最近の経済情勢 2016年5月号
平成28年6月10日
(1)経済情勢等(4月発表の経済指標)
(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,4月22日時点では,本年の経済成長率は▲3.88%で14週連続の下方修正,明年の経済成長率は0.30%とされた。また,本年のインフレ率見通しは6.98%で7週連続の下方修正,明年のインフレ率見通しは5.80%とされた。(イ)4月12日,IMFは「World Economic Outlook April 2016」を公表し,本年の経済成長率予測は▲3.8%とされ,本年1月時点の▲3.5%から下方修正された。また,2017年の成長率予測は0.0%とされた。
(ウ)3月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.43%となり,前月の0.90%から大きく下落した。食料・飲料費が+1.24%となった一方,居住費が▲0.64%,通信費が▲1.65%となったことが寄与した。
(エ)2月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲9.8%で24か月連続のマイナス,前月比では▲2.5%となった。
(オ)3月の貿易収支は,輸出額は159.9億ドル(前年同月比▲5.8%,前月比+19.8%),輸入額は115.6億ドル(前年同月比▲30.0%,前月比+12.2%)で,差し引き44.3億ドルとなり13か月連続で貿易黒字を記録した。
(カ)2月の小売売上高は,前年同月比▲4.2%で11か月連続のマイナス,前月比では+1.2%となった。
(キ)全国の失業率(1~3月の移動平均)は10.9%となり,前回の公表値(客年12~2月の移動平均)の10.2%から大幅に悪化した。また,同時期の失業者は1,108.9万人を記録し,前年同期の793.4万人,前回の公表値(客年12~2月)の1,037.1万人から大幅に増加した。
(2)経済政策等
4月15日,伯財務省及び企画予算省は,2017年度LDO(予算編成方針法:予算の基本的構造や,プライマリーバランス等の財政上の目標を規定)案を議会に提出した。2017年度のプライマリーバランス黒字目標は,政府全体でGDP比0.1%となった。ただし,歳入の下振れリスク等を考慮し,プライマリーバランス目標を最大650億レアル(GDP比▲0.96%)引き下げることを可能にするとされた。(3)中銀の金融政策等
(ア)3月31日,ブラジル中銀は,インフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し,2016年の経済成長率見通しを▲3.5%(前回客年12月の報告書から▲1.6%の下方修正)とし,2016年のインフレ率見通しを6.6%,2017年のインフレ率見通しを4.9%とした。(イ)4月27日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨を全会一致で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は6会合連続となった。
(4)為替市場
(ア)4月のドル・レアル為替相場は,ルセーフ大統領の弾劾手続の進行に加えて,資源価格の上昇や中国の予想比より強い経済指標等を受けて,前月に引き続きドル安・レアル高が進行した。(イ)月の前半は,世界的なリスクオフの動きや政権交代見通しに不透明感が広がったことから,一時1ドル=3.6レアル台までレアル売りが進行したものの,その後は大統領の弾劾が下院本会議で可決されるとの観測が高まり,1ドル=3.4レアル台まで急速にレアル買いが進行した。
(ウ)月の後半は,下院本会議における弾劾手続の可決直後から,中銀による大規模な為替介入(ドル買い・レアル売り)が実施され,1ドル=3.5レアル台で神経質な展開が続いた。その後は月末にかけて中銀による為替介入が見送られたこと等を受けて再びレアル買いが強まり,月末は1ドル=3.4358レアルで取引を終えた(前月比▲4.4%のドル安・レアル高)。
(5)株式市場
(ア)4月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,為替市場と同様に,大統領の弾劾手続の進行に加えて,原油・鉄鉱石の市況回復等を受けて,前月に引き続き上昇する展開となった。(イ)月の前半は,政権交代見通しに不透明感が広がったこと等により,一時48,000ポイントまで下落したものの,その後は資源価格の上昇とともに,ルセーフ大統領の弾劾に賛成する議員が増加しているとの調査結果が好感され,13日には53,000ポイント代まで上昇した。
(ウ)月の後半は,下院本会議における弾劾手続の可決を受けて利益確定の動きが広がったことと,資源価格の一時的な下落により,一時51,000ポイント台まで下落したものの,その後はメイレレス前中銀総裁が次期財務大臣に就任するとの観測が高まったこと等を受けて,株価は再び上昇に転じた。月末の株価は53,911ポイントとなり,前月比+7.7%の上昇となった。