トピックス 2019年5月号

令和元年5月14日
ブラジル政治情勢(4月の出来事)

[内政]
(1)大統領府による100日間総括
(2)経済政策及び経済改革
(3)夏時間の中止に関する大統領令
(4)閣僚等の交代
(5)汚職関連


[外交]
(1)モウラォン副大統領の訪米
(2)アラウージョ外務大臣の訪亜
(3)アラウージョ外務大臣の訪米
(4)ハイコ・マース独外務大臣の訪問


トピックス
(1)第9回日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議の開催

(2)山田大使とセルジオ・モーロ法務・治安大臣との意見交換

(3)カンペストレ慈善病院への医療機器の供与(在リオデジャネイロ総領事館)

(4)ショッピングモールにおける日本文化紹介(在リオデジャネイロ総領事館)

 

【内政】

(1)大統領府による100日間総括
     4月10日,大統領府は,ボルソナーロ政権発足100日記念式典を開催し,「100日間で達成すべき35の目標」を全て達成した旨公表。


(2)経済政策及び経済改革
(ア)4月5日,政府が税制改革に関する憲法修正案(PEC)を下院に提出。

(イ)4月15日,政府が2020年予算方針法案(PLDO2020)を下院議員に提出。

(ウ)4月23日,下院憲法司法委員会が年金制度改革に関する憲法修正案(PEC)を可決。


(3)夏時間の中止に関する大統領令
     4月25日,ボルソナーロ大統が夏時間の中止(無期限)に関する大統領令に署名。


(4)閣僚等の交代
(ア)4月8日,マリオ・ヴィラルヴァ輸出投資促進庁(APEX)長官が解任。

(イ)4月9日,ロドリゲス教育大臣が解任され,後任にアブラハン・ヴァインスタウブ文官庁事務次官が就任。


(5)汚職関連
(ア)テメル前大統領
(1) 4月2日,テメル前大統領及びモレイラ・フランコ前鉱山・エネルギー相を含む計12名が関与したとされるアングラ第3原発建設事業を巡る汚職容疑に関する2通の起訴状が連邦裁判所第7法廷(リオデジャネイロ)により受理。

(2) 同日,連邦検察庁(MPF)は,アングラ第3原発建設事業でテメル前大統領が建設業者に便宜を図った見返りとして,息女マリステーラ・テメル氏の住居改築費用(約160万レアル相当)が同業者から支払われたとし,同前大統領,マリステーラ氏,リマ大佐を含む計4名を資金洗浄の容疑で起訴(4月4日,テメル前大統領息女住居改築を巡る資金洗浄容疑に関する起訴状が連邦裁判所第6法廷(サンパウロ)により受理)。

(3) 4月10日,MPFが「Quadrilhão do MDB」事件に関し,組織犯罪及び捜査妨害の罪でテメル前大統領を起訴。

(4) 4月29日,ブラジリア連邦裁判所がサントス港湾事業に関する不正等の容疑でテメル前大統領及び他4名に対する起訴状を受理。同前大統領は,「Quadrilhão do MDB」事件を除く計5件の汚職事件で被告となった。


(イ)ルーラ元大統領
(1) 4月23日,司法高等裁判所(STJ)がルーラ元大統領によるグアルジャー市内3階建て高級マンションを巡る収賄容疑に関する第3審(控訴審)で8年10か月に減刑。

(2) 4月26日,ルーラ元大統領は,フォーリャ紙及びエル・パイス紙の独占インタビューに応じ,ラヴァ・ジャット捜査を担当したモーロ法務治安大臣(前・クリチバ連邦地裁判事)を批判。

 

【外交】

(1)モウラォン副大統領の訪米
     4月5~9日,モウラォン副大統領が米国を訪問。8日,ペンス米副大統領との会談後の記者会見において,米国によるベネズエラへの軍事介入の可能性を否定した。


(2)アラウージョ外務大臣の訪亜
     4月10日,アラウージョ外相はアルゼンチンを訪問。マクリ大統領及びフォーリエ外相と会談し,ボルソナーロ大統領の訪亜等について意見交換を行った。


(3)アラウージョ外務大臣の訪米
     4月29~30日,アラウージョ外務大臣がワシントンを訪問し,30日,ポンペオ米国務長官と外相会談を行った。


(4)マース独外務大臣の訪問
(ア)4月30日,アラウージョ外務大臣は,ハイコ・マース独外務大臣と外相会談を行った後,記者会見において,ドイツとのパートナーシップを強調。両国外相は,科学技術,貿易,財政,平和と安全,気候変動,生物多様性,越境犯罪及びサイバーセキュリティの分野における既存の国際的な規則について議論。ベネズエラ情勢につき,両国は,フアン・グアイド氏をベネズエラの暫定大統領として改めて確認するとともに,自由かつ公正な大統領選挙を可能な限り早期に行う責任を有するとした。また,ブラジル側はマドゥロ政権による駐カラカス独大使の追放に遺憾の意を表し,両国はベネズエラの民主主義回復に向けて引き続き取り組んでいくことを約束した。

(イ)同日,ボルソナーロ大統領は,プラナルト宮(大統領府)においてマース独外相の訪問を受けた。

 

トピックス

(1)第9回日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議の開催
     4月8日,東京において第9回日伯戦略的パートナーシップ賢人会議が開催されたところ,概要以下のとおり。

(ア)伯側新委員として,レヴィBNDES総裁及びフルラン元開発商工大臣が訪日し,会議に参加。

(イ)上記新メンバーを含む伯側から,ボルソナーロ政権の見方を紹介。同政権は,財政健全化,適材適所,透明性等の方針の下,強い決意で構造改革に臨んでいる。

     有識者(堀坂上智大学名誉教授)による基調講演を実施。同名誉教授は,安倍政権による中南米外交の強化とボルソナーロ政権の政治・外交姿勢の変化により,このタイミングで二国間関係を強化することで高い相乗効果が期待できる旨指摘。

(ウ)ボルソナーロ大統領の側近であるサントス・クルース大統領府政府調整庁長官より,インフラ整備における日本企業への期待感を表明。

(エ)「日メルコスールEPA」は,伯の産業競争力向上に必要な自由貿易の推進,投資環境の改善,人的交流のさらなる推進等のために重要との意見で一致。

(オ)高度人材を含め,日本は伯人労働者を迎えるための環境整備をすべきとの意見で一致。三村座長(日本商工会議所会頭)は,環境改善に向けた要望を日本政府に提言する意向。

(カ)最後に,次回の賢人会議は2020年4月中旬にリオデジャネイロ市内で開催することを確認し,会議内容を踏まえた成果文書を作成し,委員による確認,両座長による署名を行い,会議を終了した。

     その後,4月9日,日伯賢人会議メンバーは安倍総理大臣への表敬訪問を行った。

参照URL:外務省「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/brazil/jb_kaigi_0703.html


(2)山田大使とセルジオ・モーロ法務・治安大臣との意見交換
     4月10日,山田大使は,セルジオ・モーロ法務・治安大臣を往訪した。

     山田大使から,要職への就任に祝意を述べつつ,今後,治安対策や刑事司法の分野で,両国の協力関係を更に強化していきたい旨述べた。

     モーロ大臣からは,幼少期に日系人の親友がいたこと(マリンガ市出身)等を紹介しつつ,新政権の方針として,汚職対策や犯罪対策に注力しているので,今後,これらの分野で日本と連携していきたい旨の発言があった。

   



(3)カンペストレ慈善病院への医療機器の供与(在リオ総領事館)
     3月 22 日(金)、ミナスジェライス州南西部カンペストレ市(州都ベロオリゾンテ市の南西410km)に位置するカンペストレ慈善病院(Santa Casa de Misericordia e Caridade de Campestre)に対し、平成30年度「草の根・人間の安全保障無償資金協力」として、レントゲン機器及び電解質分解装置(計150,618.00 レアル(約 451 万円相当))を供与した。

     供与式には、ゼヌン・カンペストレ慈善病院院長、ムニス市長、近隣市のポッソス・ジ・カルダス市のキムラ日系協会会長及び同日系協会会員等が参加し、ゼヌン院長は、継続的な当該協力の実施により同地域の医療サービスが改善した実績及び当該協力が現地で高く評価されている事実を紹介するとともに、日本からのこうした支援に対する感謝が述べられた。
 

供与式の様子
 

星野総領事による挨拶
 

供与したレントゲン機器
 

供与した電解質分析装置
 


(4)ショッピングモールにおける日本文化紹介(在リオ総領事館)
     3月30日(土),リオ市内のショッピングモール(Shopping Rio Sul)において,茶道のデモストレーションや折り紙のワークショップ等の日本文化体験イベントを開催した。

     茶道のデモストレーションでは,その場で茶道講師が点てた抹茶を参加者に飲んでもらう他,作法等の説明を行ったところ,茶道に関する理解が深まる貴重な体験であったとの評価を得た。

     また,着物や富士山といった日本を象徴する形を折り紙で折るワークショップを行ったところ,全員が作品を持ち帰る等,非常に好評を博した。

     イベントの最後には,訪日経験のあるジャーナリスト(シンチア・サイトウ氏)による日本での体験に関する講演を行い,日本の様々な魅力について発信を行った。
 

茶道のデモストレーション
 

茶道講師
 

折り紙完成作品(着物)

シンチア・サイトウ氏による講演