1.近年のブラジル経済の力強さには目を見張るものがあるが、その原動力の一つは石油(及び天然ガス)分野での成長であり、中でもリオデジャネイロの沖合において次々と発見されているプレサル層深海油田の開発がある。埋蔵量1,000億バレルともされる右油田の開発により、2020年にはブラジルが世界4位の産油国になる可能性が高いと言われている。これに付随し、ドリルシップやFPSO(浮体式生産貯蔵出荷設備:Floating Production Storage & Offloading)、タンカーや支援船といった石油生産設備や輸送船等の大規模な発注が予定されている。また、この油田は、海底5~6kmの深海に存在するため、その採掘・生産に関し、かなり高度な技術が要求され、ペトロブラスを始めとするブラジル側企業では、高度な技術を有する企業の開拓に関心が高まっている。
2.これは、高い技術力を持つ日本にとって、大きなビジネスチャンスと言える。このような好機を活かし、日本からブラジルの海洋開発・海事分野への進出を図るべく、官民力を合わせて以下のような取組が行われている。
(1)昨年8月、日伯ラウンドテーブルがブラジルにて開催され、ブラジル側(ペトロブラス、トランスペトロ等)と日本側(国土交通省、造船会社、舶用会社、船級協会等)との間で、相互の技術につき、意見交換が行われた。また、これに合わせ、伯造船工業会(SINAVAL)と日本舶用工業会との間で協力覚書が締結された。
(2)本年3月、東京にて、「海洋開発セミナー」が開催され、ブラジルよりペトロブラス、トランスペトロ、伯経済社会開発銀行(BNDES)、SINAVAL等の要人が招かれ、日本造船産業のPRが行われたほか、非公式ビジネスミーティングも開催された。
(3)本年5月、前田国土交通大臣(当時)と、ピメンテル開発商工大臣との間で、海洋開発・海事分野における両省間の協力覚書が署名された。右協力覚書は、日伯の海洋開発・海事分野の発展を図るべく、海事技術・産業分野(浮体式施設、オフショア船及び海上輸送システムなどを含む。)を対象分野とし、海事技術・産業の開発における協力(共同プロジェクト等)、両国の海事産業への参入の促進のための協力、これらを実施するためのワーキンググループの設置といった取組を行うことを内容としている。
(4)右協力覚書を踏まえ、本年7月末にはブラジルにて第2回日伯ラウンドテーブルが開催され、新技術、ローカルコンテント、造船産業進出時の課題等の意見交換が実施されるとともに、ペトロブラス等との共同研究・開発プロジェクトの実施の可能性が探られた。
(5)本年5月には川崎重工株式会社がブラジル・バイア州のエンセアダドパラグアス造船所に対する出資及び技術移転を行うことを決定したほか、6月にはIHIMUがブラジル・ペルナンブ-コ州のアトランチコスル造船所との間で技術支援契約を締結する等、日本の造船会社の進出が目立ってきている。これを契機に、今後は日本の舶用関連企業の進出も益々活発化することが期待される。
7月3日及び4日に「世界防災閣僚会議in東北」が開催された(全体会合は宮城県仙台市、分科会は岩手県一関市、宮城県仙台市、福島県福島市で開催)。外務省、内閣府、復興庁、国土交通省、国際協力機構(JICA)が主催し、国連開発計画(UNDP)、国連国際防災戦略(UNISDR)、国連人道問題調整事務所(OCHA)、岩手県、宮城県、福島県、仙台市、一関市、石巻市、福島市が共催した。
63か国、14国際機関の代表のほか、国際・国内NGO、民間セクターの代表など、約500名が参加しました。ブラジルからは、フェルナンド・ベゼーラ国家統合大臣が参加し、一関分科会において災害に強い社会について発表した。
会議では、防災の主流化・強靱な社会の構築の必要性、人間の安全保障の重要性、ハード・ソフトを組み合わせた防災力最大化の必要性、幅広い関係者の垣根を越えた連携の必要性、気候変動・都市化などの新たな災害リスクへの対処の重要性などを確認した。これらを総合的に推進していく「21世紀型の防災」の必要性を世界に向けて発信した。また、21世紀型防災を実際に推進していくために、ポストMDGsへの防災の位置付け、及び、本会議の成果を踏まえたポスト兵庫行動枠組の策定の必要性を各国と確認した。なお、我が国の取組として、第3回国連防災世界会議を我が国がホストする意向があること、及び、今後3年間で30億ドルを防災分野で資金提供するコミットメントを表明した。
「世界防災閣僚会議in東北」への出席後、ベゼーラ国家統合大臣は、7月5日、羽田国土交通大臣と会談し、防災に関する二国間協力について話し合った。
近年、ブラジルにおいては、洪水・土砂災害 が多発しており、防災分野での取組みの重要性が高まっている。我が国からは、今年度より国際協力機構(JICA)が、技術協力プロジェクト「統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクト」を実施しており、日本の優れた防災技術を活かしながら、ブラジルでの自然災害による被害軽減のため、ブラジル政府と協力を進めていく予定である。
羽田国土交通大臣と会談を行ったベゼーラ国家統合大臣
7月30日~8月3日、 ギマランエスCAPES理事長をはじめ、30名のブラジルの大学関係者が東大、京大、阪大、筑波大学、横浜国立大学、芝浦工業大学、JAXA、物質材料研究機構、理化学研究所等を訪問。
(関係サイト)
日本におけるポスドクのポスト及び伯関係機関サイト
7月31日、ルセーフ・ブラジル大統領、フェルナンデス・アルゼンチン大統領、ムヒカ・ウルグアイ大統領、チャベス・ベネズエラ大統領の出席の下、ブラジリアにおいてメルコスール臨時首脳会合が開催され、ベネズエラが正式にメルコスールに加盟した。ベネズエラの加盟により、メルコスール域内の人口は2.7億人(南米全体の70%)、GDPの合計は3.3兆米ドル(南米全体の83.2%)、また,国土面積の合計は1270万km2(南米全体の72%)となる。ベネズエラの加盟により、メルコスールの範囲がカリブ海から南米大陸の最南端まで及ぶこととなり,メルコスールの戦略的ポジションに変化がもたらされた。
Foto: Roberto Stuckert Filho/ PR
(1)ルセーフ大統領は、ロンドン・オリンピック開会式への出席のため、7月25日からロンドンを訪問し、同日、キャメロン首相との首脳会談が行われた。
(2)ルセーフ大統領は、伯の留学生送出し計画である「国境無き科学」計画に関し、両国の合意と英国の入国管理政策の間に大きな乖離があると不満を述べた。伯政府によれば、英国政府は,留学生等に対する英語試験の義務付けや、留学期間(一般的に1年から1年3ヶ月)より短い査証の有効期間設定なども行っている。
(3)伯英両国は、昨年、伯の「国境無き科学」計画について合意し、英国の100以上の大学が伯人留学生を受け入れることとなっている。伯側は、奨学金、学費及び滞在費を負担し、英国は、受入れ機関を確保し、査証の発給を容易にすることになっているが、査証の発給については未だ改善には至っていない。
(4)また、シリア情勢について、両首脳は、複雑で機微な状況にあるとした上で、ルセーフ大統領は、シリアに対する軍事介入には反対であるとの伯の立場を繰り返した。また両首脳は,イラン問題にも触れ、ルセーフ大統領は、イランの核問題につき、外交的な手段で関係国の理解促進を図る必要があると述べた上で、如何なる武力行使にも反対である旨強調した。
(5)また、英国とアルゼンチン間のフォークランド諸島問題について、ルセーフ大統領は、伯はアルゼンチンの主権を支持すると述べた。
Foto: Roberto Stuckert Filho/ PR
1.8月2日より、連邦最高裁においてメンサロン事件の裁判が開始された。メンサロン事件は2005年、政府が議会の支持を取り付けるため、政府広報費等を事実上横領して捻出した資金を使って与党議員を買収していたとの疑惑が発覚し、政権を揺るがした一大スキャンダル。第1次ルーラ政権及びPTの中心的メンバーであったジルセウ文官長、グシケン広報庁長官、クーニャ下院議長、ジェノイーノPT党首等が揃って失脚した(肩書きはいずれも当時)。
2.2日に開廷、3日から14日まで被告の口頭弁論が行われ、15日から判事による投票、20日から報告判事及び見直し判事による報告が開始され、その他判事の報告が9月末までに行われることとなっている。判決の言渡しの日程は未定。
3.メンサロン事件の公判開始を控え、関係者の発言が注目を集めた。PTは,メンサロン事件がマスコミにより誇張して騒ぎ立てられている旨主張し、政府与党の同事件への組織的関与を否定している。他方で、加熱するマスコミの報道とは裏腹に、現時点での国民の関心は必ずしも高くない。また、ルセーフ大統領は景気対策に奔走しており、閣僚に対しても通常業務に専念するよう指示を出している。