トピックス 2015年10月号
平成27年10月16日
(1) 第3回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会の開催
(2) 梅田大使夫妻のミナスジェライス州公式訪問
(3) 井戸敏三兵庫県知事のパラナ州来訪:兵庫県パラナ州友好提携45周年記念
内政(1)ルセーフ大統領による独立記念日の演説 (2)マリーナ・シルバ氏の新党承認:選挙高等裁判所の決定 (3)緊縮財政実現に向けた動き:議会における大統領拒否法案の審議
外交(1)テメル副大統領の訪露 (2)国連総会における気候変動に関するルセーフ大統領による演説 (3)G4首脳会合
防衛(1)ワギネル伯国防大臣の訪中 (2)グリペン戦闘機に関するスウェーデンとの協力
( 1)第3回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会の開催
9月3日,ブラジリアにて第3回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会が開催され,日本側からは民間も含めて65名以上,伯側からは45名以上,合計110名以上が参加した。同委員会では,スマートコミュニティや医療分野での日本の協力や,対ブラジル投資促進について議論が行われた。(2)梅田大使夫妻のミナスジェライス州公式訪問
9月27日から9月28日にかけて,梅田大使夫妻がミナスジェライス州を公式訪問した。27日には,ミナスジェライス日伯文化協会訪問,日本語教育関係者との懇談,Voda Nova地区の交番視察を行った。ミナスジェライス日伯文化協会において,梅田大使はフードフェスティバルに出席し,同フェスティバルに参加した約400名の日系団体関係者の家族等と共に,日本舞踊や太鼓の演奏等の文化的催し物を見学した。日本語教育関係者との懇談では,梅田大使は,日本語教育の普及におけるこれまでの貢献に謝意を示すとともに,日本語教育の更なる普及に向けて意見交換を行った。
28日には,ピメンテル州知事との会談,日本企業関係者及び州政府幹部の意見交換への出席,日伯外交関係樹立120周年記念として友好の森での桜及びイペーの植林等を行った。ピメンテル州知事との会談において,梅田大使は同州知事による日系社会及び日伯関係への配慮や交番制度での協力に謝意を表するとともに,今後日本からの投資の増加に向けた環境整備や中等教育での日本語教育の導入等を要請した。更に,日伯外交関係樹立120周年を記念して,120本の桜とイペーの苗及び330本のツツジの苗を植樹する記念式典に参加した。
(3)井戸敏三兵庫県知事のパラナ州来訪:兵庫県パラナ州友好提携45周年記念
- (ア)平成27 年8月17 日~26 日の井戸兵庫県知事の海外出張(ブラジル連邦共和国,アルゼンチン共和国及びパラグアイ共和国)において,8月19日~21日,同知事はパラナ州を訪問した。
- (イ)本年は兵庫県とパラナ州との友好提携45 周年にあたり,両県州の交流と相互理解を一層促進するため,井戸兵庫県知事は同県議会,経済界,日伯協会及び柔道使節団等,7団体総勢80名以上のメンバーと共に来訪し,リッシャ パラナ州知事との会談や友好提携45 周年共同声明の調印等を行った。
井戸兵庫県知事のパラナ州訪問概要
- (ア)井戸敏三兵庫県知事とベト・リッシャ・パラナ州知事の会談
- (イ)兵庫県パラナ州友好提携45周年記念式典
〈2〉両県州知事は,1970年5月に両県州首脳が調印した協定文書に基づく友好連携の成果を確かめ合うとともに,今後の両県州の友好提携関係を一層進めるための「兵庫県・パラナ州友好提携45周年記念共同声明」に署名した。また,井戸県知事より,ニシモリ連邦下院議員に対して兵庫県功労賞が授与された。
- (ウ)パラナ州知事主催歓迎昼食会
- (エ)石川憲幸兵庫県議会議長一行によるトライアノ・パラナ州議会議長表敬
〈2〉トライアノ・パラナ州議会議長は,石川兵庫県議会議長一行のパラナ州議会訪問を歓迎し,パラナ州・兵庫県議会の一層の関係強化を希望すると共に,兵庫県の日本企業のパラナ州進出を期待する旨述べた。
- オ)パラナ州知事工業連盟との経済交流会議
〈2〉井戸兵庫県知事及び兵庫県パラナ州友好提携経45周年経済ミッション(兵庫県企業等15団体)が兵庫県の魅力と各団体の取り組みをそれぞれアピールした。
〈3〉FIEP側からパラナ州に関する魅力(電力や水資源が豊富,質の高い労働力等)が紹介された。
- (カ)田在クリチバ日本国総領事主催歓迎夕食会
〈2〉井戸県知事,バーロス州知事代理及び池田在クリチバ総領事より,両県州のますますの友好関係の発展を祈念するスピーチが行われた。本夕食会では,両県州関係者が今後の交流のあり方について意見交換する機会となり,両県州関係者よりパラナ兵庫友好提携45周年祝賀への当館の協力に対して感謝の意が表せられた。また,井戸県知事より,本年度末でブラジル兵庫県事務所を退職する山下亮同事務所長に対して兵庫県人会功労賞が授与された。
- (キ)兵庫県パラナ州姉妹提携45周年記念コンサート
〈2〉同コンサートにおいて日本人とブラジル人の音楽家が共演し,日伯の曲を演奏することで,パラナ州と兵庫県の友好関係をアピールした。当地の要人のみならず一般層の日系人,非日系人の日本文化への関心を喚起し,当地メディアでも報道された。
兵庫県とブラジル・パラナ州の歴史
1908年 最初の移住者を乗せた笠戸丸が神戸港を出発1926年 日伯協会誕生(現会長:住友ゴム工業株式会社会長三野哲治氏)
1960年 ブラジル兵庫県人会発足
1970年 兵庫県-パラナ州友好提携締結(訪問団の相互派遣開始)
1986年 パラナ州兵庫県人会の発足
1988年 兵庫県連絡事務所の設置(於:クリチバ)
2009年 海外移住と文化の交流センター開設(在日外国人支援機能施設)
2015年 兵庫県パラナ州友好提携45周年
内政
(1)ルセーフ大統領による独立記念日の演説
- (ア)9月7日,ルセーフ大統領による独立記念日の演説が大統領公式フェイスブック及び大統領府ホームページに動画形式で掲載された。演説のポイントは以下のとおり。本年5月1日のメーデーに続き,抗議行動の発生等を懸念して公の場やテレビ,ラジオによる放送も避ける形となった。
- (イ)以下,演説のポイント。
●危機の原因が過去の政府支出の増大にあったと,公のスピーチで初めて言及。今後は支出の引き締めに転じると明言。
●欧州のシリア難民問題を全世界の課題としつつ,難民を積極的に受け入れていく方向性を確認。
●過去の政策の誤りを改めて認め,痛みを伴う改革の重要性を指摘。インフレ抑制,金利引き下げ,失業率の低下,所得と収入の増加に取り組みつつ,成長軌道への回復を目指すと発言。
●経済を成長軌道に戻し,国民の生活水準を高め,失業率を低下させるべく国を率いていく決意を表明。
●労働者党(PT)政権の成果である貧困層の減少と中間層の拡大を確認。次の課題として教育の質の向上を挙げ,そのためには経済成長が不可欠とした。
●本年8月にサンパウロで開催された技能五輪国際大会において,ドイツ,日本等を退けブラジルが総合1位となったエピソードを紹介し,国民の意欲を鼓舞。
●民主主義と現行の選挙制度は,ブラジルがこれまで勝ち得たものの中で最も重要なものと強調。
(2)マリーナ・シルバ氏の新党承認:選挙高等裁判所の決定
- (ア)9月22日,選挙高等裁判所(TSE)は,マリーナ・シルバ元環境大臣が設立準備を進めてきた新党,「レデ・スステンタビリダーデ(持続可能性ネットワーク。以下レデ党と略記。)」の登録を満場一致で承認した。伯で34番目のTSE登録政党となったレデ党は,明年10月の統一地方選挙(市長及び市議会議員)から候補者の擁立が可能となる。
- (イ)2013年2月,シルバ氏は翌年10月の大統領選挙に向けレデ党設立を発表したが,法律で定められた数の署名を期限内に集めることが出来なかったため,2013年10月に伯社会党(PSB)に参加。シルバ氏は,今回の政党登録決定後のインタビューで,レデ党は伯政界の「調整役」になるとした上で,多数派と政府の手によってのみ政治が進められていく現状を変えなければならないと述べた。
- (ウ)シルバ氏はルセーフ大統領に対し,現在は支持率を気にしている場合ではなく,財政,政治,教育,インフラ等の様々分野で調整を行い,国民の信頼を取り戻すべきとのメッセージを送った。弾劾については,大統領は憲法に則った選挙で選ばれているため,不正への関与が明らかにならない限り弾劾は行われるべきではないとの見方を示した。
(3)緊縮財政実現に向けた動き:議会における大統領拒否法案の審議
- (ア)政府の歳出増防止のため,ルセーフ大統領が拒否権を行使した32本の法案に対する再審議が9月22日に上下両院合同会議にて開始され,投票の結果,26本については大統領の拒否が認められ廃案となった。廃案が決まった法案には,金額は低いものの50歳代から年金受給が可能となる現行制度を改め,高齢者の労働意欲を高めるため,年金の支払い年数と年齢の合計が男性は95年,女性は85年となった時点で年金給付を始めるとしたものも含まれる。
- (イ)伯政治経済に対する先行き不透明感等により,9月22日には94年7月のレアル・プラン導入後初となる1ドル=4レアル台(4.08レアル)をつけたこともあり,政府には32件の法案の廃案を早々に確立させ,緊縮財政実行を不安視する市場を安心させたいとの思惑があった。
- (ウ)今回,約8割の法案の廃案が決まったことで政府勝利との見方もあるが,成立すれば4年間で362億レアル(約1兆1千億円)の歳出増となる司法府職員給与の78%増を認める法案(通称「爆弾議題」)の投票は先送りされるなど,財政再建の進展は予断を許さない状況が続いている。同法案が成立した場合,来年の歳出は53億レアル(約1640億円)増,2019年までの4年間では362億レアル(約1兆1千億円)増となり,緊縮財政の実現はほぼ不可能になると見られている。
外交
(1)テメル副大統領の訪露
- (ア)テメル副大統領は,14日から16日にかけてロシアを訪問し,メドヴェージェフ首相と第7回伯露協力ハイレベル委員会を共催した。両国の副首脳レベルで開催される同ハイレベル委員会は1997年に設立され,二国間での主要な戦略的パートナーシップ対話メカニズムである。
- (イ)同ハイレベル委員会への出席に加え,テメル副大統領はモスクワで露要人と会談し,「World Food Moscow」マーケットにけるブラジル・パビリオンの開会や,伯露ビジネスフォーラムの閉会式に出席した。また,同行閣僚は委員会の会合に参加し,漁業,航空,防衛,観光,農業,交通,エネルギー,ロジスティック・インフラ,工業発展等のテーマに関し,露側の閣僚との会合を実施した。
- (ウ)メドヴェージェフ露首相は,ルーブル及びレアルによる決済の早期実現を主張し,テメール副大統領は,現地通貨での取引における問題点の克服に向けて,中央銀行に再度検討させることを約束した。両者は,政治的対話の進展についても言及し,両国は国際システムがより代表性及び効率性を高めるための改革を主張している。テメール副大統領は,露が伯の国連安保理常任理事国入りを支持したことを強調した。
(2)国連総会における気候変動に関するルセーフ大統領による演説
9月27日の国連総会において,ルセーフ伯大統領が気候変動に関する演説を行ったところ,概要は以下のとおり。
- (ア)我々は,気候変動枠組条約を強化すべきである。我々の義務は,共通ではあるが差異ある責任の原則に則った,野心的なものでなければならない。
- (イ)再生可能なエネルギー源の多様化を続けてきたことにより,伯エネルギー・マトリックスは,世界で最もクリーンなものの一つとなっている。低炭素農業に力を入れており,アマゾンの森林伐採を82%減らすことに成功した。伯が2025年までに温室効果ガスの排出を37%削減(2005年比)することを宣言する。2030年の目標は,43%の削減である。
- (ウ)土地利用及び農牧業に関し,2030年までに,(1)不法伐採ゼロ化,(2)1200万ヘクタール相当の森林回復及び植林,(3)荒地化した牧草地1500万ヘクタールの回復,(4)農地・牧草地・森林500万ヘクタールの統合,を実現しようとしている。
- (エ)エネルギー分野に関する目標は,(1)再生可能エネルギーがエネルギー・マトリックスに占める割合を45%にする,(2)水力発電が発電量全体に占める割合を66%にする,(3)再生可能エネルギー(風力,太陽光及びバイオマス)が発電量全体に占める割合を23%にする,(4)電力効率を約10%向上させる,(5)エタノール及び他のサトウキビ由来のエネルギーがエネルギー・マトリックスに占める割合を16%にする,の5つである。
- (オ)伯は,排出量削減目標の絶対値を掲げる,数少ない途上国の一つであり,伯の目標は,先進国のそれと比べても勝るとも劣らないものとなっている。我々は,気候変動対策における南南協力が重要と考える。
(3)G4首脳会合
- (ア)9月26日,ルセーフ大統領はニューヨークで開催されたG4首脳会合に出席した。G4首脳会合の開催は11年振りであり,安保理改革に関する文書が第70回国連総会の議題に盛り込まれたことから,改革に弾みがつくものと期待されている。ルセーフ大統領は,同文書は安保理改革の議論を容易にするものであり,コンセンサス形成に向けて各国首脳に働きかけていく旨述べた。
- (イ)もっとも,この戦略が短期間で実現するとは考えられておらず,ガルシア大統領国際担当補佐官は,「安保理改革の実現は我々の子供の世代になろう。」と述べている。安保理拡大への最大の障害の一つとして,日本の常任理事国入りに対する中国の拒否がある。一部アナリストは伯のG4戦略の誤りを指摘している者もいるが,同補佐官は2004年に発足したG4を放棄するのは最早遅く,常任理事国の内,露英仏は伯への支持を表明している旨指摘している。
- (ウ)ルセーフ大統領はG4首脳会合後,世界の新たな権力関係を適切に反映した国連安保理が必要であり,既に常任理事国であるが伯同様の新興国である中露からの支持を模索すると述べた。また,安保理の抱える問題は深刻であり,70回目の国連総会は改革の議論を再開させる象徴的タイミングである旨主張した。
防衛
(1)ワギネル伯国防大臣の訪中
- (ア)伯中パートナーシップの強化のため,ワギネル国防大臣(当時)が訪中し,中国の工業地区の視察,中国軍高官との会談,第二次世界大戦の戦勝70周年記念式典(9月3日)にルセーフ大統領の代理として出席した。
- (イ)1日,ワグネル伯国防大臣は常万全(Chang Qanquan)中国国防大臣と1時間にわたり会談し,防衛分野における相互理解を深めた。常大臣からは伯との防衛交流・協力を継続させていく旨発言,ワグネル国防大臣からは中国が平和維持活動への参加に加え,両国間の兵員訓練での交流拡大を通じた相互信頼・協力関係の深化を期待している旨述べた。
- (ウ)また,Xu Dazhe国家国防科技工業局長とも会談している。同行したメナンドロ伯国防省戦略局長によれば,ワグネル大臣は学術,軍事,航空宇宙分野での交流に理解を示した他,アマゾン保護システム運用管理センター(CENSIPAM)における技術協力や,(未だ模索の段階なるも)防衛産業における新たな中国の投資についても議論された。
(2)グリペン戦闘機に関するスウェーデンとの協力
- (ア)本年10月19日より,EMBRAER社(伯航空機製造会社)及びAEL Sistemas 社の46名の専門家がスウェーデンのSAAB社に派遣され,戦闘機「新型グリペン」の開発プログラムに従事する予定。これにより,主力戦闘機購入に関する伯スウェーデンの二国間協定に係る実質的な取り組みが開始される。
- (イ)伯スウェーデン二国間協定には,伯への技術移転が認められており,技術移転プログラムの伯側責任者はEMBRAER社である。更に,同社は新型グリペン(乗員2名タイプ)を開発し,サンパウロ州ガヴィオン・ペイショット市の工場で組み立てる予定である。
- (ウ)SAAB社長のBuskhe氏は,伯専門家のスウェーデン派遣について,「この出来事は新型グリペン開発プログラムの正式な開始を意味する重要なものであり,我々は,今後,同戦闘機が伯空軍に予定通り納入されるよう全力で支援する。」と述べている。納入開始は2019年であり,最後の36機目は2024年に納入の予定である。