Embaixada do Japão

トピックス 2013年02月号

アマゾナス州における麻薬密輸の増加-治安悪化への懸念

ブラジル国内で発生する犯罪の多くが麻薬関連であると言われるが,マナウス市も例外ではない。犯罪件数自体は微減(2011年と比較し,2012年は-5.4%)に留まるものの,薬物所持・使用や薬物密輸の発生件数はそれぞれ大幅に増加している(文末の表参照)。

背景には,ブラジルを取り巻く麻薬取引の事情の変化がある。かつてブラジルはコロンビア,ボリビア,ペルーといった生産国から,米国や欧州へと麻薬を輸出する中継地であったが,今日ではブラジルの経済成長にともない購買層が増え,コカイン使用者数は280万人に達し,米国についで世界で2番目にコカインの消費が多い国である。コロンビア,ペルーといった麻薬の生産地と国境を接しているアマゾナス州についても,従来はサンパウロやリオデジャネイロといった国内主要都市,またはそれらの都市を通じて欧州へ向かう薬物密輸ルートの経由地にすぎなかったが,現在マナウス市は国内でも有数の消費地となっている。
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また,アマゾナス州の中でもコロンビアとの国境を接する地域では,コロンビア革命軍(FARC)のゲリラがインディオをいわゆる運び屋として雇うという古くからの問題がある。2003年,連邦警察がFARCに雇われていたインディオの身柄を確保したことで,国境付近のインディオの部族が生活用品の運搬や違法滑走路のカモフラージュ等に従事していたことが判明した。彼らは密林や縦横無尽に走る河川を熟知し,長期間にわたる密林や河川での生活が可能であるため国境地帯の移動には最適であり,また近隣地域にさしたる産業もないことから,現金収入の得られる密輸に関わる者も多い。コロンピア・ペルーとの三国国境地帯に居住するインディオのチクナ族は今年に入って新聞社の取材に対し,「部族の子供,大人,老人までもが麻薬の入った大量のカプセルを飲みこみ,麻薬の運び屋として働いている。身体的負担に耐えられず亡くなる者も多くいるが,生き残ったとしても臓器売買の目的で殺害される場合もある」と述べており,状況はさらに悪化していることがうかがえる。                             

図1:作戦実行地域

この状況に対し,連邦政府は2011年6月に「国境地域戦略計画」を策定し,「アガタ作戦」と「センチネーラ作戦」と呼ばれる2つのオペレーションを展開している(図1参照)。                            
陸海空軍約8千人を動員して行われた「アガタ作戦」では主に国境犯罪と環境犯罪が対象となり,コロンビア国境付近における違法滑走路の爆撃,金の違法採掘場の摘発等が行われた。また連邦警察がアマゾナス州軍警察と協力して行った「センチネーラ作戦」では,全伯の国境地帯における麻薬組織の摘発及び麻薬の押収に焦点があてられた。ブラジルは近隣国と全長1万7千Kmの国境線をもち,そのうち1万キロでペルー等の麻薬生産国と接していることから,作戦実施は困難であったものの,開始から1年間で,42の犯罪組織が解体され,現行犯逮捕は7,500人にのぼり,146トンの大麻と24トンのコカインが押収されるなど,「センチネーラ作戦」は一定の成果を見せているといえる。

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ただし,現在麻薬犯罪の増加と同様に懸念されているのが,不安定なコロンビア情勢である。コロンビア政府と武装勢力FARCは和平交渉を継続しているものの,交渉中も戦闘が続き予断を許さない状況にある。 先般アルジェリアで発生した日本人を含む人質拘束事件後,世界中で同様の事件に対する警戒が高まっているが,FARCをはじめとする近隣国の武装グループとの関わりが深い西部アマゾン地域も例外ではない。マナウス市にはFARCの拠点があるとの報道もあるほか,フリーゾーンがあり平均所得が高く,外国人駐在員の多い同市では誘拐事件等が起き得る状況が整っている。今後もより一層の警戒が必要とされている。

犯罪種別

月間

年間
合計

前年比

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

殺人

84

74

68

88

97

80

101

78

72

63

71

71

947

2.4%

殺人未遂

3

1

5

7

4

4

5

3

1

1

3

2

39

-4.9%

傷害

668

668

843

955

874

921

901

981

1117

956

886

896

10,666

12.5%

家庭内暴力

416

401

219

231

246

218

229

287

308

292

295

320

3,462

-33.2%

強姦

84

76

92

65

85

82

67

99

77

111

87

104

1,029

10.3%

殺人未遂

63

63

51

44

42

45

19

42

31

40

50

49

539

-16.0%

窃盗

3680

3782

3353

3557

3757

2489

2419

3003

3301

2945

3101

2453

37,840

-1.0%

強盗

2965

2291

2259

2283

2611

2228

2247

1894

1872

1963

1767

1767

26,147

-16.1%

銃器不法所持

60

49

54

48

67

77

74

95

72

67

68

68

799

26.0%

盗難車押収

185

167

134

171

230

195

199

155

130

125

127

112

1,930

-9.0%

薬物所持・使用

111

134

173

163

142

143

160

220

179

129

152

194

1,900

27.2%

薬物密輸

159

140

148

115

154

162

201

260

234

203

187

208

2,171

72.7%

8478

7846

7399

7727

8309

6644

6622

7117

7394

6895

6794

6244

87,469

-5.0%

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外交

1.伯EU首脳協議の開催
  • (1)1月24日,ブラジリアにおいて,ブラジル側からはルセーフ大統領,パトリオッタ外務大臣,マンテガ財務大臣,メルカダンテ教育大臣,ピメンテル開発商工大臣,ハウピ科学技術大臣,テイシェイラ環境大臣等,EU側からはファン=ロンパイ欧州理事会議長及びバローゾ欧州委員長の出席を得て,第6回伯EU首脳協議が開催された。
  • (2)首脳協議の後に発出された共同宣言では,伯EU間の継続的な結びつきの強化について言及された。また。経済分野では,双方の経済の現状と世界経済の現在の課題について意見交換され,WTOのドーハラウンドの成功裏の終結に向け,本年12月開催予定の第9回WTO閣僚級会合を成功裏に終える重要性について強調するとともに,保護主義拡散の防止へのコミット及び貿易・投資障壁又は投資歪曲的補助金をとらない旨のコミットを再確認した。

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Foto: Roberto Stuckert Filho/PR

2.チャベス大統領の大統領就任式と再任問題
  • (1)ガルシア伯大統領国際担当特別補佐官は,昨年12月31日から1月1日にかけ,チャベス・ベネズエラ大統領の容態確認のため,ルセーフ大統領の指示により,チャベス大統領の入院先であるキューバに派遣された。同地ではチャベス大統領との面会はかなわなかったものの,ラウル・カストロ国家評議会議長,フィデル・カストロ前国家評議会議長及びマドゥーロ・ベネズエラ副大統領と会談を行った。
  • (2)1月7日,大統領府で行われた記者会見において,ガルシア補佐官は,チャベス大統領の容体は重篤で、いかなる予測も立てることができない旨述べ,伯政府としては,1月10日に予定されていたチャベス大統領の就任を180日延期可能とするチャベス派の主張を支持する旨発言した。
    (3)同補佐官は,大統領回復を待つための就任延期は,チャベス派の工作ではなく,憲法規定の遵守であるので,いかなるクーデターの可能性もない旨述べ,パラグアイのルゴ大統領罷免がクーデターと見なされた事態との類似性はない旨発言した。

【内政】

1.サンタマリア市の火災事故
  • (1)1月27日午前2時半頃,リオ・グランデ・ド・スール州サンタマリア市のディスコ「Kiss」において火災が発生し,大学生を中心に,230名以上が死亡。今回事故は,1,200名程度がいたとみられるディスコ内においてショーを行っていたバンドが使用した花火が,天井に引火したことにより発生。消防設備が十分機能しないまま瞬く間に延焼し,非常出口や非常誘導灯が設置されていない暗い店内でパニックに陥った客が,黒煙から逃れようと,狭い出口やトイレに大挙して押し寄せたとみられる。また,店内で喧嘩が発生したものと勘違いした警備員が,料金未精算の客が外に逃げ出さないよう,一つしかない出口を数分間封鎖したため,被害が拡大したとの情報もある。なお,今回事故による死者のうち,火傷によるものは約10%に過ぎず,約90%が一酸化炭素中毒によるものとみられている。
  • (2)今回事故は,503名が死亡したリオデジャネイロ州ニテロイ市のサーカスでの火災(1961年12月17日)に次ぐ伯史上二番目の火災事故であり,自然災害や航空機事故をあわせても伯史上六番目に多い死者を出す大惨事となった。また,ディスコでの火災事故に限って言えば,全世界で発生したものの中でも史上五番目の規模であった。
  • (3)1月27日,ルセーフ大統領は,CELAC・EU首脳会合及びCELAC首脳会合のため訪問中のチリ・サンチアゴで今回事故の第一報に接し,それ以降の会議やバイ会談等の予定をすべてキャンセルし,遺族や負傷者を慰問するとともに,支援のための協議を行った。今回事故を受け,伯国内外から弔意が寄せられ,日本からも岸田外務大臣による弔意が発出された。
2.連邦上院・下院議長選挙
  • (1)1日,連邦上院議長選挙が行われ,ブラジル民主運動党(PMDB)のレナン・カリェイロス(アラゴアス州)が得票率71%(得票数56)で議長に選出された。対抗馬のペドロ・タケス(民主労働党(PDT))の得票率は22%(得票数18)。
  • (2)4日,連邦下院議長選挙が行われ,PMDBのエンリケ・エドゥアルド・アルヴェス(リオグランデドノルテ州)が得票率54.5%(得票数271)で当選した。他候補の得票率は,ジュリオ・デルガード(ブラジル社会党(PSB))33.2%(得票数165),ローゼ・デ・フレイタス(PMDB)9.4%(得票数47)及びシコ・アレンカール(社会主義自由党(PSOL))2.2%(得票数11)。
  • (3)なお,今次選挙では,本命視されていたカリェイロス議員とアルヴェス議員が順当に当選を果たしたが,選挙戦の過程において,両議員の不正疑惑も浮上しており,今後の展開次第では,新議長の進退問題に発展する可能性がある。カリェイロス議員については,愛人との間にもうけた子供の養育費を大手建設会社の関係者に払わせていたとの疑惑(2007年に発覚。当時,上院議長を務めていたカリェイロス議員は,この件により,議長を辞任。)に関し,検事総長がカリェイロス議員を公金横領,文書偽造及び偽造文書使用の容疑で刑事訴追するための許可を連邦最高裁判所に対して求めている。また,アルヴェス議員に関しても,秘書名義の会社に対する助成金を国家予算案に盛り込んでいた等の疑惑について,現在,検察が捜査中。

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