強化することは可能であり,首脳会談では衛星,社会的発展,環境,地質学及び文化の分野について話し合っていると述べた。
5.伯によるイスラエル非難声明
  • (1)伯政府は7月23日、エルダッド在伯イスラエル大使を外務省に呼び、イスラエルがガザ地区に投入している軍事力は不均衡かつ過剰であると抗議した。しかし伯政府の声明はハマス側の行為については何も言及していない。
  • (2)イスラエル側は伯政府がイスラエルの自衛権を無視しており、伯側の批判はガザ地区の安定に寄与するどころか、テロを支持する結果となっており、ブラジルのような経済・文化大国が、「外交の小人」であることが非常に残念であると非難した。
  • (3)イーガル・パルマー・イスラエル報道官は、インタビューに応え、伯政府の批判が伯を「重要でない外交パートナー」という地位に貶め、ブラジルの外交的影響力は完全に消滅したと述べた。フィゲイレド外相は同報道官コメントに対して「伯は取るべき態度を取ったのみである。「外交の小人」というものがたとえ存在しても、それは伯のことではない。」と反論した。
  • (4)伯政府がイスラエルの武力行使を「不均衡」と述べたことについて、イスラエル側は「不均衡」とは例えば7対1で敗北することだとW杯の結果を揶揄した。フィゲイレド外相は、伯はガザを支配するハマスに対してもロケット弾によるイスラエルの攻撃を非難していると述べ、イスラエルの反応を和らげることに努めようとした。

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