Embaixada do Japão

トピックス 2012年3月号

 

円借款「サンパウロ州無収水対策事業」に係る借款契約の調印

【写真】
署名を終えた、佐々木JICA理事(左)、SABESPのジルマ総裁(中)、フイ財務担当理事(右)

1.国際協力機構(JICA)は、2月23日、ブラジル・サンパウロ州上下水道公社(SABESP)との間で「サンパウロ州無収水対策事業」を対象として、335億8、400万円を限度とする円借款貸付契約に調印した。

2.本円借款は、ブラジルのサンパウロ州全域において、既存水源の効率的利用による水需要への安定的な対応を目指し、上水道関連インフラの改善及びコンサルティング・サービスに必要な資金を供与するもの。円借款は対象地域の給水管等の更新や漏水対策、コンサルティング・サービス等に充当される。

3.ブラジルでは、都市部の上水道普及率がほぼ9割に達する一方で、生産した水量のうち、漏水や盗水、水道メーターの故障等で受益者に届かず失われる水の割合(以下、「無収水率」)は全国平均で37パーセントであり、既存の水資源の効率的な利用が課題となっている。

4.本事業の対象であるサンパウロ州は、同国GDPの3分の1以上の経済規模を有する大都市圏であり、同国の堅調な経済成長に伴い、年々、経済規模および人口が増加し、水需要も増加している。他方、同州の既存の水資源量は国全体の1.6パーセントしかなく水源が限られている一方、無収水率は約32パーセントと供給する水の3分の1が失われている。

5.増加する水需要への対応として、これら大量の無収水を削減することにより、既存水源の効率的利用が可能となるほか、新規に水資源を開発する必要性がなくなることから、自然環境への望ましくない影響を減らすことが可能となる。また、無収水率を削減することで、水道収入が増加することから、公共事業である水道事業の経営安定化も期待される。

6.本事業は、SABESPによる「無収水削減およびエネルギー効率化プログラム」の一部として、2012年から2016年までに実施される無収水対策支援事業をJICAが支援するもので、水資源の乏しいサンパウロ州における水供給事業の効率化を通じ、同地域の安定的な水供給を目指す。

7.実施機関であるSABESPは、ブラジル全人口の約22パーセントを占めるサンパウロ州の人口の3分の2に当たる約2、700万人に上下水道サービスを提供する中南米でも最大の水道事業体である。SABESPに対し、JICAは、生活廃水処理や無収水対策などの分野で、長年にわたり技術協力を実施してきた。無収水対策に係る管理手法および人材育成に係る技術移転を行った「無収水管理プロジェクト」(2006~2010年)を通じ、ブラジル人専門家の無収水管理技術の向上に大きな成果がみられ、本円借款事業では、この成果の継承・発展が期待されている。また、日本から技術移転された無収水管理手法を生かし、JICAとSABESPが共同で周辺の南米諸国への技術協力(三角協力)を行っており、技術協力、円借款、三角協力といったさまざまな形態で、SABESPは国際協力のパートナーとなっている。これらの国際協力の業務への貢献により、SABESPは2011年、第7回JICA国際協力感謝賞を受賞し、今回の円借款の調印に合わせ、同賞の授与が行われた。

8.ブラジルの日系人約150万人のうちの半数以上が暮らし、日本人移住の歴史をその地に刻むサンパウロ州で実施される本事業は、日本とブラジルの友好関係の強化にも貢献することが期待される。

(参考)

1.借款金額及び条件


案件名

借款金額
(百万円)

金利(%/年)

償還期間
(年)

据置期間
(年)

調達条件

本体

コンサルティングサービス

サンパウロ州
無収水対策事業

33、584

1.7

0.01

25

7

一般アンタイド

2.事業実施機関
サンパウロ州上下水道公社
(Companhia de Saneamento Basico do Estado de Sao Paulo-SABESP)

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パラー州のパーム椰子ビジネス

パラー州のパーム椰子の栽培面積、パーム油生産量はともに国内1位で、パラー州工業連盟(Fiepa)によれば、油の生産量は実に全国の95%を占める。州内の栽培面積は13万ヘクタールで、1万3,000人の直接雇用、2万5,000人の間接雇用を創出しており、Fiepaはこれらの数字は今後3年間で倍増するとみている。パーム椰子油は、化粧品や加工食品の原料、マーガリン、食用油など、幅広い用途を持つことで知られ、経済成長に伴い国内需要は急速に伸びているが、ブラジルのパーム椰子の栽培面積は世界13位(FAO、2011年7月)にとどまっており、輸入しているのが現状だ。国産パーム油の増産が求められる中、広大な土地を有し、人件費も他州に比べて低いパラー州が、パーム椰子ビジネスの集積地となりつつある。地場企業に加え、国営石油公社のペトロブラス、鉄鉱大手のヴァーレの子会社が、椰子栽培や油の生産に参入しているほか、州東北部では、穀物メジャーによる製油所建設の話も上がっている。国内化粧品大手のナトゥーラも、パラー州で原料調達を進めている。

「食糧との競合」の懸念から、大豆に代わる原料が模索されてきたバイオディーゼルでも、パーム椰子は最も注目されている。温室効果ガスの排出量削減、新たな雇用創出等を狙い、ブラジル政府は2008年、国内では主に商用車の燃料として使用されるディーゼル油について、バイオディーゼルの混合を義務化した。2005年にバイオディーゼルの混合が許可された当初は、零細農家が栽培するジャトロファ(ピニャオン・マンソ)やトウゴマ(マモーナ)等を原料とすることが期待されていたが、生産コストなどが障害となり、既に大規模生産が行われていた大豆が主要原料となった。しかし、大豆は醤油などの食品原料となるほか、家畜の飼料原料としても重要である点が問題視された。そこで、ブラジル政府が搾油可能量や生産コスト、中小規模の農家でも栽培可能か等の点につき複数の植物で調査を行った結果、パーム椰子が最有力との結果が得られた経緯がある。

パラー州では、東南アジアでみられたパーム椰子栽培による環境破壊を教訓として、アマゾン地域の既に熱帯雨林が伐採された土地のみで栽培を許可する、房や芯などから有機肥料を生産し、大量廃棄によるメタンガスの発生を防ぐ等の方策がとられている。また、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)が、零細農家によるパーム椰子栽培への参画プログラムを進めるなど、環境や地域社会との共生を念頭に事業が進められている。

近年、パラー州トメアスーは日系人主導のアグロフォレストリー農法で注目を集めているが、パーム椰子の高収益性に引かれ、同農法による熱帯果樹等からパーム椰子の単一栽培に転向する小規模農家も見られるなど、弊害がない訳ではない。しかし、大豆1ヘクタールにつき油の生産量が600キロであるのに対し、パーム椰子は同4トンと非常に高く、また、食糧との競合の懸念も少ないことから、バイオディーゼルや食用油等の原料として、パーム椰子の重要性は今後も高まることが予想される。

通貨高や割高な輸送コスト等により、高い輸出競争力は現時点では期待できないが、ブラジルの国内市場の拡大ペースにはそれを補う勢いがある。パラー州では、日系人が幹部を務める優良企業もパーム椰子事業に参入しているため、日本企業とこれら企業との合弁事業も、興味深い戦略になると考えられる。

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外交

1.ヴェスターヴェレ独外務大臣の訪伯
2月13日、ヴェスターヴェレ独外務大臣がブラジルを訪問した。独政府は、自由貿易を促進していることを協調しつつ、現在の世界の状況に鑑み、保護主義的な措置は避けるべきであると主張し、伯政府による輸入車等への工業製品税(IPI)引上げ措置への直接的な言及は避けたもののブラジルの措置を暗に批判するコメントを発表した。

2.第2回伯中ハイレベル協調協力委員会(COSBAN)
2月13日、ブラジリアにおいて第2回伯中ハイレベル協調協力委員会(COSBAN)が開催された。同日、ルセーフ大統領は、王岐山副総理と会談し、ブラジルと中国の間の通商関係の進展について議論が行われた。COSBANにおいては、テメル副大統領は、伯外務省での昼食会で、伯は、伯市場に中国製品が大量に入っており、伯製品に影響を引き起こしていることに懸念を有しているとして、中国側に輸出の自主規制を求め、現状では、伯政府が伯国内製品を保護する措置をとることも排除できないことをにおわせた。

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内政

  • バイーア州サルバドールでの軍警察ストライキ

1月31日、バイア州都サルバドールにおいて、軍警察約3万人中約1万人が参加し、待遇改善を求めるストライキを起こし、その後、右ストライキ参加者は家族とともに州議会前を占拠した。この異例な事態に対し、連邦政府は陸軍、連邦警察及び国家治安維持部隊を派遣したが、州政府の発表によれば、12日間に亘るストの期間中、サルバドール市及び近郊における治安悪化のため、180人が殺害された。これは、通常の2倍のペースで殺人事件が発生したことを意味する。さらに、リオ州をはじめとする各州へのストライキの飛び火が危ぶまれたが、バイア州においては、州政府と警察官側が賃上げ交渉に合意したため、ストは2月11日に終結した。バイア州同様大規模なカーニバルを目前に控えたリオデジャネイロにおいてもストが実施されたが、軍警察は厳格な処罰を行い、警官側の足並みが乱れ、ストは失速し、大きな混乱には至らなかった。

  • セーラ元サンパウロ州知事のサンパウロ市長選出馬

2月25日、セーラ元サンパウロ州知事は、PSDB内のサンパウロ市長選候補を指名するための党内予備選挙出馬を表明した。同候補は、2006年の市長選挙において当選しながらも2008年の州知事選のため1年で辞任した経緯があり、今回も2014年大統領選出馬のため任期途中の辞任が懸念されているが、本人は当選した暁には市長の任期を全うする旨宣言している。なお、この立候補について、カサビ現サンパウロ市長(PSD)はセーラ候補の全面的支持を表明した。

  • 閣僚交代

(1)2月6日、イリニー・ロペス大統領府女性問題庁長官はエスピリト・サント州都のヴィトリア市長選に出馬のため辞職し、後任にはエレオノーラ・メニクッチ・サンパウロ連邦大学教授が指名された。同教授は、軍政時代に左翼ゲリラとして活動し、ルセーフ大統領と共にサンパウロ市内のチラデンチス収容所に投獄された経緯を有する。

(2)2月29日、大統領官邸はルイス・セルジオ漁業養殖大臣(PT)に代わり、マルセロ・クリヴェラ上院議員(PRB)の大臣就任を発表。この交代劇には、サンパウロ市においてPRBの支援を受け、PT候補者であるアダッジ前教育大臣の選挙戦を有利に進める狙いがあるとみられている。   

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日伯宇宙協力

外務省は、1月31日から2月7日、小澤秀司JAXA(宇宙航空研究開発機構)理事をブラジルに派遣し、ブラジル宇宙庁と日本国大使館、各地日本国総領事館との共催で、ブラジリア、サンジョゼドスカンポス、.リオデジャネイロにおいてセミナーを実施した。セミナーにおいては、小澤理事より、日本の宇宙開発の歴史、宇宙開発戦略及び宇宙関連技術による国際貢献等についての講演が行われた。

小澤理事は、ハウピ科学技術大臣、トレネポウル環境・再生可能資源院(IBAMA)総裁、アハエス・農牧研究公社(EMBRAPA)総裁等との意見交換も実施し、森林監視や農業、防災対策等の様々な分野における我が国の宇宙技術の有効性について広報を行い、ブラジル側からも水害対策・防災協力等についての我が国の協力への期待が表明された。また、トレネポウルIBAMA総裁からは、ブラジルの気候変動において最も重要な自主的目標となるアマゾン森林減少の80%削減は、ほぼ達成の見込みであるが、その中で、JAXAの陸域観測衛星「だいち(ALOS)」による画像が、アマゾン違法伐採監視において非常に重要なツールとなっている旨述べられ、今後の協力に対する期待も表明された。

また、モンセラ宇宙庁国際局長が訪日し、3月8日、東京において、外務省主催の日本・ブラジル宇宙セミナーに出席するなど、宇宙分野における一層の交流が進められている。

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