最近の経済情勢 2015年12月号

平成27年12月16日

(1)経済情勢等(11月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,11月27日時点では,本年の経済成長は▲3.19%で2週連続で下方修正,明年の経済成長は▲2.04%で8週連続で下方修正となった。また,本年のインフレ率見通しは10.38%,明年のインフレ率見通しは6.64%とされた。

(イ)10月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.82%となり,前月比0.28%の上昇となった。特に,交通費が1.72%増となったことが寄与した。本年当初からの累計で8.52%,12か月累計で9.93%の上昇となり,本年当初からの累計でも政府のインフレ目標の上限である6.5%を既に上回っている。

(ウ)9月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲10.9%で19か月連続のマイナス,前月比でも▲1.3%となった。また,10月の輸出額は160.5億ドル(前年同月比▲12.4%,前月比▲0.6%),輸入額は140.5億ドル(前年同月比▲28.0%,前月比+6.4%)で,差し引き20.0億ドルとなり8か月連続で貿易黒字を記録した。

(エ)9月の小売売上高は,前年同月比▲6.2%となり,前月比でも▲0.5%で8か月連続のマイナスを記録。

(オ)全国の失業率(7~9月の移動平均)は8.9%となり,前月の公表値(6~8月の移動平均)から0.2%上昇して9か月連続して悪化した。また,国内主要6都市における10月の失業率は7.9%となり,前月から0.3%上昇した。

 

(2)経済政策等

(ア)11月16日,ルセーフ大統領は,市場関係者の間で辞任の噂が流れていたレヴィ財務大臣が現職にとどまることを表明した。

(イ)11月17・18日,連邦議会下院は,ルセーフ大統領が拒否権を発動した司法部門職員の給与を大幅に引き上げる法案等の採決を行い,大統領の拒否権行使が維持されることとなった。

(ウ)11月30日,企画予算省は,2015年度の裁量的経費について総額112億レアル(約3,500億円)の歳出削減策を発表した。

 

(3)中銀の金融政策等

11月25日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨賛成多数で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は3会合連続となった。

 

(4)為替市場

(ア)11月のドル・レアル為替相場は,1ドル=3.8レアル前後の比較的狭いレンジで推移した。

(イ)上旬は,中銀による為替介入の実施により,レアルは1ドル=3.7レアル台とやや強含みで推移した。

(ウ)中旬は,米国の年内利上げ観測やレヴィ財務大臣の去就を巡る報道等を受けて相場が上下する展開が続き,一時1ドル=3.8レアル台に下落した。その後,16日にルセーフ大統領がレヴィ財務大臣の留任を明言したことに加えて,18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表され,米国の利上げのペースが緩やかなものになると受け止められたことから,1ドル=3.7レアル前後まで上昇した。

(エ)下旬に入ると,27日にアマラル上院議員(与党上院院内総務)が逮捕されたことにより,基礎的財政収支目標を変更する法案の議会通過が不安視されたことから,レアルは下落した。月末は1ドル=3.8674レアルで取引を終えた(前月比0.3%のレアル安・ドル高)。

 

(5)株式市場

(ア)11月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,下旬までやや強含みで堅調に推移したものの,月末に急落して値を戻す展開となった。

(イ)上旬は,銀行の好決算等を受けて株価は上昇し,一時48,000ポイント台まで回復したものの,米国の雇用統計が好調だったことから年内利上げへの警戒感から株価は反落した。

(ウ)中旬は,47,000ポイント台で小幅な値動きとなったが,大幅な歳出増につながる法案に対する大統領の拒否権行使が連邦議会で支持されたこと等を受けて,株価は緩やかに上昇した。

(エ)下旬に入り,国営石油会社のペトロブラスを舞台とする汚職事件で与党議員等が相次いで逮捕されたことが嫌気され,株価は急落した。月末の株価は45,120ポイントとなり,前月比1.6%の下落となった。
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