トピックス 2017年6月号

平成29年7月12日
ブラジル政治情勢 
[内政]
(1)テメル大統領による前下院議長の買収工作容認疑惑
(2)重要法案の審議
(3)ラヴァ・ジャット捜査の進展
(4)ルセーフ・テメル正副大統領の大統領選挙当選取消訴訟
(5)閣僚の交代


[外政]
(1)ヌネス外相,ベネズエラ憲法制定議会発足を非難
(2)仏大統領選結果に対する伯政府反応
(3)ヌネス外務大臣のアフリカ訪問
(4)北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する伯政府反応
(5)米州人権委員会及び国連人権高等弁務官事務所による伯国内人権状況に対する伯外務省の反論声明
(6)米州機構外相協議会へのヌネス外相出席

 
トピックス
(1)「第6回ブラジリア日本祭り」の開催
(2)日ブラジル特許審査ハイウェイ(PPH)の試行開始

 

【内政】

(1)テメル大統領による前下院議長の買収工作容認疑惑
(ア)17日,テメル大統領がクーニャ前下院議長(汚職容疑により現在拘留中)への口封じのため伯食品大手JBS社が行っていた買収工作を容認していたとされる音声記録が報道。

(イ)18日,ファキン連邦最高裁判事は,伯連邦検察庁に対して,テメル大統領の捜査妨害容疑に関する捜査を許可すると共にバチスタJBS元社長等,同社関係者との司法取引を承認。同日夜,テメル大統領とバチスタJBS元社長による前下院議長の買収工作容認疑惑に関する音声記録を公開。

(ウ)18日,テメル大統領は,国民に向けたスピーチで疑惑に関して全面否定すると共に自身の辞任について否定。

(エ)20日,テメル大統領は,JBS元社長との会話記録内容の信憑性が判明するまでの間,自身への疑惑に関する捜査を中止するための申立書を連邦最高裁に提出。

(オ)20日,本件疑惑によりPSB(ブラジル社会党)が連立与党を離脱すると共にテメル大統領の辞任を要求。

(カ)22日,ルシア連邦最高裁長官は,テメル大統領が申し立てた捜査中止にかかる審理を証拠となった音声記録の鑑定後に行うと発表。同日,テメル大統領は,弁護士を通じ,捜査中止の申立てを撤回する代わりに捜査の早期終結を求める新たな申立書を提出(音声記録の独自鑑定結果(70箇所以上の不明瞭点あり)を添付)。

(キ)24日,テメル大統領の辞任を求める大規模デモがブラジリアで発生。デモ隊の一部が暴徒化し省庁等への襲撃が行われたため,テメル大統領は大統領令により国軍による治安出動を指示。

(ク)25日,ラマキア伯弁護士会会長は,テメル大統領の弾劾請求を下院に提出。

(ケ)26日,ジャノー検事総長は,ファキン連邦最高裁判事に対して,テメル大統領,アエシオ・ネーヴェス上院議員,ロウレス下院議員の事情聴取許可を要求。

(コ)30日,ファキン連邦最高裁判事は,テメル大統領に対する書面による事情聴取を許可。


(2)重要法案の審議
(ア)3日,年金改革憲法改正法案が下院特別委員会において修正込みで可決。

(イ)3日,下院憲法司法委において政治改革憲法改正案(政党要件の厳格化を図るもの)が可決。

(ウ)17日,上院本会議において地方財政救済法案(財政難の州に対し,連邦財布及び政府系銀行への債務返済を3年間据え置く代わりに,財政再建を義務付ける内容)が可決。

(エ)31日,上院憲法司法委員会において,正副大統領が任期を一年以上残して不在になる場合の直接選挙実施に関する憲法改正案が可決。


(3)ラヴァ・ジャット捜査の進展
(ア)10日,クリチバ連邦裁判所において,ルーラ元大統領の第1回尋問が開廷。

(イ)11日,ファキン連邦最高裁判事は,2010年及び2014年の大統領選時,ルセーフ元大統領の広報担当を行っていたジョアン・サンタナ夫妻の証言を公開。同証言によると,ルセーフ陣営の選挙資金にはオーデブレヒト社から提供された裏金が使用されており,ルーラ及びルセーフは同事実を承知していたとされている。ルーラ側はこれを否定。

(ウ)15日,クリチバ連邦裁モロ判事は,ルーラ元大統領弁護側に対し,6月20日までに最終弁論書を提出することを言渡し。

(エ)22日,連邦検察庁は,ルーラ元大統領をオーデブレヒト社から無償で別荘の提供を受けたとして,収賄及び資金洗浄の容疑で起訴。ルーラ元大統領が起訴されたのはこれで6度目(ラヴァ・ジャット捜査では3度目)


(4)ルセーフ・テメル正副大統領の大統領選挙当選取消訴訟
     17日,選挙高等裁判所は,6月6日にルセーフ・テメル当選無効訴訟の審理を再開することを決定。

(5)閣僚の交代
(ア)18日,フレイレ文化相辞任。

(イ)28日,テメル大統領は,ジャルディン透明性監察監督庁大臣を法務・公安大臣に,セハーリオ法務・公安大臣を透明性監察監督庁大臣への交代を指名。

(ウ)30日,セハーリオ元法務・公安大臣は,透明性監察監督庁大臣への交代を不服とし同大臣への就任を拒否。

 

【外政】

(1)ヌネス外相,ベネズエラ憲法制定議会発足を非難 
     2日,ヌネス外務大臣は自身のツイッターを通じて,ベネズエラにおける新憲法制定議会発足に関して「クーデターと見なす。民主主義秩序の破壊を示すものであり,同国の憲法に背くもの」と非難。

(2)仏大統領選結果に対する伯政府反応 
     7日,テメル大統領及びヌネス外務大臣は,同日投開票された仏大統領選決選投票の結果,マクロン候補の当選に対し祝意を表した。

(3)ヌネス外務大臣のアフリカ訪問
(ア)8日~15日,ヌネス外務大臣はアフリカ5か国(ナミビア,ボツワナ,マラウイ,モザンビーク,南アを歴訪。

(イ)モザンビークには2日間滞在し,その間,同国政府閣僚との会談の他,12日にはヌネス大臣は,ヴァーレ社,同国港湾当局,CFMの共同プロジェクトであるナカラ回廊開通式に出席した。


(4)北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する伯政府反応
(ア)16日,伯外務省は,北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する非難声明を発出。

(イ)同声明によれば,伯政府は,本年4月28日及び5月13日の朝鮮民主主義人民共和国の弾道ミサイル発射を非難する,5月15日付国連安保理プレスステートメントに賛同するとした上で,同国に対し,安保理による関連決議を完全に遵守すると共に,同国が朝鮮半島の平和及び非核化に係る交渉再開に向けた必要な条件を醸成するために積極的に貢献することを要請。


(5)米州人権委員会及び国連人権高等弁務官事務所による伯国内人権状況に対する伯外務省の反論声明
     26日,伯外務省は,24日に発生した,(1)ブラジリアにおける反政府デモの鎮圧,(2)パラー州南東部の農園における警官隊と不法侵入した土地なし農民との間の銃撃戦の結果,農民10名が死亡した事件,及び,(3)サンパウロ・クラコランジア地区における麻薬常習者に対し警察が強制撤収を講じた際に負傷者が生じた事件に関して,米州人権委員会及び国連人権高等弁務官事務所(南米地域事務所)が当局の対応を非難する共同プレスステートメントを発出したことに対し,反論声明を発表。

(6)米州機構外相協議会へのヌネス外相出席
     ヌネス外相は,31日,米州機構ワシントン本部で開催された第29回外相協議会に出席。同会合では,主にベネズエラ情勢に関して議論が行われた。


トピックス

(1)第6回ブラジリア日本祭りの開催

     5月5日~7日、「第6回ブラジリア日本祭り」が市民公園パビリオンで開催されました。3日間で約5万人が来場し、和食、日本の音楽、書道、折り紙、武道、太鼓、踊り、コスプレ、アニメ等の様々な日本文化を楽しみました。在日本国大使館もブースを設置し、作動のデモンストレーション、日本酒の試飲会、国費留学生制度の説明、観光ビデオの上映、日本語研究機関や各種文化団体のPR資料の配付等を実施しました。
 

(2)日ブラジル特許審査ハイウェイ(PPH)の試行開始

     2017年3月16日に日本国特許庁とブラジル産業財産庁(INPI)は、特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を開始することに合意し、同年4月1日からその試行が開始されました。

     PPHとは、ある国の特許庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する特許出願について、先行庁の審査結果を利用することにより、別の国の特許庁(後続庁)において早期審査が受けられるようにする枠組みです。

     ブラジルでは、特許審査待ち期間(出願してから審査結果が通知されるまでの期間)が平均10年超と長期化しており(日本は平均9.3月)、国内外の産業界からは、この期間の短縮が求められています。

     今回のPPHの試行開始により、PPHを利用した日本からの特許出願は、ブラジル内で優先的に審査を受けることになるため、その特許審査待ち期間は1年程度に短縮され、日本企業の特許の早期の権利化につながることが期待されます。

 
 
小宮特許庁長官とピメンテルブラジル産業財産権庁長官とのPPH署名式

※PPHの試行に関する詳細は、以下の特許庁のHPをご確認ください。
日ブラジル特許審査ハイウェイ試行プログラムについて