トピックス 2016年5月号

2016/6/10

梅田大使のノロエステ地方出張

内政

(1)テメル副大統領に対する弾劾請求
(2)弾劾手続きにおける大統領側の反論
(3)ルセーフ政権の予算不正運用
(4)下院特別委員会における弾劾意見書の提出
(5)リオ・オリパラ聖火採火式へのルセーフ大統領の欠席
(6)大統領弾劾・下院特別委員会の表決
(7)大統領弾劾に係る下院本会議での表決
(8)ルセーフ大統領の国連本部での演説
(9)大統領弾劾に係る上院特別委員会

外交

(1)ブラジル・イラン政務協議の開催
(2)ヴィエイラ外務大臣のアンゴラ訪問
(3)ルセーフ大統領のNY訪問

 

梅田大使のノロエステ地方出張

     20~22日、梅田大使はサンパウロ州ノロエステ地方に出張した。20日・21日にはリンス市長、副市長や白石ノロエステ連合日伯文化協会名誉会長、安永同会長の出席の下、リンス市における市制96周年及び同市日本人移民100周年記念パレード及び式典に出席した。22日には、プロミソン市(上塚移住地)を訪問し、フォス・プロミソン市長の同行の下、「移民の父」と呼ばれる故上塚周平氏の墓所での焼香・献花を実施した他、上塚公園及びクリスト・レイ教会を視察した。また、同日夜には、アラサトゥーバ日伯文化協会主催で歓迎式典が行われ、同協会の会館及び博物館を視察した他、婦人会提供による夕食会が行われた。
 

【内政】

(1)テメル副大統領に対する弾劾請求

(ア)ミナスジェライス州の弁護士であるマーラ氏は,昨年12月,下院事務局にテメル副大統領の弾劾請求を提出した。同氏は,ルセーフ大統領の弾劾手続きの主な根拠となっている,不正会計処理等を同副大統領の嫌疑として挙げている。

(イ)クーニャ下院議長は,マーラ氏の同弾劾請求の受理に係る審査を行わなかったため,本年1月,同氏は,連邦最高裁判所(STF)に異議申立てを行ったところ,1日,同異議申立てがSTFに受理された。STF判事は,同氏による弾劾請求に基づき,下院に対しテメル副大統領の弾劾手続きを進めることを求める仮処分を出したが,クーニャ下院議長は特段の対応を行っていない。今後,同仮処分に対するSTF大法廷の決定が下される予定。
 

(2)弾劾手続きにおける大統領側の反論

(ア)4日,カルドーゾ連邦総弁護庁(AGU)長官は,期限最終日に大統領側反論書を下院特別委員会に提出するとともに,同反論書を補足する弁論を行った。同長官は,ルセーフ第一期政権下の嫌疑は,(第二期政権に入ってから請求が受理されたため)弾劾の根拠になり得ないとした上で,クーニャ下院議長が昨年12月に弾劾請求を受理した理由は,自らの議員資格剥奪を審議する倫理委員会の設置に対し,労働者党(PT)所属議員が賛成を表明したことに対する個人的な復讐に過ぎず,今般の大統領弾劾に法的正当性はないと主張した。

(イ)その上で,カルドーゾ長官は,政府の予算配賦前に,政府系金融機関にボルサファミリア(低所得世帯に対する給付金制度)等の社会プログラム向け支出をさせたとする2014年の「不正会計処理」は,カルドーゾ政権(1995~2002年)等過去の政府や州政府レベルでも慣習的に行われており,会計検査院も2015年までは特段の指摘は行っていなかったと述べた。
 

(3)ルセーフ政権の予算不正運用

(ア)6日付「フォーリャ・デ・サンパウロ」紙は,ブラジル中銀が集計したデータによれば,ルセーフ大統領弾劾の根拠となっている予算の不正運用(不正会計処理)は,ルセーフ政権になってから飛躍的に拡大したことが明らかとなったと報じた。

(イ)同記事によれば,ルーラ政権の終盤からルセーフ政権発足以降の期間,政府が,政府系金融機関を経由して,ボルサファミリアや住宅供給などの施策やFGTS(勤続年数補償基金)への手当てを行う支出(経由しての支出を意味する「レパッセ(repasse)」と呼ばれる)が,飛躍的に増大していることが判明した。

(ウ)更に同記事は,カルドーゾ政権(1996~2002年)末期,レパッセは9億4800万レアル(現在のレートで約300億円)であったが,2015年末には約600億レアル(同約1兆8千億円)規模に達したとしている(ルセーフ大統領は,本会計操作について,こうした支出の増大は,ブラジル経済の拡大に伴う予算規模の増大によるものと反論)。
 

(4)下院特別委員会における弾劾意見書の提出

(ア)6日,アランテス下院特別委員会報告者は,期限より前に,ルセーフ大統領の弾劾に係る意見書の読み上げ,提出を行った。

(イ)約130ページに及ぶ「アランテス意見書」は,2014年(ルセーフ第一期政権最終年)の「不正会計処理」と,2015年に,財政収支目標の達成は不可能であることを明確に認識しながらも,議会の事前承認なしに追加予算を承認した件に基づき,ルセーフ大統領の弾劾に賛成すると結論付けた。

(ウ)他方,同意見書は,一連のペトロブラス汚職事件に係るルセーフ大統領の監督責任については,罷免に値する罪ではないと結論付けた。
 

(5)リオ・オリパラ聖火採火式へのルセーフ大統領の欠席

(ア)8日,ブラジル主要メディアは,ルセーフ大統領は,21日にギリシャで行われるリオ・オリパラ大会向けの聖火採火式を欠席すると一斉に報道した。

(イ)6日のギリシャ・オリンピック委員会の記者会見では,ルセーフ大統領の出席は確認されていたが,ブラジル大統領府社会広報庁は,メディアの取材に対し,今回のギリシャ訪問はキャンセルではなく,「一度も確定した経緯はない」と応答した。

(ウ)ルセーフ大統領は,3月末にも,核セキュリティ・サミット出席のために予定していたワシントン訪問をキャンセルしている。その際,大統領府筋からは,政治危機を理由とするとの説明があった。同サミットは,テメル副大統領が党首を務める伯民主運動党(PMDB)の連立離脱表明の2日後(3月31日)に開催された。
 

(6)大統領弾劾・下院特別委員会の表決

(ア)11日,大統領弾劾に関する下院特別委員会は,アランテス報告者が提出した意見書に関する表決を実施した。同表決は,賛成が38票,反対が27票となり,同報告書の意見書は採択された。

(イ)同結果に対し,ルセーフ大統領は,背任罪という根拠の無い弾劾は不当であり,成立し得るものではない,自らの政権及びルーラ政権が13年間に亘って国民と社会運動の協力により成し遂げたことが,クーデターにより破壊されようとしているとコメントした。
 

(7)大統領弾劾に係る下院本会議での表決

(ア)17日の下院本会議における表決は,23時過ぎにすべての投票が終了し,下院議員総数の3分の2を超える賛成票が投じられ,上院での弾劾手続きの継続が承認された。下院事務局が発表した最終得票数は次のとおり。賛成:367名(下院議員総数の約71.5%に相当),反対:137名,棄権:7名,欠席:2名。

(イ)18日17時40分から約20分間,ルセーフ大統領は,下院本会議での弾劾可決後初めてとなる会見を行った。ルセーフ大統領は,従来の好戦的な姿勢と強い口調で矢継ぎ早に言葉を発していくスタイルから一変し,終始極めて淡々とした口調で会見し,頻繁に区切りをはさみながら,原稿を丁寧に読み上げた。内容は,従来のものから大きな変化はなく,「根拠なき弾劾は不法であり,クーデター同然である」と主張した。
 

(8)ルセーフ大統領の国連本部での演説

(ア)22日,ルセーフ大統領は,ニューヨークの国連本部で開催されたパリ協定署名式において,ブラジルの環境政策に関する演説を行った際,締めくくりとして,事前に予想された「クーデター」等の言葉は使わずに,政治状況について以下(イ)のように述べた。

(イ)「現在,ブラジルが直面している深刻な状況に触れることなしに,自分の演説を終えることは出来ない。困難にもかかわらず,ブラジルは,独裁主義に打ち勝ち,強固な民主主義を作り上げる術を心得た社会を持つ偉大な国であることをお伝えしたい。ブラジル国民は,勤勉で,真に自由を尊ぶ人々であり,あらゆる後退を克服出来ることを確信している。自分に対し,連帯を表明してくれたすべての指導者に謝意を表する。」
 

(9)大統領弾劾に係る上院特別委員会

(ア)25日,上院は,ルセーフ大統領の弾劾に関する意見書の審議,表決を行う21名の上院特別委員会委員を決定した。この21名の内,明確に大統領弾劾への反対を表明している議員は,5名のみとされる。

(イ)翌26日,同委員会は第一回会合を開催し,ライムンド・リラ上院議員(PMDB)を委員長に,アナスタジア上院議員(伯社会民主党(PSDB),前ミナスジェライス州知事)を意見書作成の責任者である報告者に決定した。

(ウ)リラ委員長は,上院弾劾法廷の設置,ルセーフ大統領の最大180日間の停職,テメル副大統領の臨時大統領就任を決定する表決は,5月11日になるとの見通しを示した。
 

【外交】

(1)ブラジル・イラン政務協議の開催

(ア)11日,グラッサ・リマ外務省副次官はテヘランを訪問し,ラバンシ・イラン外務副大臣との間でブラジル・イラン政務協議を行った。同協議は2011年にブラジリアで開催されて以来の会合であり,国際場裡での二国間協力,本年予定されている両国間の要人往来等について協議が行われた。

(イ)ブラジルからは昨年9月にヴィエイラ外務大臣,同10月にはモンテイロ開発商工大臣が訪問し,本年前半には,イランからザリーフ外務大臣のほか,国防大臣,経済財政大臣等の訪問が予定されているなど,要人往来が活発化している。
 

(2)ヴィエイラ外務大臣のアンゴラ訪問

(ア)13~14日,ヴィエイラ外務大臣はアンゴラの首都ルアンダを公式訪問し,シコッティ・アンゴラ外務大臣との間で二国間ハイレベル委員会を開催し,更なる協力関係に向けた協議を行った。

(イ)ヴィエイラ大臣の同国訪問は就任以来2度目で,シコティ大臣も,昨年11月に外交関係設立40周年慶祝のためブラジルを訪問している。両国は,2010年に立ち上げられた戦略的パートナーシップに基づき,良好な二国間関係を継続している。
 

(3)ルセーフ大統領のNY訪問

(ア)22日,ルセーフ大統領はニューヨークの国連本部で開催された気候変動に係るパリ協定署名式に出席した。

(イ)同大統領は演説において,本協定の合意に対し賛辞を述べると共に,ブラジルにおける協定の早期発効を保証する一方,先進国の野心レベルの漸進的増加と,毎年1,000億ドルを超える資金調達の拡大が不可欠である点を主張した。