トピックス 2016年1月号
平成28年1月22日
(1)平成27年度官民合同会議の開催
(2)平成27年度天皇誕生日祝賀レセプションの開催
(3)文化交流を通じた地元コミュニティとの触れ合い(リオデジャネイロ)
内政(1)クーニャ下院議長による大統領弾劾請求の受理 (2)大統領府民間航空庁長官の辞任 (3)全国デモの発生 (4)財務大臣・企画予算大臣の交替 (5)ルセーフ政権の支持率
外交(1)COP21首脳級会合におけるルセーフ大統領演説 (2)伯亜関係
日伯関係(1)日伯間の牛肉輸出入解禁 (2)ブラジル都市鉄道整備・運営事業
(1)平成27年度官民合同会議の開催
12月10日、サンパウロにて平成27年度官民合同会議が開催された。日系商工会議所関係者、大使館及び総領事館関係者、政府系機関関係者等計38名が参加し、在伯商工会議所間の連携の重要性や日本からの投資の重要性、官民の連携の重要性等について議論が行われた。(2)平成27年度天皇誕生日祝賀レセプションの開催
11月末~12月にかけて、在伯の各公館において、平成27年度天皇誕生日祝賀レセプションが開催された。在ブラジル日本国大使館(ブラジリア)においては、12月11日に、祝賀レセプションが開催され、それに併せてジュンイチ・サイトウ前空軍司令官への叙勲伝達式(旭日大綬章)が行われた。在ブラジル日本国大使館にて開催した祝賀レセプションでは、日系企業6社が展示等を行った。
(3)文化交流を通じた地元コミュニティとの触れ合い(リオデジャネイロ)
日伯外交関係樹立120周年であった昨年,リオデジャネイロでは地元コミュニティと触れ合うイベントが多く開催された。その中から,海上自衛隊練習艦隊が実施した地元コミュニティとの交流活動,同じくリオデジャネイロを訪れたアーティストが行った活動を紹介することとしたい。
(1)トウキョウ小学校訪問 - 海上自衛隊
海上自衛隊遠洋練習艦隊がリオデジャネイロ港に寄港した際に,地元住民との交流を深めるために,8月6日,リオデジャネイロ市立トウキョウ小学校を訪れた。トウキョウ小学校の名は,1965年に東京から使節団がリオを訪問したことを記念して命名されたもので,今般訪問が行われた2015年は創立50周年の年であった。同小学校があるカンポグランデ地区はリオ市中心部から車で1時間半ほどの郊外にあり,裕福でない住宅が立ち並ぶ。子供達にとって日本人に会う機会は少ない。海上自衛隊からは,剣道の実演,和太鼓演奏,そしてブラスバンドの演奏が行われた。剣道実演では,単にデモンストレーションとして実施するだけでなく,剣道を通じ,礼儀作法を学び,技だけでなく心を磨くことが大切であることが紹介された。また,一連のパフォーマンスが終わった後,子供達から歓迎の意味を込めて「幸せなら手をたたこう」の大合唱が日本語で披露された。
(2)コミュニティ(ファベーラ)の州立高校訪問 - 海上自衛隊
同じく8月6日,自衛隊はファベーラ・プロビデンシア地区にあるリオデジャネイロ州立高校を訪れた。プロビデンシア地区はリオ市中心部に位置し,リオ市で最も早期に形成されたコミュニティと言われている。現在,リオ州軍警察平和構築部隊(UPP)の展開により治安が大きく改善され,成功例の一つとして位置づけられている。州立高校でも,自衛隊による剣道の実演,和太鼓演奏,ブラスバンド演奏が行われたが,地元コミュニティー側からも,世界柔術選手権チャンピオン(地元柔術・柔道教室の門下生)による柔術のデモンストレーション,ファベーラ内でUPPがボランティアで指導している楽団による音楽演奏が披露された。柔術の技や子供達による演奏に対しては自衛隊員はじめ参加者から大きな拍手や歓声が上がった。
どちらの訪問も,子供達が自衛隊のパフォーマンスを見るだけに終わらず,自衛隊員と一緒に写真を撮り,太鼓をたたき,自らのパフォーマンスを披露するなど,人と人との触れ合いを通じた体験型の交流となった。また子供達のみならず,自衛隊員が訪問先の近所の家々や付近で警備に当たる警察官にも記念品を配る等しながら交流を深める姿は印象的であり,地元住民に対して日本の存在感を印象づける点でも意義深いものであった。
(3)アーティストとのコラボ - 五嶋龍,東京スカパラダイスオーケストラ
日伯外交関係樹立120周年記念事業で来伯していた五嶋龍氏が10月19日,リオデジャネイロ市レーメ地区のコミュニティ(ファベーラ)「シャペウ・マンゲイラ」を訪れ,低所得者居住地域で音楽教育を行っているNGO団体「Ação Social Pela Música」の子供達と音楽交流を行った。20人ほどの子供達の前で演奏を行った他,一緒に2曲を演奏した。世界的バイオリニストとの共演はコミュニティの子供達にとってかけがえのない体験であっただろう。また,11月20日には,東京スカパラダイスオーケストラがリオデジャネイロ市サンタ・テレーザ地区のコミュニティを訪れ,地元の子供達とともにワークショップとコンサートを行った。「上を向いて歩こう」を演奏できるようになるまで,1時間かけて繰り返し練習したことは,子供達にとって,音楽を通じ物事を達成するという大きな喜びとなったことであろう。
(4)終わりに
それぞれのイベントは,すべて自衛隊及びアーティストの好意により実施されたものである。子供達にとって,日本文化やアートに触れるということだけでなく,国や言葉を超えて,一つのことを学ぶ,或いは楽しむということを,身をもって体験する,貴重な機会となったことであろう。内政
(1)クーニャ下院議長による大統領弾劾請求の受理
(ア)12月2日,クーニャ下院議長は,本年10月21日に労働者党(PT)創設者の一人であるエリオ・ビクード氏他が共同で提出したルセーフ大統領の弾劾請求を正式に受理した旨表明した。クーニャ下院議長による大統領弾劾請求受理の表明は,伯民主運動党(PMDB)と連立与党を形成するPT所属議員が,下院倫理委員会においてクーニャ下院議長の議員資格剥奪を求めていく姿勢を固めた直後に行われたとされている。(イ)受理された弾劾請求が指摘する大統領の嫌疑は以下のとおり。
(1)一連のペトロブラス汚職事件を見過ごしてきた職務怠慢(道義的責任)
(2)2014年度財政収支における不正会計処理
(3)2015年度予算について,黒字目標の達成は不可能と知りながら,議会の承認なく行った支出の許可
(ウ)これに対して,ルセーフ大統領は12月2日夜に緊急の記者会見を行い(11名の閣僚が同席),下院議長による弾劾請求の受理に憤慨しているとした上で,弾劾の対象になるような行為は行っていないと述べた。
(エ)本年2月中を目処に,65名の下院議員による特別委員会が設置され,弾劾に向けた手続きの継続か却下が議論され,その後下院本会議において弾劾の是非を問う票決が実施される。
(2)大統領府民間航空庁長官の辞任
(ア)12月7日,伯大統領府はパジーリャ大統領府民間航空庁(SAC)長官(PMDB)の辞任を発表し,後任としてラマーリョSAC次官を長官代行に任命した。(イ)なお,パジーリャ長官は大統領の弾劾裁判手続きが開始された3日夜にワグネル文官長への辞表提出を試みたが受理されなかったため,翌4日に大統領府で事務的な提出を行っていた。辞任の理由は,同長官に近い人物をSAC傘下の伯国家民間航空庁(ANAC)幹部に推薦したところ,政府に却下されたためとされているが,実際には大統領弾劾裁判手続きの開始を受け,テメル副大統領(PMDB)の大統領昇格を視野に入れた行動と見られている。
(3)全国デモの発生
(ア)12月13日,国内全26州及びブラジリア連邦区の計87都市において,市民団体等が呼び掛けていた大統領弾劾を支持するデモが発生した。今次デモの総参加者数は,連邦警察発表は8万3000人,主催者発表は40万7000人であった。なお,8月16日のデモの総参加者は87万9000人(主催者発表:200万人),本年最も多くの参加者を集めた3月15日のデモは240万人(同300万人)であったところ,過去のデモの規模を大きく下回る結果となった。その理由は,12月3日の大統領弾劾手続きの正式開始後から今回のデモまでの告知期間が短かったことや,12月の日曜日ということでパーティー等の予定を入れている人が多かったためと見られている。(イ)大規模な暴力事件や破壊行為等は確認されず,デモ行進は全体的に平和裏に行われた。警官との大規模な衝突も発生せず,催涙弾等の発射が必要となる局面もなかった。ルセーフ大統領の弾劾を訴える横断幕やプラカードに加え,クーニャ下院議長及びルーラ前大統領の逮捕を求める声も見られた。
(ウ)また,12月16日には,ピアウイ州を除く全国25州とブラジリア連邦区の計42都市においてルセーフ大統領の弾劾に反対するデモが全国各地で発生した。同デモの総参加者数は,連邦警察発表は5万1000人,主催者発表は29万2000人となり,13日の弾劾支持派による全国デモ(8万3000人,連邦警察発表)を下回った。その理由として,平日の開催であったことに加え,告知期間が短かったこと,ルセーフ政権の支持率が過去最低水準にあること等が考えられる。なお,同デモにおいては大規模な暴力事件や破壊行為等は確認されず,デモ行進は全体的に平和裏に行われた。警官との衝突も発生せず,催涙弾等の発射が必要となる局面もなかった。
(4)財務大臣・企画予算大臣の交替
(ア)12月18日,ルセーフ大統領は2経済閣僚の交代を発表し,財務大臣にネルソン・バルボーザ企画予算大臣を,企画予算大臣にヴァルジール・モイゼス・シモン大統領府連邦総弁護庁(CGU)長官を指名した。(イ)レヴィ前財務大臣は,大胆な歳出削減に基づく厳格な財政調整を主張していたため,国内外の市場関係者の評価は高かった。一方,バルボーザ新大臣はレヴィ前財務大臣と比べれば財政調整に臨む姿勢で厳格さに欠けるとの評価もあり,市場からは次期財務大臣としてメイレレス元中銀総裁を望む声が上がっていた。バルボーザ新財務大臣は行政官としての経験が長く,効果的な歳出削減に長けているとの見方があるが,同大臣はレヴィ前大臣に比べ政治家の意見を聞き入れ易いため,歳出増へと後退する危険性があるとの指摘もある。また,連邦会計検査院内では,同新財務大臣が,2014年度の連邦政府の粉飾会計処理で中心的な役割を担ったと見る向きもある。
(5)ルセーフ政権の支持率
(ア)12月19日に発表された世論調査機関ダタ・フォーリャ社によるルセーフ政権支持率の調査結果によれば,ルセーフ政権を「良い・最も良い」と評価する回答は,前回調査時(11月25~26日)の10%から12%まで回復した。今回の「良い・最も良い」の回答率(12%)は2011年1月の第一次ルセーフ政権発足以降で三番目に低い水準であり,1992年のコロール大統領の弾劾手続き終盤の同回答率(9%)と比べても大差はない。(イ)ルセーフ政権を「悪い・最も悪い」と評価する回答は,前回調査時の67%から2ポイント低下し,65%となった。明年2~3月に実施されると見られる下院本会議での大統領弾劾に関する表決について,下院議員は弾劾に賛成すべきと回答した率は60%,反対すべきは34%であった。「ルセーフ大統領は辞任すべき」と回答した率は,引き続き過半数を超えているものの,前回の62%から56%へと低下した。
外政
(1)COP21首脳級会合におけるルセーフ大統領演説
11月30日に行われたCOP21の首脳級会合におけるルセーフ大統領の演説が伯外務省ホームページに掲載されたところ,概要以下の通り。(ア)北東部の旱魃,南部及び南東部の水害等,伯も気候変動の影響を受けている。人為的な原因による気候変動は,世界が直面している最大級の問題の一つである。今世紀における世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるためには,公平,普遍的且つ野心的な合意が必要であり,また法的拘束力を有する合意を構築しなければならない。
(イ)排出の累積に対しては,途上国,特に脆弱な国において適応のための措置を実施すべきである。共通であるが差異ある責任の原則は,この合意の基盤である。差異化は,気候変動への取り組みを弱めるどころか,その取り組みが全世界レベルで効果を上げる条件である。パリ合意は,すべての途上国が極度の貧困を克服し,格差を解消しつつ,低炭素経済に移行するための条件を提供しなければならない。
(ウ)アマゾンの森林伐採は,10年前と比べて約80%減少。アマゾンにおける違法伐採の撲滅に向けた我々の取組は,REDD+の国家戦略の導入により,新たな高みに引き上げられる。伯は,低炭素農業を実践し,再生可能エネルギーの比率拡大に向けた努力を続けている。伯のINDCは,2030年の排出量を2005年比で43%削減することを目標としている。我が国は今後,アマゾンにおける違法伐採をゼロにし,合法的な伐採に伴う排出を無力化していく。1200万ヘクタールの森林,並びに荒廃した牧草地1500万ヘクタールの再植林に挑戦する。また,再生可能エネルギーの比率を2030年までに45%し,貧困の根絶及び適切な雇用を伴う形で,経済の低炭素化を進めている。
(エ)COP21が,2030アジェンダにおいて提唱されている,発展し包摂的な世界の構築における歴史的なランドマークとなることを確信する。気候変動という地球規模の問題に関して人類を団結させる合意が,世界史において大きな変革の舞台となったパリにおいて成立し,その名を冠することはまさに的を射ている。
(2)伯亜関係
(ア)12月10日,マクリ亜大統領の就任式に出席したルセーフ大統領はSNSを通じ,「伯にとり亜との関係は疑いなく優先事項であり,亜との戦略的同盟は両国の発展にとり重要である。友好と協力の精神の下,両国関係が益々緊密になることを確信する。在任中,多くの成果を挙げられることを祈念する。」旨述べた。(イ)マクリ新大統領は,当選後最初の外遊先として12月4日に訪伯してルセーフ大統領と会談しており,国際貿易への両国の更なる参画,メルコスールの強化,域外との経済通商関係拡大の必要性等について意見交換した。マクリ大統領は,対伯関係は最も戦略的に優先すべき関係であるとし,両国の将来は互いに繋がっており,補完し合いながら共に世界に出て行くしか道はない旨述べている。
日伯関係
(1)日伯間の牛肉輸出入解禁
ブラジルから日本向けに輸出される加熱処理牛肉については、ブラジルにおけるBSEの発生を受け平成24年12月以降輸入を停止していたが、12月、ブラジル家畜衛生当局との協議を終え、日本への輸入が解禁された。また、日本産牛肉のブラジルへの輸出についても、12月に両国当局間で条件が合意された。今後、認定を受けた施設から、ブラジル向けの牛肉輸出が可能となる。なお、本件は、南米向けとしては初めての輸出解禁となる。