トピックス 2015年7月号

2015/9/24
大勢の聴衆者で賑わう会場
東芝南米社のブース

梅田大使バイーア州公式訪問

日伯外交関係樹立120周年・移民107周年記念公聴会の開催

自衛隊記念日レセプション

「スマートシティ・ビジネス・アメリカ会議&エクスポ」が開催

内政(ペトロブラス汚職事件とルーラ財団の関係、ルセーフ政権支持率の低下、ペトロブラス汚職疑惑におけるオデブレヒト社社長等の逮捕、現職閣僚を含む要人の汚職に関する供述)

外交(ルセーフ大統領のEU・CELACサミット出席、伯中ハイレベル協調強力委員会(COSBAN)の開催、ルセーフ大統領の訪米)

防衛(伯武器輸出の状況)

スマートシティ・ビジネス・アメリカ会議&エクスポ」が開催

5月19-21日、クリチバ市内のポジティーヴォ大学で「スマートシティ・ビジネス・アメリカ会議&エクスポ」が開催されました。同会議は都市の持続可能なスマートシティ化を促進する目的でクリチバ市の協力のもと、国内外の研究者、専門家、ボルボ・バス社、GE、TIM(携帯通信会社)、オラクル、パラナ電力公社等の企業家、国際連合人間居住計画(国連ハビタット)、NGO、市長など1500人以上が参加しました。
 

1.    環境都市クリチバ

本題に入る前に,そもそもなぜクリチバ市でこのような会議が開催されたのか?これまで,過去2回はブラジルのペルナンブーコ州レシフェ市で開催されていた会議ですが,同会議開催の実務を担当したレオポルド・デ・アルブケルケ・スマートシティ研究所所長は,クリチバ市が効率的な公共交通網をはじめ環境に優しく人間に住みやすい斬新的な計画都市して世界的に有名であることから,まさにスマートシティを発信するに適した都市であると考え,選ばれました。

クリチバ市は,1960年代から環境に優しい都市づくりを進めてきました。1990年にはUNEPから国連環境賞,1992年にはリオデジャネイロで開催された国連世界環境会議で優れた「エコシティー」として表彰されるなど、独創的な交通・都市計画・環境・緑化政策を整合性をもって実践してきた都市です。この成功の功労者として,建築家で都市計画家であり、クリチバ市市長を3期及びパラナ州知事を歴任し,環境都市クリチバ市の生みの親とも言われるジャイメ・レルネル氏は有名ですが、ブラジルで日系人として初めて州都の市長としてクリチバ市長を務めたカシオ・タニグチ氏(現在、フロリアノポリス大都市圏開発局長)等、複数の日系人がクリチバ市の環境局長や都市計画研究所長などの要職に就き、都市行政に指導的役割を果たしたことはあまねく知られています。
 

2.    会議内容

さて,3日間に亘る会議では、「持続可能な都市開発のあり方」という大きなテーマのもと、省エネ技術、都市交通システム、廃棄物管理、教育、通信インフラ、防犯コミュニティー等、幅広い分野の事例や普及への課題がパネルディスカッション形式で紹介されました。財源の少ない都市と民間の連携のあり方、特に地方自治体は民間企業とPPP、BOT等のビジネスモデルで都市のイノベーションを図る必要がある等、官民協働の枠組みの必要性等が議論されました。また、同会議と並行して、会議スポンサー企業と市長の会議、都市交通機関の流動性、スマートシティーに関するスタートアップ会議が行われました。
 

3.    環境都市クリチバの課題

冒頭のとおり,「環境都市クリチバ」として名を馳せたクリチバ市ですが、急激な発展に伴う人口増加、またそれに伴う車の増加による渋滞等、他の都市同様に課題に直面しています。都市の流動性をテーマに登壇したジャイメ・レオネル氏も、当時クリチバ市長としてBRT(バスを基盤とした大量輸送システム)導入等,斬新的な都市計画を推進してきた当事者として、クリチバの現状を憂慮しているようでした。今後の都市交通網の取組みについて、レルネル氏はハイブリッド&電力システムの車両導入は今後も持続可能な方法の一つであろうと提言し、地下鉄を整備するよりも車両代だけで1/5の経費で済む既存のバス交通網をさらにを有効活用するほうが賢い運用が可能になるだろうと述べ、地下鉄導入が交通問題を解決するわけでなく交通システム管理の質の改善が効果的な改善策であると説明しました。また、人間を中心とした都市計画という視点を忘れてはならないと力説していました。
 

4.    日本の存在感

昨年から同会議を企画していたレオポルド・デ・アルブケルケ・スマートシティ研究所所長が、スマートシティの知見と高い技術を持つ日系企業に参加を促していた結果,東芝南米社、Furukawa Industrial S.A.Produtos Eletricos社(古河電工子会社)、ブラジル戸田建設がスポンサー及び後援企業として展示ブースの出展及び会議における発表者として参加しました。

各社それぞれ、展示ブースにおいてスマートシティに関連する技術や製品及び取り組みをパネル等で説明し、多くの来場者が足を止めてパネル等を興味深く眺める様子が見られました。また、各社のスマートシティにかかる取り組みの発表及びパネルディスカッションでは、多くの聴衆が日本の先進的な技術や取り組みに高い関心を示していました。

更に、メインゲストスピーカーとして招聘された横浜国立大学副学長であり都市交通の専門家である中村文彦教授は、クリチバ市を含めた日本や世界各国における都市交通システム導入の事例を比較しながら発表を行った他,レルネル氏及びボルボバス社のエドワード・ジョンソン社長とのパネルディスカッションにも参加し、大きな注目を集めました。このような取り組みの結果、海外からの参加・団体としては、ケニア、米国、チリ、アルゼンチン、スゥエーデン、英国等から出席があったものの、日本の存在感が際立つ形になりました。そして、日本のスマートシティ関連の知見と高い技術を生かし都市計画分野を通じた日伯関係の強化にもつながるのでは、と感じさせるイベントとなりました。

なお、今回に続いて次回4回目もクリチバ市で2016年3月28~30日の開催になる旨が決定しています。 
 
Furukawa Industrial S.A.Produtos Eletricos社のブース
ブラジル戸田建設のブース
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
レルネル元パラナ州知事(左端)と中村・横浜国立大学副学長(右端)

内政

 

1.ペトロブラス汚職事件とルーラ財団の関係

  1. 6月12日付各紙は,ルーラ元大統領が内外で様々な活動を行うため大統領退任後に設立したいわゆる「ルーラ財団」(Instituto Lula)に対しても,ペトロブラス汚職等に絡む不正資金が流されているとして,連邦議会特別調査委員会で証人喚問等が行われることを報じている。
  2. 報道によれば,ペトロブラス汚職事件で得られた資金を洗浄し政治家等に回していたいわゆるラヴァ・ジャット資金網を通じ,不正資金がルーラ財団にも流されていたとの疑惑が浮上。具体的容疑としては,ペトロブラス事件で捜査されている大手ゼネコンの1つカマルゴ・コヘア社からルーラ財団に2011~13年の間約300万レアル(約1億2千万円)の不正資金が渡されていたと連邦警察が指摘している。
  3. ペトロブラス汚職事件をめぐり連邦議会に設置された特別調査委員会において,今般,ルーラ財団絡みの疑惑についても議論されてきた。最大連立与党の伯民主運動党(PMDB)と最大野党の伯社会民主党(PSDB)との間で了解が成立し,ルーラ財団のパウロ・オカモト理事長を,特別調査委に証人喚問することが決定された。このほか,以前から喚問されているPTのヴァカリ元財務担当者や,司法取引により供述を提供している逮捕者等から一部を喚問することが決まっている。
  4. また,上記両党の申し合わせにより,2006年に騒がれた汚職事件であるメンサロン事件の首謀者として自宅収監状態にあるジルセウ元文官長及びジルセウが経営するコンサル会社の銀行口座情報の開示も行われることとなった。

2.ルセーフ政権支持率の低下

  1. 6月17日から18日にかけて,ダタ・フォーリャ社が実施した世論調査の注目点は以下のとおり。
  • (ア)同政権を前向きに評価する回答は,昨年末の42%から本年3月及び4月に連続して13%となった後,今回6月調査結果では更に10%にまで低下。
  • (イ)昨年12月に24%にとどまっていた悪いと評価する回答の率が,3月に62%にまで上昇し,4月も60%となり,今回6月調査結果では,65%にまで上昇している。
2.1992年にコロール大統領が弾劾により大統領職から追放される直前時期の同社世論調査では,大統領への前向きな回答率は9%。様々な調査の中でも近年これが最低の結果となっているが,今回のルセーフ大統領に対する支持率は,これに非常に近い低い水準にまで下がっていることが注目されている。

3.ペトロブラス汚職捜査におけるオデブレヒト社社長等の逮捕

  1. 6月19日,伯ゼネコン大手のオデブレヒト社のマルセロ・オデブレヒト社長及びアンドラーデ・グチエレス社のアゼヴェド社長をはじめとする両社の役員等が、伯連邦警察によるペトロブラス汚職捜査「ラヴァ・ジャット・オペレーション」において、カルテル等の容疑で逮捕された。
  2. マルセロ社長はルーラ元大統領と長年親しい関係にあり,ルーラ元大統領は同社から不正に資金供与を受けていたとされている。同社長の逮捕を受け手,ルーラ元大統領が落ち着きをなくし,不眠にも悩まされていると報道されている。また報道では,オデブレヒト社長逮捕を境目に,ルセーフ政権や,自らが率いてきた労働者党への批判的発言が目立つようになったとの指摘も多い。

4.現職閣僚を含む要人の汚職に関する供述

  1. 6月27日,ペトロブラス汚職事件で本年2月に既に逮捕されているリカルド・ペソーアUTC(大手ゼネコン)社長が,検察との司法取引に応じた結果,2014年の大統領選挙において,同事件で不正に得た資金を労働者党に提供したとの供述を行っていることが検察当局からリークされたとの形で報じられた。なお,ペトロブラス汚職事件をめぐっては,ルセーフ大統領本人の関与は立証されていないとして,政権中枢への影響はとりあえず回避されたとみられていたものの,今般の報道を境目に,再びルセーフ政権及び大統領自身が危機にさらされるリスクが浮上しているとの見方が主要紙に出始めている。
  2. ルセーフ大統領は,28日から行う訪米への出発を約1時間半遅らせ,緊急閣僚会合を招集。訪米同行する予定であった閣僚のうち,上記供述の中で不正に関与したとされるメルカダンテ文官長及びシルヴァ大統領府社会広報庁長官を一行から外し,イメージダウン回避に努めたと言われている。ペソーア社長の供述では,メルカダンテ文官長が2010年サンパウロ知事選に出馬した際に同社長から資金提供を受けた,シルヴァ長官については,2014年の大統領選に際し,ペトロブラス汚職事件から得た資金から750万レアル(約3億円)を提供せよと強要したとされている。
  3. その他,ペソーア社長の供述により,ルーラ元大統領,ヴァカリ・ネット労働者党元会計担当,ジルセウ元文官長,アダッジ・サンパウロ市長,ロバン元鉱山エネルギー大臣,レナン・フィーリョ・アラゴアス州知事,コロール元大統領等の疑惑が報じられている。

外政

1.ルセーフ大統領のEU・CELACサミット出席

  1. ルセーフ大統領は,6月10,11日にEU・CELACサミットに出席した。主な議題は,投資,教育,科学技術,イノベーション,気候変動,麻薬・テロとの闘いであった。10日の会合でルセーフ大統領は,本年パリで開催されるCOP21において,炭素排出目標等に関し伯は有利な状況にある旨述べている。同大統領は,EU・CELACサミット後,記者団に対し,伯は炭素ガスの排出抑制のための自発的な目標を設定した最初の国の一つであり,森林伐採の削減等の目標も設定している旨述べた。また,各国首脳は,低炭素経済への移行に向けた融資を行うため,緑の基金への投資の必要性を認識した。
  2. ルセーフ大統領は,同機会に,キャメロン英首相,ミシェル・ベルギー首相,メルケル独首相,トゥスク欧州理事会議長等との会談を実施している。
  3. EU・CELACサミットに関する分析記事は以下のとおり。
  4. EU・CELACサミットは単なる時間の無駄に過ぎない。もっとも,EUがCELACにとり重要でないというわけではなく,寧ろその逆である。EUは伯を含むラ米への最大の投資家であり,2014年の伯対外貿易の19.5%を占めている(ラ米とEUの昨年の貿易総額は887億ドル)。問題は,このようにサミットへの参加者数が多すぎることと各国の立場の違いが大きいことである。そのため,こうしたサミットは域外の多くが関心を払わない誇大なトークショーとなってしまっている。実際のところ,伯の関心が高かったのはメルコスールとEUのFTA締結に向けた議論であった。

2.伯中ハイレベル協調協力委員会(COSBAN)の開催

  1. 6月26日,テメル副大統領及び汪洋中国副総理が共同議長を務める第4回COSBANが開催された。第4回目となる今次委員会においては,2013年に実施された第3回COSBANで発表された施策や2014年7月の習近平国家主席及び本年5月の李克強総理訪伯時になされた決定の履行プロセスが検討されている。
  2. 今次委員会では,インフラ投資や生産的な協力の拡大,食肉(牛・豚・鳥肉)関連貿易,航空分野における協力(伯EMBRAER社製航空機の売却及び中国におけるビジネス用飛行機の製造のためのEMBRAER社と中国航空工業集団公司のジョイントベンチャー),教育,文化,科学技術及びイノベーション等のテーマについて議論が行われた。
  3. 同26日,汪洋中国副総理はルセーフ大統領を表敬している。両者は,二国間の議題について議論を行い,両国関係がダイナミックになっていることで一致した。会談後,汪洋中国副総理は,中国は工業製品を含むより多くの伯製品を輸入する意思がある旨述べている。また,同副総理はテメル副大統領との共同記者会見において,伯産牛肉の対中輸出を増加させるべく,中国の技術者チームが調査を行っている旨述べている。

3.ルセーフ大統領の訪米

  1. ルセーフ大統領は,6月28日から7月1日にかけて,訪米(ニューヨーク,ワシントン,サンフランシスコ)した。なお,同訪問には10名の閣僚が同行。今回,両国は環境,科学技術,防衛,農業,社会保障及び教育等の様々な分野における協定を締結している。環境分野では,再生可能なエネルギー源(水力発電を除く)の比率を20%に増やす目標を発表し,畜産分野では今後米国が伯の14州より牛肉を輸入していく旨発表した。更に,ルセーフ大統領は,グローバルエントリープログラムにより,伯から米国への訪問者の入国を容易にさせるオバマ大統領の決定を歓迎している。
  2. また,両国首脳会談後,オバマ大統領は,米国は伯を地域ではなく,グローバルな大国として見ている旨述べた。また同大統領は,米国が中南米により深く関わっていくにあたり,伯との強力なパートナーシップが同地域における礎石となると述べている。ルセーフ大統領は,貿易の拡大・多様化のための野心的な関係を築いていきたい,また貿易,投資,気候変動,エネルギー,教育,防衛,科学技術,イノベーション等の二国間のアジェンダがある旨述べた。
  3. 専門家は,ルセーフ大統領の訪米を,二国間関係における重要なアジェンダの回復という点から重要なものと捉えている。他方で,伯外交の方向性にどのような意味合いがあるかという点では種々議論がある。
  • (ア)ジュニオール・ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)教授の見方
今次訪米は伯外交の分水界であり,今後伯外交はより力強いものとなっていく。伯産牛肉の貿易解禁,貿易円滑化措置,社会保障・気候変動・防衛協力等の分野での協定は,2013年に凍結した両国関係の回復のための,重要な歩みである。また,財政調整が行われており,昨今の中国との接近にもかかわらず,米国との関係は優先事項であり続けることを示すことが,米投資家を安心させる上で重要であった。
  • (イ)バルボーザ元駐米伯大使の見方
両国が発表した約束及び協定の今後の進展状況を見ていく必要があり,伯外交の変化について述べるには時期尚早である。今次訪米は伯側から見て目的を達成した前向きなものであるが,ルセーフ大統領がこのイニシアチブをとったのは,政治・経済的苦境から厳しくなっている国内の雰囲気を静め得る前向きなニュースが必要であったからである。
 

防衛

1.伯武器輸出の状況(エル・バイス紙 ブラジル版より)

  1. 「武器及び世界」の報告書によると,伯は小銃や対戦車ミサイルや迫撃砲等の軽装備の分野において,米,伊,独に続き,世界第4位の輸出国であることがSmall Arms Surveyの調査により明らかになった。2001~2012年の伯の軽装武器輸出額は28億ドルで,ロシアや中国を抜いている。伯は武器貿易条約(ATT)の締結国でありながら,国連に対する武器輸出に関する報告を行っていないため,上位3ヶ国に比し,その武器輸出は透明性が低く,武器の輸出先が不透明であると指摘されている。
  2. 実際に,伯製武器は紛争当事国や人権侵害を行っている国に渡っている可能性がある。状況によっては,独裁国やテロ等に伯製武器が使用されている可能性も否定できない。伯は,ATT条約に署名はしたが,未だ議会の承認が得たれていない。また,2011年に国連に武器輸出に関する報告を行っておらず,リビアに対する国連の経済制裁については棄権している。2013年にはトルコで監視団が,同国警察が反エルドアン政権デモの鎮圧に伯製催涙ガス弾(コンドール社製)を使用しているとの告発を行っている。
  3. サンパウロキリスト教大学国際学部のナセール教授は,「伯はPKO活動に参加する反面,武器を売るという矛盾を呈している。」と指摘する。例えば,伯はアンゴラの和平交渉プロセスに参加している一方で,Forjas Taurus社(伯最大の拳銃やレボルバーの製造業者)がアンゴラに進出している。
  4. 2001~2012年にかけて,伯の軽装武器の輸出は295%増加しており,その主因は中国向け輸出(1,456%増),韓国向け輸出(636%増),トルコ向け輸出(467%増)である。企業は伯の主要な武器メーカーForjas Taurus社,Imbel社,Companhia Brasileira de Cartuchos である。