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最近の経済情勢 2014年9月

1.経済情勢・経済見通し

(1)中銀が週次で発表しているエコノミストへの調査に基づく経済成長予測に関し、8月29日の発表では、本年の経済成長見通しは0.52%と前週より下方修正されており、明年についても1.10%と前週よりも下方修正されている。

(2)8月29日、ブラジル地理統計院(IBGE)は、本年第2四半期(4月~6月期)のGDP成長率が前期比マイナス0.6%、前年同期比マイナス0.9%となったと発表した。

(3)8月28日、ワーナーIMF西半球担当局長は、チリで開催されたセミナーにおいて、商品相場の落ち込みで景気が減速しており、投資も弱まっているため、ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチン、ベネズエラの各国の2014年の成長見通しが下方修正されるだろうとの見方を示した。

2.経済政策等

(1)8月5日、マンテガ財務大臣は、ロイターとのインタビューで、ブラジル経済は本年後半に上向き始めて、明年にはより妥当な水準に達すると述べた。また景気回復は緩やかで成長率が4%を超えることはないと予想。しかしブラジル経済は過去3年の低い成長率と高いインフレにもかかわらず、スタグフレーションには陥っていないと述べた。

(2)8月8日、アエシオ・ネーヴェス大統領選候補は、現在ブラジル中銀が行っている外国為替市場での通貨スワップを用いた市場介入を批判し、自分が当選したらレアルを完全な変動相場制とする、これによってブラジルの対外収支が均衡を取り戻し、レアル高で苦しんでいる国内製造業の競争力も高まると述べた。

(3)8月20日、伯財務省及び伯中央銀行は、景気刺激策の一環として銀行融資を促進させるため、不動産登記情報の集約、カバード・ボンドの発行承認、定期預金の一部をホームエクイティローンに振り向けることを容認、債務不履行時における資産所有権移転の簡素化、中銀への強制預託金の削減等の政策を発表した。

(4)8月26日、マンテガ財務大臣は、(ブラジル経済が危機的状況にあるのではとの質問に対し)株価が上昇しており、外国投資も増加している、失業率も歴史的低水準にある現状をどうすれば経済危機と呼べるのかと述べ、ブラジル経済に対する強気の見方を強調した。

(5)8月28日、伯財務省及び企画予算省は2015年度年間予算法(LOA)案を議会に提出。同法案は、

  • (ア)予算総額は2.86兆(約132兆円)レアル(うち義務的経費が89.7%を占めており、裁量的経費は10.3%)
  • (イ)2015年の実質GDP成長率見通しは3.0%、インフレ率見通しは5.0%。
  • (ウ)プライマリーバランス黒字目標は、政府全体で1147億レアル(GDP比2.0%)(うち、中央政府の目標は860億レアル(GDP比1.5%))としている。

(6)8月29日、マリナ・シルヴァ大統領選候補(元環境大臣)は、自身の政権構想プログラムを発表した際の記者会見において、歳出の伸びを経済成長率未満に抑え、歳出動向を監視する機関を設け、財政の透明性を改善するとの意向を示した。また、中銀による為替市場介入を打ち切り、輸出業者を支えることや複雑で面倒な税制の全面的な見直しにも取り組むとしている。

3.中銀の金融政策

(1)8月6日、トンビーニ伯中銀総裁は、現在11%となっている政策金利(Selic)を早期に引き下げる意向はないことを強調し、インフレとの戦いは進捗しており、本年下半期には経済回復のシナリオを描いていることを明らかにした。

(2)8月8日、アラウージョ伯中銀副総裁は、レアルが下落してもインフレが収束する傾向に変化はないとの見通しを示し、近々金融政策を変更する予定はないことを示唆した。

(3)8月20日、伯中銀は、民間金融機関が中銀に預け入れる強制預託金を100億レアル引き下げ、その分を融資に回すことを促す政策を発表した。

(4)8月25日、アワズ・ペレイラ伯中銀副総裁は米国でのシンポジウムにおいて、各国中銀の非伝統的な金融政策にもかかわらず、世界経済は企業の投資活動においていわゆる「アニマル・スピリット」(企業の投資行動の動機となる将来に対する主観的な期待(血気や野心等から時として予測不能で不合理な行動をする心理を含む))を取り戻せていないと述べた。

4.為替市場・株式市場

(1)為替市場

(ア)8月のドル・レアル為替相場は、米国の雇用統計が市場予測を下回ったことからドル安で始まったが、ロシアとウクライナの間での緊張感が高まるとドルが買われ、8日には1ドル=2.2986レアル(売値)と月内のドル最高値を記録した。しかし、中東での一時停戦やウクライナ情勢の緊張緩和とともに、中央銀行が大規模な為替介入を行ったことでドル安レアル高に振れた。

(イ)また、ブラジルで大統領選の有力候補だったカンポス氏が飛行機事故で死亡し、代わって知名度の高いマリナ・シルヴァ氏が大統領選に立候補すると、経済運営を批判されているルセーフ大統領との接戦だけでなく、政権交代の可能性まで取り沙汰され、さらにレアルが買われる展開となった。

(ウ)その後、発表された米国連邦準備理事会(FRB)の議事録やイエレン議長が金利引き上げの可能性を示したことで、金利上昇を見越したドル買いの動きが一時強まった。しかし、マリナ・シルヴァ大統領選候補が世論調査で躍進したことや、景気後退を示すGDPが発表され政権交代への期待感がさらに高まったことで、月末に向け再びレアル高が進んだ。そして、月末最終日には1ドル=2.2390レアル(買値)と月内のドル最安値を記録し、ドルは前月末比マイナス1.23%の下落で8月の取引を終えた。

(2)株式市場

(ア)8月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は月の前半、ロシアと欧米諸国間の関係が悪化したこと、ペトロブラスの本年上半期の純利益が前年同期比で大幅なマイナスになったこと、大統領選の世論調査でルセーフ大統領有利の情勢に変化がなかったことなどから、軟調な推移となった。ルセーフ大統領やペトロブラスの幹部が燃料価格の引き上げについて言及したため、同社の財政状況が改善するとの期待が高まり同社株が買われる場面もあったが、カンポス候補が飛行機事故で死亡したことで選挙戦の混迷度が増すとの見方が強まり、株価は一時大幅な下落となった。

(イ)しかし月の後半、株価は右肩上がりで上昇する展開となった。カンポス氏に代わってマリナ・シルバ氏が立候補を表明し、大統領選をめぐり決選投票だけでなく政権交代の可能性までも取りざたされるようになったことで、政府系企業の経営改善等が期待できるとの見方が強まりペトロブラスなどの株が買われたこと、発表された本年第2四半期GDPはブラジル経済が景気後退に入ったことを意味するものであったが、むしろ大統領選では野党候補に有利な材料になると考えられたことなどが要因として挙げられる。そして株価は月末、今年の最高値となる61,288ポイントまで値を上げ、前月末比で+9.78%もの上昇で8月の取引を終了した。

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