トピックス 2017年10月号

平成29年10月9日
ブラジル政治情勢(9月の出来事)
[内政]
(1)テメル大統領に対する第二弾の起訴
(2)ラヴァ・ジャット捜査関連
(3)その他


[外政]
(1)テメル大統領訪中
(2)北朝鮮による核実験・ミサイル発射に係る伯政府非難声明
(3)ヌネス外務大臣の東南アジア訪問
(4)ベネズエラ情勢に係るトランプ米国大統領主催夕食会へのテメル大統領出席
(5)ブラジルによる核兵器禁止条約の署名
(6)メルコスール・ASEAN閣僚会合へのヌネス外相の出席


トピックス
(1)岡本外務大臣政務官のブラジリア訪問

(2)第20回日本ブラジル経済合同委員会の開催

(3)日・ブラジル税関相互支援協定の署名

(4)日ブラジル外相会談

(5)和食のワークショップ及び和食紹介イベントの開催(在リオデジャネイロ総領事館)

(6)堀越・ラナリー協定60周年記念式典(在リオデジャネイロ日本国総領事館)

 

【内政】

(1)テメル大統領に対する第二弾の起訴
(ア)4日, ジャノー検事総長は緊急記者会見を開き,バチスタJBS社元社長との司法取引に疑義が生じたため,取り消す可能性があると発表。

(イ)11日,連邦警察は,テメル大統領,バジーリャ文官長,フランコ大統領府事務総局長官等の政権中枢を占めるPMDB幹部が,J&F社等から不正利益を受領していたとする捜査報告書を連邦最高裁に提出。

(ウ)12日,テメル大統領は,上記の連邦警察の動きを受けて,(連邦検察庁との司法取引に応じたフナロ両替商やバチスタ元JBS社社長を念頭に)「悪党どもが国から真実を奪っている,彼らは免罪又は減刑を得るために伝聞に基づくフィクションを作り上げている」との反論声明を発表。

(エ)13日,連邦最高裁大法廷は,テメル大統領弁護団によるジャノー検事総長に対する忌避請求を棄却。

(オ)14日,連邦検察庁は,テメル大統領に対する二度目の起訴を決定。司法妨害容疑で,テメル大統領,バチスタJBS社元社長,サウードJBS社幹部の3名を起訴した他,犯罪組織結社容疑で,テメル大統領及びPMDB幹部6名(パディーリャ文官長,フランコ大統領府事務総局長官,クーニャ前下院議長,アルヴェス元下院議員,リマ元大統領府政府調整庁長官,ロウレス元大統領補佐官)を起訴。

(カ)21日,連邦最高裁は,連邦検察庁によるテメル大統領に対する起訴状を下院に送付することを決定。

(キ)26日,下院本会議で起訴状が読み上げられ,起訴審議プロセス開始。

(ク)28日,下院憲法司法委員会パシェッコ委員長(PMDB)は,起訴に関する報告者としてアンドラーダ下院議員(PSDB)を指名。


(2)ラヴァ・ジャット捜査関係
(ア)5日,連邦検察庁は,PTが組織的に不正資金を受領していたとして,同党所属のルーラ元大統領,ルセーフ前大統領,パロッシ元文官長,マンテガ元財相,ベルナルド元企画予算相,ホフマン元文官長(現上院議員),シルヴァ元社会広報庁長官,ネト元会計局長に対する起訴状(収賄・犯罪組織結社容疑)を連邦最高裁に提出。ルセーフ前大統領に対する訴追は初。

(イ)12日,連邦最高裁は,テメル大統領の新たな疑惑(港湾・港湾施設のコンセッション契約に関する便宜を図り,サントス港を活動拠点とするロドリマール社から見返りを受領)に関する連邦検察庁の捜査請求を許可。

(ウ)14日, 連邦警察は,マッジ農務大臣の自宅を家宅捜査。

(エ)18日,ジャノー検事総長が退任し、ラケル・ドッジ検事総長が就任(初の女性検事総長)。

(オ)26日,連邦最高裁小法廷は,連邦検察庁の要請を受け,アエシオ・ネーヴェスPSDB党首の上院議員資格停止を決定(上院は強く反発)。


(3)その他
     28日,調査機関IBOPE社がテメル政権支持率にかかる世論調査結果を発表。政権支持率は3%,不支持率は77%となり,同社が調査して以来の最低値を更新。

 

【外政】

(1)テメル大統領訪中
     1日,テメル大統領は国賓として訪中。北京では,習近平国家主席,李国強首相,兪正声中国人民政治協商会議全国委員会主席等と会談。両国は,二国間の観光及び商用ビザの簡素化のための協定,二国間の映画共同作成のためのパートナーシップ協定,電子通商に関する覚書に署名。民間部門の協定として,ベロモンテ水力発電所の第二段階のライセンス許可,ブラジルサッカー連盟(CBF)と中国サッカー協会(CFA)間のサッカー協力に関する覚書等が署名。計14の協定が署名された。

     2日,テメル大統領は,伯輸出庁(APEX)が主宰する「伯中企業セミナー」の閉会式に出席し,中国人企業家に対し伯の改革アジェンダ及び投資機会について紹介を行った。

     9月3日~5日,テメル大統領は中国・厦門で開催された第9回BRICS首脳会合に出席。BRICS首脳は,平和・安全,国際組織犯罪,経済,貿易,金融,気候変動,社会開発等の主要な国際アジェンダについても協議し,厦門宣言に加え,関税,金融,インフラに関する協力協定に署名。


(2)北朝鮮による核実験・ミサイル発射に係る伯政府非難声明
(ア)3日,伯外務省は,北朝鮮による核実験を強く非難する声明を発出。水素爆弾爆発を含むとされる軍事的演習は,同地域の安全保障の不安定化を招く受け入れ難い行為と非難すると共に,北朝鮮政府が安保理決議を完全に遵守することを要求。

(イ)15日,伯外務省は,日本北部(北海道)の上空を通過した,北朝鮮による弾道ミサイルの発射に対し,最大限非難する旨の声明を発出。


(3)ヌネス外務大臣の東南アジア訪問
     9月5~12日,ヌネス外務大臣はマレーシア,シンガポール,ベトナムを訪問し,各国外務大臣等と会談。伯外務省声明によれば,メルコスールASEAN関係促進,政治・経済面での多国間交渉に関する情報交換等の地域・多国間の主要課題について協議。


(4)ベネズエラ情勢に係るトランプ米国大統領主催夕食会へのテメル大統領出席
     18日,テメル大統領はトランプ米国大統領の招きを受け,NYにてコロンビア,ペルー大統領,亜副大統領と共に夕食会に出席。伯大統領府発表によれば,首脳達は危機の出口は対話によらねばならないことで一致した模様。トランプ大統領は,ベネズエラ政府が仮に現在の道を追求するのであれば,マドゥーロ政権に対し,新たな措置が取られる可能性を示唆したとされる。


(5)ブラジルによる核兵器禁止条約の署名
     20日,テメル大統領は国連総会における核兵器禁止条約ハイレベル式典にて同条約に署名。翌日,ヌネス外務大臣は国内紙に南ア,オーストリア,アイルランド,墨,ナイジェリアとの共同寄稿を行い,国際社会に対し,かかる人類の生存に不可欠な取組に加わるよう呼びかけを行った。


(6)メルコスール・ASEAN閣僚会合へのヌネス外相の出席
     22日,NYでの国連総会のマージンにおいて,第二回メルコスール・ASEAN閣僚会合が開催され,ヌネス外相が出席。会合後の共同声明では,両地域間の貿易,投資,経済分野をはじめとする紐帯の一層の強化する方法を模索する重要性等が確認された。

 

トピックス

(1)岡本外務大臣政務官のブラジリア訪問
       8月30~31日,岡本三成外務大臣政務官は,政務官として最初の外国訪問としてブラジル(ブラジリア)を訪問し,「第1回日伯インフラ協力会合」に出席した他,ブラジル政府関係者及び連邦議会議員等と意見交換を行いました。 

(ア)フルラン下院外交国防委員長,日系議員との会談
      岡本大臣政務官は,連邦下院議会内で,フルラン下院外交国防委員長及び日系議員(ニシモリ伯日議連会長,タカヤマ伯日議員戦線会長(下院議員),イイホシ下院議員,オオタ下院議員)と会談し,議員交流,経済交流,文化交流等の二国間関係及び地域情勢等について意見交換を行いました。

(イ)日伯インフラ協力会合への出席
     岡本大臣政務官は,ブラジル外務省イタマラチ宮において開催された第1回日伯インフラ協力会合に出席し,オープニングにおいて日本側を代表し,挨拶を行いました。岡本大臣政務官からは,新たな日伯間の協議の枠組みである本件会合を活用し,両国の経済関係を一層緊密にしたい旨表明すると共に,ブラジルにおける「質の高いインフラ」の更なる展開に向けた忌憚のない議論,意見交換への期待が寄せられました。

  (注)本会合は,昨年10月のテメル大統領訪日時,二国間で署名された「インフラ協力覚書」を受け,開催が決まったもので,日伯双方の関心の確認,情報交換などを通じ,日本の「質の高いインフラ投資」をブラジルで進めるための環境整備等を目的とするものです。

(ウ)ガルヴァオン外務大臣代行との会談
     岡本大臣政務官は,ブラジル外務省において,ガルヴァオン外務大臣代行と会談し,二国間関係及び地域情勢等について意見交換し,日伯戦略的グローバル・パートナーシップの推進に向けた協力を再確認しました。

(エ)日系社会代表者との懇談
     岡本大臣政務官は,在ブラジル日本大使公邸において,ブラジリアに所在する日系社会代表者と懇談を行いました。岡本大臣政務官からは,首都ブラジリアの建設,発展に向けた日系社会の方々の御尽力に心から敬意を表すると共に,来年の移住110周年が,若い世代の日系人を含む多くの人の参画を得て,日伯関係の一層の増進を図る機会となることを期待する旨述べました。


(2)第20回日本ブラジル経済合同委員会の開催
     8月28-29日、クリチバ市において、第20回日本ブラジル経済合同委員会が開催されました。

     日本ブラジル経済合同委員会は、日本側は経団連、ブラジル側はブラジル全国工業連盟(CNI)が中心となって、両国の民間企業代表が一堂に会して討議する場です。1975年に始まり、本年で第20回目となり、およそ300名、うち日本側から120名の出席者を得て開催されました。

     本年の経済合同委員会では、日ブラジル経済の現状と展望、貿易及び投資、ビジネス環境整備・今後のビジネス機会、産業戦略・政策、農業・インフラ整備、天然資源・エネルギーなど、幅広い分野について活発な意見交換が行われました。

     日本国大使館からは山田大使が出席し、経済合同委員会開催に祝意を寄せると共に日系企業支援に引き続き取り組んで行くという安倍総理大臣のメッセージを代読しました。また、山田大使は、閉会の挨拶において、日伯関係の活発な交流を喜ばしいとしつつ、ブラジルにおいて日本企業がかかわるプロジェクトに両国関係者が知恵を出し合うべき事態が起きているとした上で、ブラジル政府が進める諸改革に言及、日本企業は短期的ではなく中長期的な視野でブラジルと共に発展しようという動きがある旨を述べました。


(3)日・ブラジル税関相互支援協定の署名
     9月14日,「税関に係る事項における相互行政支援及び協力に関する日本政府とブラジル連邦共和国政府との間の協定」(日・ブラジル税関相互支援協定)の署名が,ブラジリアにおいて,山田彰駐ブラジル大使とジョルジ・ハシジ・ブラジル連邦歳入庁長官(Mr. Jorge Rachid, Secretary of the Federal Revenue of Brazil)との間で行われました。

     この協定は,双方の税関当局が,それぞれの関税法令を適正に執行し,税関手続の簡素化・調和を含む貿易円滑化措置及び効果的な水際取締りを実現する観点から,不正薬物の密輸情報の交換を含む相互支援等を行うための法的な枠組みを提供するものです。

     この協定は,署名後,両国において必要な国内手続を経て,その完了を外交上の経路を通じて書面により相互に通告した日の後90日目の日に効力を生ずることとなります。


(4)日ブラジル外相会談
     9月20日,国連総会出席のためニューヨークを訪問中の河野太郎外務大臣は,ヌネス外務大臣との間で日・ブラジル外相会談を行いました。

     河野大臣から,ブラジルは,民主主義,法の支配といった基本的価値を共有する大切なパートナーであり,国連改革等,グローバルなレベルで緊密な協力を深めていきたいと述べました。また,本年4月のジャパンハウス サンパウロの開館式へのヌネス大臣の出席につき謝意を述べました。

     ヌネス外務大臣から,来年は日本人のブラジル移住110周年であり,この機会に両国関係をこれまで以上に強化したいと述べました。

     河野大臣から,北朝鮮は国際社会に対する脅威であり,国際社会全体で従来にない新たな段階の圧力をかけていく必要性について説明し,ブラジルの理解と協力を求めました。

     両大臣は,今後緊密に連携していくことで一致しました。

 
写真提供:ブラジル外務省 


(5)和食のワークショップ及び和食紹介イベントの開催
     在リオデジャネイロ日本国総領事館は、9月14日にNGO「ガストロモチーバ」(注)との共催により、リオデジャネイロ市ラパ地区にある「レフェットリオ・ガストロモチーバ」にて、「日本食普及の親善大使」である小池信也氏及び著名パティシエのクリスチーナ・エグチ氏による和食のワークショップ及び和食紹介イベントを開催しました。

     和食のワークショップでは、同NGOの活動にボランティアとして参加しているUNISUAM大学調理学科の学生に対し、小池シェフが「うまみ」に関する講演を行いました。

     和食紹介のイベントでは、路上生活者や失業者等を招待客として、小池シェフが前菜とメインプレート、エグチ・パティシエがデザートを調理し、星野総領事の他、当地の日系団体及び日本人ボランティアが料理を提供しました。

     多くの招待客にとって本格的な和食を口にするのは初めてであり、一味異なる和食紹介イベントとなりました。

(注)「ガストロモチーバ」は、「レフェットリオ・ガストロモチーバ(Refettorio Gastromotiva)」というリオデジャネイロ市ラパ地区にあるレストランに、路上生活者や失業者といった社会的弱者を招待客として招き、著名なシェフ達がスーパー等の廃棄前の食材を活用して夕食を提供するものです。

     リオ・オリンピックの際は選手村での提供に適さない食材を再利用することで話題になりましたが、オリンピック後の現在も毎週月曜日から金曜日に招待客に夕食を提供しています。
 

ワークショップの様子

小池シェフ(中央右)とエグチ・パティシエ(中央左)

【前菜】賽の目焼き野菜とそばの胡麻風味サラダ仕立て

【メイン】余り野菜入り菜飯おにぎり、豆腐と野菜のけんちん蒸しハンバーグ風

【デザート】オレンジとパッションフルーツのシャーベット

招待客の反応


(6)堀越・ラナリー協定60周年記念式典
     8月11日にミナスジェライス州イパチンガ市で堀越・ラナリー協定の60周年を記念する式典が開催され、在リオデジャネイロ日本国総領事館から星野総領事が出席しました。

     同協定は、1957年に当時の経団連事務局長の堀越氏と伯側代表のラナリー氏(後のウジミナス初代社長)との間で調印されたもので、日伯共同のナショナルプロジェクトとして発足したウジミナス社の設立に関する基本原則です。

     同式典には、ジョアン・レイチ・ミナスジェライス州議会議員、ジエスス・ナシメント・イパチンガ市副市長(キンタオン・イパチンガ市長代理)、ルイス・マルシオ・ウジミナス社人事担当役員、江川・新日鐵住金常務及びウジミナス社の発展を支えたOB・OGを中心に1000人以上の方々が参加されました。

     星野総領事からは、これまでウジミナス社の発展に携わってきた方々の貢献を讃えるとともに、ウジミナス社の発展は日伯の協力関係の歴史でもあることに言及し、今後もウジミナス社の発展と共に日伯間の協力関係が更に深化することを期待する旨のスピーチを行いました。
 

式典のステージ

式典の聴衆