トピックス 2015年11月号

平成27年11月19日

(1)梅田大使のマラニャン州公式訪問

(2)サンパウロにおけるジャパン・ハウス(仮称)第一回運営委員会開催

内政 省庁統廃合と関係閣僚の進退

外交(1)ルセーフ大統領のコロンビア訪問 (2)ルセーフ大統領のスウェーデン・フィンランド訪問 (3)財政危機の外交活動への影響


(1)梅田大使のマラニャン州公式訪問


10月7日、梅田大使がマラニャン州を公式訪問し、フラビオ・ディーノ州知事と会談を行った。梅田大使は、同州政府の日系社会への配慮に謝意を示すとともに、サンパウロのブラジル日本商工会議所における同州の魅力や開発計画についての講演、交番制度の積極的な活用、同州の中等教育課程における日本語コースの導入を要請した。また、会談に先立ち、梅田大使は「ブラジル穀物輸送インフラ改善についてのセミナー」に参加して冒頭挨拶を行った。同セミナーには、日本側は農林水産省やブラジル駐在の日系企業から合計30名以上が参加した。
 

(2)サンパウロにおけるジャパン・ハウス(仮称)第一回運営委員会開催

9月22日,サンパウロにおけるジャパン・ハウスの第一回運営委員会が在サンパウロ日本国総領事公邸にて開催され(図1)、同運営委員会の議長として中前隆博総領事が就任した。
各運営委員会メンバーは,サンパウロにおけるジャパン・ハウスについて,日系社会を始めとする現地との関わりやビジネスとの連携等,ジャパン・ハウスを成功させるための様々な考えや意見を述べ,議論は大いに盛り上がった。
この運営委員会出席のため,外務省より薗浦外務大臣政務官が来伯され,各運営委員会メンバーへの委嘱状を代表の元伯国農務大臣のロベルト・ロドリゲス氏に手交した。
ジャパン・ハウスは,日本に関する様々な情報がまとめて入手できるワンストップ・サービスを提供すると共に,カフェ・レストラン,アンテナショップ等を設置し,民間の活力,地方の魅力なども積極的に活用したオールジャパンでの発信を実現し,専門家の知見を活用しつつ,現地の人々が「知りたい日本」を発信することをコンセプトとした新たな発信拠点。ロンドン,ロサンゼルス,サンパウロで,平成28年度中の開館を目指している。
運営委員会メンバーは,以下のとおり。
  • ロベルト・ロドリゲス 元伯国農務大臣
  • カイオ・カルバーリョ Band Arte1テレビ社長
  • 呉屋春美 ブラジル日本文化福祉協会会長
  • ジョアン・ローダス 元サンパウロ大学学長
  • 渡部和夫 元サンパウロ州高裁判事
  • 青木智栄子 ブルーツリー・ホテルズ社長
  • 村田俊典 ブラジル日本商工会議所会頭
  • ジーコ 元サッカー日本代表監督(欠席)

(図1)サンパウロ ジャパン・ハウス(仮称)第一回運営委員会
 

内政

省庁統廃合と関係閣僚の進退


10月2日,ルセーフ大統領が省庁統廃合と関係閣僚の人事交替について発表を行ったところ,概要は以下のとおり。
  • (ア)省庁の統廃合
(1)労働雇用省と社会保障省の統合
統合後の「労働社会保障大臣」には,ロセット前大統領府官房長官(PT)が就任。ガバス元社会保障大臣は社会保障担当次官に転任。
(2)漁業養殖省の廃止
従来の同省漁業分野は農務省に統合され,同省養殖分野は農村開発省に統一。前漁業養殖大臣は,大統領府港湾庁長官に転任。
(3)大統領府人権庁・同人種平等促進政策庁・同女性問題庁の統合
これら3庁が統合され,統合後に誕生した新大臣にはゴメス前人種平等促進政策庁長官が就任。前女性問題庁長官は退任し,女性問題担当次官に就任。前人権庁長官も退任し,前職の下院議員職に復帰。
(4)大統領府零細企業庁の廃止
開発商工省に吸収・統合され,前零細企業庁長官は退任。モンテイロ開発商工大臣(PTB)は留任し,零細企業庁の任務は同大臣の下に入る。
(5)大統領府政治調整担当庁の統合
議会等との調整役を担ってきた政治調整担当庁は,大統領府官房長官の下に統合。前政治調整担当長官は退任し,前職の下院議員職に復帰。ベルゾイーニ前通信大臣(PT)が統合後の官房長官に就任。
  • (イ)大臣の交代
(1)文官庁
メルカダンテ前文官長(PT)が教育大臣に転任し,ワグネル前国防大臣(PT)が後任の文官長に就任。
(2)教育省
リベイロ教育大臣(無党派)が退任し,メルカダンテ前文官長が後任に就任。
(3)科学技術省
レベーロ科学技術大臣(PCdoB)が国防大臣に転任し,セルソ・パンセラ下院議員(PMDB)が後任に就任。
(4)保健省
キオロ保健大臣が退任し,カストロ下院議員(PMDB)が後任に就任。
(5)通信省
ベルゾイーニ通信大臣が大統領府官房・政治調整担当長官に転任し,アンドレ・フィゲイレード下院議員(PDT)が後任に就任。
(6)大統領府港湾庁
アラウージョ長官が退任し,バルバーリョ前漁業養殖大臣(PMDB)が後任に就任。
  • (ウ)大統領府戦略担当庁の廃止
  • (エ)大統領府安全保障室長官の閣僚ステータスの喪失(現長官は次官級職として続投)
  • (オ)構成・勢力配分

(1)計38省庁存在していた連邦政府行政組織が,今回の改革により数としては7省庁の純減となり,31省庁に縮小(8省庁減,新規設置1省)。
(2)PMDB(ブラジル民主運動党)所属の政治家が占める閣僚ポストが,従来の6ポストから7に増加。これは,最大連立与党PMDBの懐柔を通じた議会調整が念頭に置かれている。
(3)連立与党の中核をなすPT(労働者党)の占める閣僚ポストは,PMDBに対する譲歩として従来の14から10に減少した。
(4)連立与党のうち,少数派のブラジル労働党(PTB),社会民主党(PSD),進歩党(PP),伯共和党(PRB),共和国党(PR),ブラジル共産党(PcdoB),民主労働党(PDT)の7党は大臣を1名ずつ有し,残り7省庁については,特定の政党に所属しない人物が閣僚を務めるという編成。

外交

(1)ルセーフ大統領のコロンビア訪問

  • (ア)10月8日から9日にかけて,ルセーフ大統領がコロンビアを公式訪問した。9日には,ルセーフ大統領は同国で活動するブラジル人企業家と会合し,企業家側が両国の経済関係を強化したい旨述べたのに対し,ルセーフ大統領は民間のイニシアチブを如何に支援していくべきかを知る上で経済界との対話は重要と述べた。
  • (イ)本件訪問時に締結された自動車貿易協定により,2016年から8年間,双方の自動車輸入関税が一定台数までは免除される(2016年:1万2千台まで,2017年:2万5千台まで,2018年以降は5万台までの枠内)。コロンビアは南米で第三位の市場であるが,伯の貿易相手国としては第7位に留まる。
  • (ウ)その他,両国首脳は,産業協力,銀行サービス,科学研究,警察協力,通信,スポーツ,原住民問題,河川交通,投資協力促進等に関する協力文書に署名した。また,COP21を念頭に気候変動問題に関する共同声明を発表した。
  • (エ)ルセーフ大統領は,9日の記者会見において,コロンビア政府によるコロンビア革命軍(FARC)との和平交渉を「勇気ある」決断と賞賛し,伯は紛争後の再建に協力する用意がある旨述べた。

(2)ルセーフ大統領のスウェーデン・フィンランド訪問

  • (ア)スウェーデン訪問
(1)10月19日,ブラジル及びスウェーデンは新行動計画を採択し,貿易,投資,防衛,科学技術,イノベーション,持続可能なエネルギー,環境,文化等の分野での協力やグローバルな課題に関する対話を進めることとなった。ルセーフ大統領はスウェーデンに対し,ブラジルにおける小型衛星の発射車両製造計画への参加を呼びかけた。
(2)また,スウェーデンのSAAB社とブラジルのEmbraer社の間で行っている次世代戦闘機製造の協力は,技術移転や知財権共有を含め,今後10年以上続けられていく旨確認した。SAAB社を訪問したルセーフ大統領は,同国で研修しているブラジル人技術者は極めて重要であり,新戦闘機は2019年より伯空軍で使用開始予定である旨強調した。
(3)ブラジル政府の「国境無き科学」計画を通じて,約500名の学生及び8名の研究者がスウェーデンに留学しており,科学技術・イノベーションがブラジルの関心事項である。
  • (イ)フィンランド訪問
(1)今次訪問の主要な目的は,教育,科学技術,イノベーション分野における両国関係の強化である。ルセーフ大統領はAalto大学を訪問し,教授や研究者,ブラジル人留学生等と会合を行った。科学技術・イノベーション分野では,ミクロ/ナノ・テクノロジー,バイオテクノロジー,食料産業,医薬品,花き産業,環境サービス,持続可能なエネルギー,エタノール等が重点分野である。
(2)ルセーフ大統領は,フィンランドとの通商関係強化に期待を示し,船舶,オフショア開発分野での協力やセルロース系エタノールの開発協力の可能性に言及した。また,平和構築に向けた協働に言及するとともに,ブラジルの国連安保理常任理事国入りへのフィンランドの支持に対し謝意を表した。

(3)財政危機の外交活動への影響

  • (ア)10月10日及び15日,当地主要各紙は伯財政危機の影響として,政府の支出削減が外交活動に与える影響につき報じている。
  • (イ)例えば,伯外務省の本年度予算の4100万レアル(約1億2800万円)の削減及びドルに対するレアル安の進行により,在ニューヨーク総領事館及び国連代表部入居ビルの賃料が3ヵ月間滞納となっている(同総領事館の賃料は7万6千ドル/月,国連代表部は12万7千ドル/月)。本年前半にも世界の複数の在外伯公館において,電気代等の支払いが滞る事態が発生している。
  • (ウ)また,伯政府は,昨年度分の一部及び本年度分の米州機構(OAS)分担金(計1529万ドル)の支払いを滞納しており,未払い額は加盟34ヵ国中で最大となっている。伯外務省関係者は,分担金の未払いによるOAS内での伯の影響力低下に懸念を示している。また,一部のOAS加盟国からは,伯の分担金未払いに対する罰則の適用を求める声も上がっている。