トピックス 2018年12月号

平成30年12月11日
ブラジル政治情勢(11月の出来事)
[内政]
(1)政権移行プロセスの開始
(2)政権移行チームの動向
(3)その他の動き


[外政]
(1)中東関係
(2)米国関係
(3)その他


トピックス
(1)山田大使とキン・カタギリ次期下院議員との懇談

(2)山田大使とエルネスト・アラウージョ次期外務大臣との懇談

(3)山田大使とジャイル・ボルソナーロ次期大統領との懇談

(4)国際柔道デーにおける日本文化紹介(在リオ総領事館)

(5)「健康安全講話」及び「在外安全対策セミナー」の開催(在リオ総領事館)

(6)「アリタ元伯産業財産権庁長官への叙勲伝達式」の実施(在リオ総領事館)

 

【内政】

(1)政権移行プロセスの開始
(ア)11月7日,ボルソナーロ次期大統領とテメル大統領が会談。政権移行プロセスが正式に開始。

(イ)会談において,テメル大統領は,「選挙は終わった。伯の繁栄のため,これからは全ての国民が団結すべき。我々は形式的な協力にとどまらず,真の協力を全力で行う。次期大統領が年内成立を望む法案があれば,成立に向けて全力で取り組む」と発言。

(ウ)ボルソナーロ次期大統領も,「政権移行期間中はテメル大統領と連絡を密にし,大統領就任後も(テメル大統領との)対話を続けたい。経験者の知識は我々にとって有益かつ不可欠である。」と発言。

(エ)更に両者は,年金改革の年内実現を目指して協力することでも一致した。


(2)政権移行チームの動向
(ア)ボルソナーロ次期大統領は,選挙後もリオの自宅に居住しつつ,火曜~木曜はブラジリアに滞在し,政権移行チーム事務所で各団体や議会関係者等の表敬を受け,次期閣僚を随時指名。

(イ)各国大使も,リオのボルソナーロ次期大統領邸,又は,ブラジル銀行文化センター内に設置された政権移行チーム事務所を訪問し,ボルソナーロ次期大統領を表敬。

(ウ)山田彰日本国大使は,11月23日,政権移行チーム事務所を訪問し,エルネスト・アラウージョ次期外務大臣と懇談。12月4日には,同事務所内で,ジャイル・ボルソナーロ次期大統領と懇談した。

(エ)12月9日時点で,全閣僚が指名された。非閣僚級ポストも含め,主な布陣は以下のとおり(プロトコール・オーダーは現時点で未定)。

●ジャイル・ボルソナーロ大統領(下院議員,PSL所属)
●アントニオ・モウラォン副大統領(陸軍大将)
●オニキス・ロレンゾーニ文官長(下院議員,DME所属)
●アウグスト・エレノ大統領府安全保障室長官(陸軍大将)
●サントス・クルス大統領府政府調整庁長官(陸軍大将)
●グスタヴォ・ベビアーノ大統領府事務総局長官(PSL党首)
●パウロ・ゲデース経済大臣(エコノミスト)
●セルジオ・モロ法務・公安大臣(クリチバ連邦地方裁判所判事)
●エルネスト・アラウージョ外務大臣(外務省米国・カナダ・米州担当局長)
●フェルナンド・アゼヴェード国防大臣(陸軍大将)
●マルコス・ポンテス科学技術大臣(宇宙飛行士)
●テレザ・クリスチーナ農務大臣(下院議員,DEM所属)
●ルイス・エンリケ・マンデッタ保健大臣(下院議員,DEM所属)
●ワグネル・ロザリオ透明性・連邦総監督省大臣(続投)
●ヒカルド・ロドリゲス教育大臣(陸軍士官学校名誉教授)
●タルシシオ・フレイタス・インフラ大臣(連邦下院事務局法律顧問)
●グスタヴォ・カヌート地域開発大臣(国家統合省次官)
●オズマール・テッハ市民大臣(下院議員,MDB所属)
●マルセロ・アントーニオ観光大臣(下院議員,PSL所属)
●ベント・コスタ・リマ・レイテ鉱山エネルギー大臣(海軍大将)
●ダマレス・アルヴェス女性・家族・人権大臣(下院議員秘書)
●アンドレ・メンドンサ連邦総弁護庁長官(同庁監査官)
●ロベルト・カンポス・ネト中銀総裁(サンタンデール銀行役員)


(3)その他の動き
(ア)ルーラ元大統領,ルセーフ前大統領を含むPT幹部に対する訴追
     11月23日、ブラジリア連邦地方裁判所判事は、2016年9月に連邦検察庁が提出したルーラ元大統領及びルセーフ前大統領、パロッシ元文官長、マンテガ元財務相、PT財務担当の5人に対する起訴状を受理。5名全員が被告となった。

     2002年~2012年6月までのルーラ・ルセーフ両政権下で、これら被告は,犯罪組織を結成し、オーデブレヒト社、OAS社、UTC社等と結託し、汚職や資金洗浄を行っていたとされる。

(イ)ルーラ元大統領に対する訴追
     11月26日、サンパウロ州検察庁は、ルーラ元大統領を資金洗浄容疑で起訴した。捜査当局によれば、ルーラ元大統領は、オビアン・ンゲマ赤道ギニア大統領に対してブラジルの建設会社ARG社に対する便宜を図ることと引き替えに、同社からルーラ研究所への企業献金の形で100万レアルの賄賂を受け取ったとされる。

 

【外交】

(1)中東関係
     11月5日,エジプト政府は,ヌネス外相の同国訪問招待(同月9~11日)を取り止め。ヌネス外相のエジプト訪問は,同国開催のCOP24準備会合出席のためであったが,在イスラエル伯大使館をエルサレムに移転するというボルソナーロ次期大統領の発言に対する報復措置であると各紙は報道。


(2)米国関係
(ア)11月26日~28日,エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(ボルソナーロ次期大統領三男)がワシントンを訪問。ブライヤー国務次官補(西半球局担当),アルマグロOAS事務総長等と懇談。

(イ)11月29日,ボルトン米国家安全保障担当大統領補佐官がリオデジャネイロ市内のボルソナーロ次期大統領宅を訪問。両国の貿易関係,ベネズエラ情勢,中国,治安等について協議したと報じられた。


(3)その他
(ア)11月31日~12月1日,亜ブエノスアイレスで開催されたG20サミットにテメル大統領が出席。

(イ)11月末,当地主要各紙は、伯が来年11月のCOP25開催を断念したと広く報道(12月7日時点で,伯政府から断念したとの正式発表はなされていない)。

 

トピックス

(1)山田大使とキン・カタギリ次期下院議員との懇談
     11月21日,サンパウロ出張中の山田大使は,キン・カタギリ次期下院議員と懇談を行った。

     山田大使からは,今次選挙での当選に祝意を述べるとともに,日伯関係の更なる強化に向けて協力頂きたい旨述べた。これに対して,カタギリ次期下院議員からは,自分に出来ることがあれば是非協力していきたい,未だ訪日したことがないので,是非訪日したい等の発言があった。

(注)キン・カタギリ次期下院議員は日系3世の22歳。本年10月の下院議会選挙にサンパウロ州から初出馬し,全国4位の得票数で初当選を果たした。

(左から)カタギリ次期下院議員,山田大使,ミナトガワ秘書,野口在サンパウロ総領事


(2)山田大使とエルネスト・アラウージョ次期外務大臣との懇談
     11月23日,山田大使は,政権移行チームを訪問し,エルネスト・アラウージョ次期外務大臣と懇談を行った。

     山田大使から,長年に亘る両国の友好関係を更に強化させていきたい旨述べ,これに対して,アラウージョ次期外務大臣からも,様々な分野で日本と協力していきたい,来年に日本で開催されるG20外相会合などの機会に訪日できることを楽しみにしている等の発言があった。その他,来年からのボルソナーロ新政権下での外交政策について,幅広い意見交換が行われた。



(3)山田大使とジャイル・ボルソナーロ次期大統領との懇談
     12月4日、山田大使は、ジャイル・ボルソナーロ次期大統領と懇談を行った。

     山田大使からは、当選への祝意を改めて伝えつつ、今後、両国の伝統的な友好協力関係を更に強化させていきたい旨述べ、新政権による諸改革の取組への期待感を表明した。

     ボルソナーロ次期大統領からは、ブラジルを変革し、更に成長させていく上で日本との協力は不可欠であると述べ、また、自分は日本が大好きである、日本の友人であると発言があった。

山田大使から贈呈品を受け取るボルソナーロ次期大統領
(Foto:Governo Transição)
 

(左から)山田大使、ボルソナーロ次期大統領、
ニシモリ下院議員、フラヴィオ・ボルソナーロ
次期上院議員(Foto:Governo Transição)

(左から)若枝書記官、山田大使、ボルソナーロ
次期大統領、山中次席公使
 

(4)国際柔道デーにおける日本文化紹介(在リオ総領事館)
     10月20日(土)及び27日(土)、「国際柔道デー」(10月28日)の機会を捉え、アソシアソン・ナガイ(貧困地域で柔道教育を行うNGO)の生徒、その家族及び一般市民を対象として、日本文化を紹介するイベントをショッピング・ノヴァ・アメリカ(リオ市)で行った。

     20日は、アソシアソン・ナガイで柔道を学ぶ生徒と共に、ショッピングセンターを訪れる一般市民を対象に、折り鶴ワークショップを実施した。同ワークショップは、生徒が予め鶴の折り方を学び、一般市民にその折り方を教えるという形式で実施し、同ワークショップに約200名が参加するほど好評を博した。

     27日には、書道、生け花、折り紙及び漫画ワークショップ並びに日本文化紹介展示を実施し、イベントの最後には、リオ日系太鼓の演奏に合わせて、生徒、その家族及び一般市民が炭坑節を踊った。
 

星野在リオデジャネイロ総領事挨拶
 

漫画ワークショップの様子
 

書道ワークショップの様子

リオ日系太鼓の演奏

(5)「健康安全講話」及び「在外安全対策セミナー」の開催(在リオ総領事館)
     11月9日(金)、リオ日本商工会議所安全対策委員会と協力し、「感染症に関する健康安全講話」及び「在外安全対策セミナー」を開催した(リオ市ボタフォゴ地区)。

     「健康安全講話」は、日本から国立国際医療研究センター病院国際感染症センター医員を招聘し、黄熱、ジカウイルス、デング熱、チクングニヤ熱等の感染症に関する講話を、「在外安全対策セミナー」は、日本からコントロール・リスクス社(治安関係のコンサルタント会社)のコンサルタントを招聘し、主にリオにおける安全(防犯)対策の講演を実施した。

     「健康安全講話」における「予防接種を受けること」及び「防蚊対策」という2点のメッセージは非常に明確であり、「安全対策セミナー」の講演における「自分の身は自分で守る」という聴衆の安全意識の高揚を目的とした講演も、画像や映像などを用いた視覚的インパクトのあるものであり、双方ともに好評を博した。
 

星野在リオデジャネイロ総領事冒頭挨拶
 

健康安全講話の様子
 

在外安全対策セミナーの様子

在外安全対策セミナーの様子

(6)「アリタ元伯産業財産権庁長官への叙勲伝達式」の実施(在リオ総領事館)
     11月23日(金)、リオ総領事公邸において、ヒサオ・アリタ元伯産業財産権庁(INPI)長官への叙勲の伝達式を実施した。

     アリタ氏は、1979年から1985年にINPI商標局長、1992年から1993年に同長官を務められ、在任中には、日本企業の知的財産の保護及びブラジルの知的財産制度の国際化に尽力され、退官後はサンパウロの二宮正人法律事務所のパートナー弁護士として、日伯の知的財産分野の関係者との交流を図られている。同氏のこうした功績が認められ、平成30年秋の外国人叙勲において旭日中綬章の受章となった。

     伝達式には、アリタ氏本人、ご家族、ご友人に加え、マイアINPI副長官及び二宮正人先生が出席され、その功績を称えた。アリタ氏からは、このような立派な勲章の受章は光栄であり、長い間ブラジルで苦労した亡き父親、いつも支えてくれる家族及び友人への感謝が述べられた。
 

勲記伝達

アリタ氏の挨拶