Embaixada do Japão

トピックス 2014年5月号

クリチバ市地下鉄建設計画

1.背景

ブラジル・パラナ州の州都であるクリチバ市では、1960年代(当時の人口は約60万人),都市開発のマスタープランが策定され,ジャイメ・レルネル市長(同市市長を3期務めると共に州知事を2期務め、現在は政界を引退)のリーダーシップのもと,先駆的な都市開発政策を実践してきたことで有名な都市です。都市交通政策も、高価格な地下鉄建設ではなく、BRT(バス高速輸送)システムと呼ばれる2両・3両連結バス・システムによる専用路線や、チューブ型バス停留所の導入等により低価格、かつ快適で利便性の高い公共交通システムが確立され,その先端的なシステムは国内外の都市がモデルとして導入されてきました。しかし,その後,急激な都市の拡張に伴い、クリチバ市の人口は1980年代に100万人,2000年には150万人を超え、自動車保有率の上昇とBRTシステムの限界が指摘され始めたことから,新たな交通システムの模索が始まりました。日系2世のカシオ・タニグチ市長(DEM、現パラナ州企画調整長官)時代には市内を横断する旧国道116号線を活用するモノレール導入も検討されましたが,景観への影響や資金繰りの問題で同計画は実現しませんでした。そして,タニグチ市長の後を受けたベト・リッシャ市長(PSDB、現パラナ州知事)の時代に,クリチバ市の都市計画のブレーンであるクリチバ都市計画研究所(IPPUC)によって、同市南部の工業団地地域から市中心部を通り北部を結ぶ全長22km(既存のバス専用路線の地下)を走る地下鉄導入計画が初めて策定されました。

ピーレスIPPUC総裁とルイジアナIPPUC職員
ピーレスIPPUC総裁とルイジアナIPPUC職員

2.計画内容の経過

2010年,リッシャ市長がパラナ州知事に当選したことに伴い、副市長から市長に繰上がったルシアノ・ドゥッチ市長(PSB)は前者であるリッシャ市長の計画を継承しましたが、連邦政府による「成長加速化計画2(PAC2)」の予算総額の変更等があった結果,地下鉄導入計画は2分割され,第1期としてクリチバ市南部と中心部を結ぶ14km(14駅),総額22億レアルの計画に対する連邦政府の10億レアルの無償支援が要請されました。そして,2011年10月,ルセーフ大統領がクリチバ市を訪れた際,同計画へ10億レアルの無償供与が1度は発表されましたが、その後,連邦政府による支払い条件変更等の理由により入札は延期されてしまいました。更に同年10月,市長選挙で勝利したフルエチ現市長(PDT)は,ドゥッチ市長時代に検討されていた開削工法と新オーストリアトンネル工法の組み合わせではなく、ほとんどの区間をシールド工法に変更し,全長も市南部から中心部までの計画が中心部を経由しカブラル地区まで延長(4駅が新設)され全長約18kmとなりました。その結果,総事業費は45億6千万レアルとなり,フルエチ市長は連邦政府に対し21億レアルの無償供与を再要請しました。

3.今後の見通し

このように、政治的な影響等を受け紆余曲折がありながらも、ようやく計画内容が落ち着き,昨年,トゥリウンフォ・ホールディング・デ・パルチシパソンエス社(THP)及び伯経済社会開発銀行(BNDES)の子会社BNDESPar社によって構成されるトゥリウンフォ・コンソーシアムによってフィージビリティ調査が4か月かけて実施されました。そして昨年10月,クリチバ市を訪れたルセーフ大統領は同計画に対する18億の無償供与並びにパラナ州政府及びクリチバ市に対し同計画向けに各々7億レアルの融資を発表しました。残りの資金はPPP案件として,落札業者が負担することになっています。

クリチバ市役所の計画局とそのブレーンであるIPPUCによると,現在まさに入札図書の最終チェックを行っているところであり,順調に行けば,5月中旬頃,ルセーフ大統領とフルエチ市長の立ち合いのもと入札が公示され、6月下旬から7月初旬に落札業者が決定する予定です。入札の透明性を確保するため,BM&FBOVESPA社が入札管理業者として選定されました。入札形態は施工と運営(35年間)のパッケージとなる予定の他,納入される車両は,現地調達率80%が条件になっているようです。また,完成後の乗車運賃は,現在のバス料金の一律2.70レアルより安く,現時点で一律2.45レアル以下に設定される予定です。施工期間は6年間の計画ですが,ワールドカップ(6月~7月)や国政選挙(10月)という大きなイベントが予定されていることもあり,計画通りに事業が動いていくのか注目されています。

地下鉄イメージ(出所:クリチバ市役所)
地下鉄イメージ(出所:クリチバ市役所)

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内政

1.2014年大統領選挙:ダタ・フォーリャ社世論調査
  • (1)ダタ・フォーリャ社が4月2日から3日にかけて162市の2,637人を対象に実施した世論調査によれば,現時点における大統領候補の支持率は以下のとおり。今回の調査のポイントは,ルセーフ大統領が支持率を6ポイント落とし(シナリオA。シナリオB及びCの場合は4ポイント),シルヴァ元環境相(PSB)が出馬する場合(シナリオC)には,決選投票にもつれ込むとの結果が出ていることにある。

(ア)シナリオA: 

 

本年2月

4月

ルセーフ大統領(PT)         

44%

38%

ネーヴェス上院議員(PSDB)

16%

16%

カンポス・ペルナンブコ州知事(PSB)

9%

10%

他候補の合計

5% 

6%

白票/無効票/誰にも投票しない

19%

20% 

分からない

7%  

9%

(イ)シナリオB:

 

本年2月

 4月

ルセーフ大統領(PT)         

47%

43%

ネーヴェス上院議員(PSDB)

17%

18%

カンポス・ペルナンブコ前州知事(PSB)

12%

14%

白票/無効票/誰にも投票しない  

 

19%

分からない 

 

6%

(ウ)シナリオC:   

 

本年2月

4月

ルセーフ大統領(PT)

43%

39%

シルヴァ元環境相(PSB)

23%

27%

ネーヴェス上院議員(PSDB)

15%

16%

白票/無効票/誰にも投票しない

 

13%

分からない

 

6%

(エ)シナリオD:

 

本年2月

4月

ルーラ前大統領(PT) 

54%

52%

ネーヴェス上院議員(PSDB)

15%

16%

カンポス・ペルナンブコ前州知事(PSB)

9%

11%

白票/無効票/誰にも投票しない

 

16%

分からない

 

5%

(オ)シナリオE: 

 

本年2月

4月

ルーラ前大統領(PT) 

51%

48%

シルヴァ元環境相(PSB)

19%

23%

ネーヴェス上院議員(PSDB)

14%

16%

白票/無効票/誰にも投票しない

 

11%

分からない

 

4%

  • (2)決選投票に関しては以下のとおり。

(ア)ルセーフ大統領51%,ネーヴェス上院議員31%

(イ)ルセーフ大統領50%,カンポス前州知事27%

  • (3)ルセーフ大統領の業績に関して「期待外れ」と答えた割合は,昨年3月には34%であったが,今回の調査では63%に上っていることが判明した。特に若年層,高学歴層及び富裕層の間で,同大統領に対する不満が高まっている。これに景気の停滞,昨年6月の大規模デモ,メンサロン裁判等が加わり,政府のイメージを更に悪化させている。さらに,ペトロブラス社の不正疑惑,物価の上昇等により,状況は益々不安定化する傾向にある。但し,ルセーフ大統領が,低い失業率と野党候補の認知度の低さに支えられて,未だ本命としてトップを走っていることもあり,今回の支持率低下が選挙戦に与え得る影響については不透明である。
2.カンポス前ペルナンブコ州知事の大統領選出馬表明
  • (1)4月14日,カンポス前ペルナンブコ州知事(PSB)は,ブラジリアにおいて,本年の大統領選への出馬を表明した。また,その際,シルヴァ元環境相(PSB)を副大統領候補に指名すると発表した。なお,両者は6月の党大会で正副大統領候補に正式に指名されることとなる。
  • (2)また,カンポス前州知事は,大統領選に勝利した暁には,ボルサ・ファミリアの支給対象家庭を2千5百万世帯に拡大し,中央省庁の数を現在(39)の半分程度に減らす等の一部の政策について言及した。またカンポス前州知事は,シルヴァ元環境相に言及し,我々が当選した場合,(シルヴァ元環境相は)新政権において積極的な役割を果たすことになる旨述べ,同元環境相が従来の副大統領よりも重要な役割を担うことを示唆した。
  • (3)カンポス前州知事は,シルヴァ元環境相を副大統領候補に指名し,シルヴァ元環境相への支持票を取り込むことで,自身の支持率の上昇を図り,今後の世論調査においては,現在の3位から2位に浮上することを当面の目標としている。ダタフォーリャ社による最新の世論調査によれば,カンポス前州知事の支持率は10%で,シルヴァ元環境相は27%となっている。選挙専門家は,現段階では,有権者の9割は両者の同盟について承知していないが,これが広く知れ渡るようになれば,カンポス前州知事の支持率が上昇する可能性はあると考えている。
3.伯石油公社における不正疑惑
  • (1)4月23日,ウェベルSTF判事は野党からの求めを尊重し,ペトロブラスのみを独占的に捜査するためのCPIの設置を決定した。与党は,連邦議会における本件捜査実施の阻止,又は野党にもダメージを与えうるサンパウロ地下鉄関連入札における談合疑惑及びスアペ港での汚職疑惑を捜査対象として追加することを主張していた。
  • (2)STFがペトロブラスのみを捜査するためのCPIの設置を命じたことに対し,カリェイロス上院議長(PMDB)は,伯大統領府の戦略に従い,右決定に対して控訴することにしている。PT及び与党各党は,右捜査を遅らせるための時間稼ぎを望んでおり,右控訴を支持している。これに対し野党は,CPIの即時設置を求めることにしており,ネーヴェス上院議員は,既に決定はなされ,CPI設置をこれ以上先送りするわけにはいかない,今こそ捜査を実施する時である旨述べた。
  • (3)CPIが上院において設置されるのは,各党のリーダーが各々のCPI委員(当館注:13名の議員から構成される)を指名してからのことになる。上院の規則に委員指名の期日は記されていないものの,上院議員らはカリェイロス上院議長が正式に委員の指名を求めてから30日後に設置する方向で動いている。
4.伯政府によるワールドカップ広報キャンペーン活動の開始
  • (1)伯政府は,サッカー・ワールドカップに対する伯国民のネガティブな意識を巻き返すべく政策広報を開始した。4月24日,政府が制作したCMのテレビ放映が開始されたほか,同28日には,ルセーフ大統領が主要紙のスポーツ関係の編集者を夕食会に招き,政府のキャンペーンに対する協力を求めた。テレビCMでは,ワールドカップ実現に向け最も重要であるインフラ整備について,バス専用レーン、空港、地下鉄の駅などを紹介するものとなっている。
  • (2)6月12日のワールドカップ開幕まで,伯大統領府広報庁は,独自の世論調査を実施し,同広報戦略によるワールドカップに対する支持率の推移を見守ることにしている。なお,現在の世論調査では,W杯は伯に利益よりも損害をもたらすとして,伯国民のW杯に対する悲観的な意見が増大している。

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外交

1.王毅中国外交部長の訪伯
  • 1.4月25日,王毅中国外交部長はブラジリアを訪問し,フィゲイレド外相と会談を行った。同会談では,ラ米地域における中国の投資,BRICS開発銀行の創設,IMF等国際機関の改革,今年伯で開催されるBRICS首脳会合及び習近平国家主席の訪伯等について協議した。また,両外相は,二国間関係を拡大させることを目的として2012年に設立された伯中グローバル戦略的対話の開会セッションを主催した。
  • 2.同26日には,王毅中国外交部長はルセーフ大統領を大統領官邸に表敬した。同会談には,フィゲイレド外相に加え,メルカダンテ文官長,ボルジェス開発商工大臣,ベルナルド通信大臣,ゲレル農務大臣,ボルジェス運輸大臣他が同席した。
  • 3.ルセーフ大統領との会談においても,貿易,中国によるラ米地域での投資及びBRICS首脳会合等について話し合った。今回の会談は,通常伯を訪問する外務大臣を迎えるのは伯外相であるが,7月の習近平国家主席の訪伯の重要性を考慮したルセーフ大統領が,詳細について協議するために王毅中国外交部長と会談することを望んだものである。
  • 4.王毅中国外交部長は,中国及びラ米諸国は,大きな補完性を有する生来のパートナーであり,中国はラ米諸国との外交を前進させるための能力と自信を有している旨述べた。また,習近平国家主席の訪伯に関し,右訪伯は両国関係の歴史において新たな印となり,全ての分野における中伯関係の深化,BRICS首脳会合への支持表明及び中国・Celacフォーラムの設立の表明といった機会となる旨述べた。

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