最近の経済情勢 2016年1月号

平成28年1月22日

(1)経済情勢等(12月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,12月31日時点では,客年の経済成長率は▲3.71%で先週から横ばい,本年の経済成長率は▲2.95%で13週連続で下方修正となった。また,客年のインフレ率見通しは10.72%,本年のインフレ率見通しは6.87%とされた。

(イ)11月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で1.01%となり,前月比0.19%の上昇となった。特に,食料・飲料費が1.83%増,交通費が1.08%増となったことが寄与した。本年当初からの累計で9.62%,12か月累計で10.48%の上昇となり,客年当初からの累計でも政府のインフレ目標の上限である6.5%を既に上回っている。

(ウ)10月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲11.2%で20か月連続のマイナス,前月比でも▲0.7%となった。また,11月の輸出額は138.1億ドル(前年同月比▲11.8%,前月比▲14.0%),輸入額は126.1億ドル(前年同月比▲30.2%,前月比▲10.3%)で,差し引き12.0億ドルとなり9か月連続で貿易黒字を記録した。

(エ)10月の小売売上高は,前年同月比▲5.6%となった一方,前月比では+0.6%で9か月ぶりにプラスとなった。

(オ)国内主要6都市における11月の失業率は7.5%となり,前月から▲0.4%下落した。
 

(2)経済政策等

(ア)12月1日,ブラジル地理統計院(IBGE)は,本年第3四半期(7~9月)のGDP成長率が,前期比▲1.7%,前年同期比▲4.5%となり,本年第1四半期(1~3月)の成長率を▲0.7%から▲0.8%,本年第2四半期(4~6月)の成長率を▲1.9%から▲2.1%にそれぞれ改定したと発表した。

(イ)12月2日,2015年度の基礎的財政収支目標をGDP比0.15%から▲0.85%へ変更する修正案が議会で承認され,同3日,大統領の裁可を経て発効した。

(ウ)12月16日,格付会社のフィッチ・レーティングス社は,ブラジルの格付をBBB-から投資不適格(ジャンク級)のBB+に一段階格下げを行い,格付見通しをネガティブとした。これにより,大手格付機関3社(S&P,ムーディーズ,フィッチ)の中では,S&Pに続き2社目となる投資不適格級への格下げとなった。

(エ)12月17日,連邦議会は,2016年度予算編成方針法(LDO)を承認した。LDOには,2016年度のプライマリーバランス目標をGDP比0.7%から0.5%に引き下げる内容も含まれていた。

(オ)12月18日,バルボーザ企画予算大臣は,レヴィ財務大臣の辞任に伴い,ルセーフ大統領より次期財務大臣に指名されたことを受けて記者会見を行った。

(カ)12月21日,バルボーザ財務大臣(前企画予算大臣)が正式に就任した。これに伴い,シマン企画予算大臣(前大統領府連邦総監督庁長官)も同時に就任した。
 

(3)中銀の金融政策等

(ア)12月は政策金利(Selic)を決定する中銀の通貨政策委員会(Copom)は開催されていない。次回会合は,1月19・20日に開催予定。

(イ)12月23日,中銀は,インフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し,2015年の経済成長率見通しを▲3.6%(前回9月の報告書から0.9%下方修正),2016年を▲1.9%とし,2015年のインフレ率見通しを10.8%,2016年を6.2%,2017年を4.8%とした。
 

(4)為替市場

(ア)12月のドル・レアル為替相場は,上旬が1ドル=3.7レアル台で推移した後,乱高下しつつも下落基調となり,最終的に1ドル=4レアル台まで下落した。

(イ)上旬は,ルセーフ大統領の弾劾手続開始の報道を受けて,政局混迷よりも政権交代に対する期待感から,一時1ドル=3.7レアル台に上昇した。

(ウ)中旬は,格下げや原油安・人民元安の進行を受けて,1ドル=3.8レアル台で推移した。なお,米国の利上げの影響は限定的だったものの,18日にレヴィ財務大臣辞任の報を受けて,財政懸念から1ドル=4レアル近くまで急落した。

(エ)下旬に入り,クリスマスの休場を挟んで市場参加者が少なくなる中で,30日に政府が国営銀行に対する巨額の債務を返済したことで再びレアルは下落し,月末は1ドル=3.9608レアルとなり,前月比▲2.6%,前年末比▲32.9%のレアル安・ドル高となって2015年の取引を終えた。
 

(5)株式市場

(ア)12月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,政局混迷や世界的な原油安の進行等を受けて,ほぼ一貫して下落する流れとなった。

(イ)上旬は,ルセーフ大統領の弾劾手続開始及び進展の報道を受けて,一時46,000ポイント台まで回復する一方で,世界的な原油安・株安の進行により一時44,000ポイントまで下落する等,やや振れ幅の大きい展開となった。

(ウ)中旬は,45,000ポイントを挟んで堅調な展開が続いたものの,18日にレヴィ財務大臣辞任の報を受けて,一気に43,000ポイント台まで急落した。

(エ)下旬に入り,クリスマスの休場を挟んで薄商いとなる中で,特に好材料もなく推移した。月末の株価は43,350ポイントとなり,前月比▲3.9%,前年末比▲13.31%の下落となって2015年の取引を終了した。