トピックス 2015年12月号
平成27年12月16日
(1) 秋篠宮同妃両殿下のブラジル御訪問
(2) 医療セミナーの開催
(3) アマゾナス州マナウス市における日本文化月間
内政(1)緊縮財政実現に向けた動き:残りの大統領拒否法案審議の実施 (2)現職上院議員の逮捕
日伯関係(1)連邦議会上院における日伯外交関係樹立120周年記念公聴会の開催 (2)ルセーフ大統領の訪日延期
外交(1)亜大統領選挙の伯への影響 (2)ルセーフ大統領とファビウス仏外務大臣との会談
(1)秋篠宮同妃両殿下のブラジル御訪問
10月27日~11月10日にかけて,秋篠宮同妃両殿下が,ブラジルを御訪問された。両殿下の御訪伯の主な日程は,以下の通り。(ア)10月28日
両殿下は,サンパウロのグアルーリョス空港に御到着された。同日,イビラプエラ公園で開拓先没者慰霊碑に御献花された後,サンタクルス病院を御視察され,ブラジル日本文化福祉協会において日系代表者との御懇談後,ブラジル日本移民資料館御視察をされ,日系団体主催歓迎式典に御臨席された。
(イ)10月29日
両殿下は,憩の園(老人ホーム)及びサンパウロ大学本部キャンパスを御訪問された他,ブタンタン毒蛇研究所を御視察された。また,サンパウロ州政庁を御訪問され,アルキミン州知事御引見後,同州知事及び在サンパウロ総領事共催歓迎レセプションに御臨席された。
(ウ)10月30日
両殿下は,2つ目の御訪問都市であるクリチバにおいて,フルエチ・クリチバ市長の出迎えで日本広場を御訪問された他,クリチーバ日伯文化援護協会を御訪問された。また,リッシャ・パラナ州知事を御引見された。その後,オスカー・ニーマイヤー美術館で開催された,日ブラジル120周年記念行事兼パラナ州日本人入植100周年記念行事に御臨席された。
(エ)10月31日
両殿下は,クリチバを出発され,ロンドリーナ市,ロランジア市及びマリンガ市を御訪問され,ロンドリーナ文化体育協会御訪問,トミ・ナカガワ公園御視察,パラナ日伯文化連合会御訪問,パラナ日本移民センター御訪問・記念式典御臨席,マリンガ日本公園御訪問及びマリンガ文化体育協会御訪問等を行われた。
(オ)11月1日
両殿下は,マット・グロッソ・ド・スール州を御訪問され,パンタナール自然保護地域を御視察された。
(カ)11月2日
両殿下は,カンポ・グランデ市においてアザンブジャ・マット・グロッソ・ド・スール州知事を御引見された。続いて,ドン・ボスコ文化博物館御視察,クルベ・デ・カンポ市内共同センターにおいて日系代表者との御懇談後,日系団体主催歓迎式典に御臨席された。
(キ)11月3日
両殿下はパラー州を御訪問され,汎アマゾニア日伯協会での「在留邦人・日系団体幹部」との御懇談,その後,同協会2階講堂で開催された日ブラジル120周年記念「在留邦人・日系人歓迎行事」に御臨席された他,ジャネーテ・パラー州知事御引見並びに同州知事主催夕食会に御臨席された。
(ク)11月4日
両殿下は,パラー州にてヴェール・オ・ペーゾ市場御視察,アマゾン河船御視察及びエミリオ・ゲルジ博物館「キャンパス」御視察を行われた。夜,両殿下はブラジリアに御到着された。
(ケ)11月5日
両殿下は,クーニャ下院議長を御引見され,日伯外交関係樹立120周年記念式典に御臨席された。続いて,ローレンベルグ連邦特別区知事を御引見された。また,大使公邸で開催された日系社会歓迎行事に御臨席された。
(コ)11月6日
両殿下は,ルセーフ大統領を表敬された。また,ブラジル政府主催日ブラジル外交関係樹立120周年記念午餐会に御臨席された。夜,リオデジャネイロに御到着された。
(サ)11月7日
両殿下は,日ブラジル120周年記念行事(リオ植物園日 本庭園改修事業)に御臨席された後,ペザオン・リオデジャネイロ州知事を御引見され,同州知事主催昼食会に御参加された。また,リオデジャネイロ日系社会・在留邦人歓迎行事に御臨席された。
(シ)11月8日
両殿下は,リオデジャネイロにて,国立自然史博物館御視察,リオデジャネイロ植物園御視察,ポンデアスーカル御視察等を行われた。夜,両殿下は帰国の途につかれた。
(2)医療セミナーの開催
11月27日、サンパウロで、ブラジル日本商工会議所及び日本経済新聞社の共催により、外交関係樹立120周年記念セミナー「日伯医療連携の未来~最新技術が拓く健康社会」が開催された。中尾医機連会長、北條PMDA技監、飯田厚労省審議官、ペドロ・イボーANVISA副長官等、日伯の各方面からの代表者による講演・パネルディスカッションが行われ、今後の日伯の医療連携の方向性について活発な討議等が行われた。大使館からは梅田大使が挨拶を行った。(3)アマゾナス州マナウス市における日本文化月間(11月)
11月に,在マナウス日本国総領事館は,西部アマゾン日伯協会,FUCAPI(先端技術分析開発センター),マナウス市職業センターと共催の下,「日本文化月間」を実施した。日本文化月間で実施した主な事業は,以下のとおり。
(ア)オープニング,講演会及び展示会「アマゾンへの日本人移住~高拓生の軌跡~」(11/3~5)
11月3日から5日,マナウス市議会においてアマゾン移住に関する講演会・展示会「アマゾンへの日本人移住~高拓生の軌跡~」を実施した。5日には同市議会にて日ブラジル外交関係樹立120周年記念特別式典も併せて実施された。
(イ)包装ワークショップ(11/21),千代紙人形ワークショップ(11/28)
11月21日及び28日,服飾デザイナーとしてマナウス市で活躍する山本祥子氏を講師に招き,日本式包装技術のワークショップ及び千代紙人形作製のワークショップを実施した。日本を代表する文化である紙を用いた包装及び手芸は,身近にある物でできるため非常に高い関心が寄せられた。特に贈り物をより美しく装飾することができる包装ワークショップに参加した皆様は真剣にその技術を学んでいた。
(ウ)日本食ワークショップ(11/23,11/25)
23日及び25日の両日,ハシモト・キョウコ上級調理師を招き,マナウス市職業訓練センターで日本食のワークショップを実施した。毎年実施する日本食ワークショップは,市内日本食レストラン関係者も参加するなど,質の高いワークショップとして注目されている。昨今の伯国における手巻き寿司専門店増加に伴い,手巻き寿司のワークショップを実施し,手巻き寿司は家庭でも手軽に楽しめる和食ということを紹介した。
(エ)日本企業の工学技術に関する講演会(協力:SONY,CANON)(11/26)
マナウスに進出している本邦企業に勤務するエヴェルトン・ゴメス・オリベイラ氏(SONY)及びアルベルト・ヒロキ・ナルサワ氏(CANON)を講師に招き,FUCAPI(先端技術分析開発センター)において日本の工学技術に関する講演会を実施した。FUCAPIは工学を専門とする理系の大学であり工業製品製造を学ぶ技術者の卵である同校学生が受講した。
(オ)カメラ撮影ワークショップ(協力:CANON)(11/28)
別途,講演会の講師としてご活躍頂いたアルベルト・ヒロキ・ナルサワ氏(CANON)が,28日,カメラ撮影に関するワークショップを実施した。参加者はプロカメラマンから,中学生まで多岐にわたった。アルベルト講師の説明を受けた後,実際にCANON社の一眼レフカメラを使用した撮影に移ると参加者は時間を忘れて撮影に没頭していた。
内政
(1)緊縮財政実現に向けた動き:残りの大統領拒否法案審議の実施
(ア)11月17日,18日,ルセーフ大統領が拒否権を行使した32本の法案の内,9月末より先送りされていた残りの6本について投票が実施され,「爆弾議題(pauta-bomba)」と称された司法府職員給与の大幅増,年金引き上げ幅の拡大等の廃案が決まり,当面の間の歳出の大幅増は回避されることとなった。(イ)財政健全化の観点から特に注視されていた,司法府職員の給与増及び年金制度の改正案の廃案が決定し,主要各紙は「政府勝利」と報じている。他方で,本年10月,ルセーフ大統領は主要閣僚の交代を通じ,PMDB(伯民主運動党)をはじめ連立与党議員の懐柔を行い,議会運営力の強化を図ったにもかかわらず,司法府職員の給与増についてはわずか6票差の薄氷の勝利であった。
(ウ)次の段階として,政府は,財政健全化に不可欠とされる金融取引税拠出金(CPMF)の復活を早急に決めたいところだが,今回の大統領拒否権をめぐる投票は,政府の議会調整力に不安を残す形となった。なお,18日,ルセーフ大統領は,明年6月までにはCPMF復活に係る憲法改正法案を議会で通したいとの考えを明らかにした。
(2)現職上院議員の逮捕
(ア)11月25日,与党労働者党(PT)のデルシジオ・ド・アマラル上院院内総務がペトロブラス汚職事件関与の容疑で逮捕された(伯における現職連邦議会議員の逮捕は民政移管(1985年)後初)。連邦検察庁は,アマラル議員が,セルベロ元ペトロブラス国際部長が司法取引に応じて同議員に言及しないよう,同元部長に毎月5万レアル(約160万円)を送り,捜査を妨害したとして逮捕を求めたところ,連邦最高裁判所(STF)がこれを承認した。アマラル議員は,勾留理由開示請求を通じてセルベロ元国際部長を釈放させるべく,テメル副大統領を介してSTFに口利きをすると持ち掛けたとも指摘されている。(イ)この他,アマラル議員の首席補佐官とセルベロ元国際部長の弁護士が逮捕され,同元国際部長の家族への金銭の授与に関与したとして,伯投資銀行大手BTGパクトゥアル最高経営責任者も逮捕された。
(ウ)伯憲法により,連邦議会議員には不逮捕特権があり,保釈対象にならない犯罪の現行犯逮捕と解釈された場合のみ逮捕が認められているところ,25日夜,連邦上院議会は賛成多数で労働者党(PT)所属のアマラル上院議員の拘留継続を承認している。
(エ)アマラル上院議員は,与党院内総務として,重要法案審議の中心となっていた人物で,今般の逮捕は予想外の展開であった。大統領府は,11月25日に財政収支目標を赤字に修正する法案の承認を見込んでいたが,アマラル上院議員の逮捕により連邦議会は麻痺状態となった。
日伯関係
(1)連邦議会上院における日伯外交関係樹立120周年記念公聴会の開催
11月12日,連邦議会上院本会議場で日伯外交関係樹立120周年記念公聴会が開催された。(ア)式概要
(1) 出席者
ヴィアナ上院第一副議長(PT,アクレ州,本公聴会議長),エリオ・ジョゼ上院議員(PSD,連邦特別区,本公聴会提案者),ウェリントン・ファグンデス上院議員(PR,マット・グロッソ州),フレッシャ・リベイロ上院議員(PSDB,パラー州),エウニシオ・オリベイラ上院議員(PMDB,セアラー州),ウィリアム・ウー下院議員,ケイコ・オオタ下院議員等の連邦議員やブルーメル在ベロオリゾンテ名誉総領事,青木智栄子ブルーツリーホテルズ社長をはじめ,当地日系社会や連邦議会の関係者等,約80名が出席
(2) 式次第
開会
両国国歌吹奏
琉球國祭り太鼓グループによる演奏(2曲)
ブルーメル在ベロオリゾンテ名誉総領事による発言
青木智栄子ブルーツリーホテルズ社長による発言
サトウ・ブラジリア西本願寺住職による発言
梅田駐ブラジル日本国大使による発言
出席議員による発言
閉会
(イ)公聴会のポイント
(1) 本公聴会には,国内各地出身の連邦議員が出席,日本・日系人による伯の発展への貢献に言及するとともに,国内各地で日系社会のプレゼンスが大きく,日本文化が国内で広く親しまれている旨発言。
(2) ゲストスピーカーとして,ブルーメル在ベロオリゾンテ名誉総領事が自身の経験に基づいて日伯経済関係の歴史及び今後の課題について発言。また,本年「WAW!2015」に参加した青木智栄子ブルーツリーホテルズ社長は,両国(民)の特徴を対比しつつ,両国は補完的な関係にあり,女性として日伯関係の更なる拡大に向けて,引き続き尽力していきたい旨発言。
(3) 梅田大使からは,120年間の日伯関係の歴史に言及しつつ,現在実施している人材育成や教育,インフラ整備,治安対策等の分野での協力や日系社会への支援等を紹介。また,今般の秋篠宮同妃両殿下のご訪伯及び12月のルセーフ大統領訪日予定に言及しつつ,日本は伯が重視する民主主義・司法権の独立,表現の自由等の基本的価値を共有している旨強調。
(4) 公聴会には,多くの当地日系団体関係者が出席し,琉球祭り太鼓グループによる演奏等もあり,和やかな雰囲気の中で開催された。
(2)ルセーフ大統領の訪日延期
ルセーフ大統領の訪日延期に関する当国報道は以下のとおり。(ア)11月27日,ルセーフ大統領は予定していた外遊日程を短縮し,COP21に出席するためパリのみを訪問し,日本とベトナム訪問は取り止めることとした。伯政府は,連邦議会での財政調整関連法案の票決を理由に同訪問を断念したと説明している。同大統領は,パリから直接ベトナムに向かい,企業家とともにベトナムでの予定(12月1-2日)を終えた後に日本を訪問し,日本では,2012年以降停止されていたブラジル産加工牛肉の輸出の解禁等について協議する予定であった。ルセーフ大統領の訪日取り止めは,2013年の大規模デモ時に次いで二度目。
(イ)ルセーフ大統領は,連邦会計検査院(TCU)の勧告に従い,11月30日に政令を発出し,本年分の130億レアル(約4000億円)の予算凍結を行った。同政令により,伯史上初めて,専門家が呼ぶところの「シャットダウン」,つまり,あらゆる政府予算の無条件の停止を経験することとなった。政府予算の凍結は出張旅費・日当にも及び,これを受けて,ルセーフ大統領は,12月1-4日に予定していた日本及びベトナム訪問を取り止めることとなった。
(なお,12月2日,2015年度の財政収支目標を赤字に修正する法案が,上下両院合同表決により承認され,予算凍結が解除されることとなった。)
外交
(1)亜大統領選挙の伯への影響
11月22日のアルゼンチン大統領選挙決選投票における野党マクリ候補の勝利を受け,23日付ブラジル主要紙他は伯及び域内への影響につき報じているところ,概要は以下のとおり。(ア)二国間関係
マクリ次期大統領は,対伯関係を最優先事項と述べており,12月10日の大統領就任後,最初の外遊先として伯を訪問する。マクリ次期大統領は,亜の保護主義的な経済政策を転換させることを約束しており,近年大幅に貿易額が減少している伯との二国間関係の再活性化が求められる。ルセーフ大統領にとっても経済危機からの脱出は喫緊の課題であり,伯亜関係の再活性化により危機を克服するとの共通の思惑の下,両大統領は友好な関係を構築するであろう。
(イ)メルコスール
マクリ候補は,メルコスールを再活性化し,EUとのFTA交渉を進展させるため,ルセーフ大統領との真摯な対話を求めるであろう。他方,マクリ候補は,民主主義条項に従わないベネズエラのメルコスール加盟資格停止を求めることを公約に掲げており,右が実行されればメルコスール内に摩擦が生じうる。
もっとも,亜が民主主義条項を根拠にベネズエラにプレッシャーを与えることは伯に有益な結果をもたらす可能性もある。ベネズエラは伯の重要な輸出市場であり,政治危機の深刻化により対ベネズエラ輸出が長期低迷することは避けたく,伯政府はマドゥーロ大統領に対し,野党との対話に応じるよう説得を試みている。亜からも同様の働き掛けが行われれば,ベネズエラの政治混乱が早期に収束に向かい,輸出市場としての同国の重要性の回復が期待出来る。
(2)ルセーフ大統領とファビウス仏外務大臣との会談
(ア)11月22日,ブラジリアを訪問中のファビウス仏外務大臣(COP21議長)はルセーフ大統領を表敬した。ルセーフ大統領との協議後,ファビウス大臣はパリで温室効果ガスの排出削減及び地球温暖化軽減のための効果的な合意に達するため,ブラジルの協力を得ることができると確信できた旨述べた。
(イ)ファビウス大臣の見解では,COP21を成功させるためには他の国々もブラジル同様に野心的な目標にコミットすることが必要であり,ブラジルが気候変動問題に関する交渉の歴史的なプレーヤーであることを想起した。ブラジルは2005年比で2030年までに43%,2025年までに37%の温室効果ガス排出量を削減することを約束している。
(ウ)テイシェイラ環境大臣は,気候変動問題の解決には,低炭素経済に基づいた開発,貧困撲滅のための社会的包摂及び世界的飢餓の解決が必要であることを指摘し,パリでの会議の成功は,会議を開催するフランス政府の偉大なリーダーシップとコミットメントだけでなく,環境問題への多国間での解決策の模索に関するブラジルのビジョンが成功を収めたことを意味すると述べた。