トピックス 2015年9月号

2015/9/24

(1)梅田大使のマットグロッソドスル州、トカンチンス州公式訪問

(2)梅田大使によるサンパウロ大学での講演

(3)アマゾナス連邦大学日本語・日本文学学科

内政(1)ジルセウ元文官長の汚職容疑逮捕(2)ルセーフ大統領の支持率低下(3)全国反政府デモの発生(4)大統領支持派によるデモの発生<(5)クーニャ下院議長の起訴

外政(1)メルケル独首相の訪伯

 

(1)梅田大使のマットグロッソドスル州、トカンチンス州公式訪問

8月1日から8月2日にかけて、梅田大使がマットグロッソドスル州を公式訪問し、アザブジャ州知事、仲里カンポグランデ日伯文化体育協会会長、日本語教育関係者らと意見交換を行った。
アザブジャ知事との会談では、梅田大使より同州での中等教育課程における日本語教育の導入、JICAが実施している「地域警察活動普及プロジェクト」の紹介、同州政府高官による日本企業向け投資セミナー開催の提案等を行った。アザブジャ知事は、同州における日系人の信頼の高さを強調したほか、梅田大使より紹介・提案があったいずれの案件も今後の実現可能性を追求していくと述べた。
また、8月14日から15日にかけて、トカンチンス州を公式訪問した。
14日は、梅田大使、同行日系企業(ブラジル味の素、ブラジル豊田通商、ブラジルNHフーズ)及びJICAとミランダ州知事・州政府幹部との意見交換が行われた。梅田大使は同州で1万人にのぼるとされる日系社会への州からの支援に感謝の意を表した後、州知事のサンパウロ商工会議所への訪問、日本語教育の普及、日本の交番制度の採用を期待する旨述べた。ミランダ知事は、セラード農業開発事業(PRODECER事業)をはじめとして、同州と日本は密接な関係を維持しており、今後も関係強化に努めていきたい旨述べた他、日本等に向けてより安価な農産品を輸出できるよう、日本企業からの投資呼び込みとインフラ整備を進めて行きたいと発言した。その後、同行した日本企業によるプレゼンテーションが行われ、州知事らが熱心に耳を傾けていた。同日夜には第7回トカンチンス州日本祭りに参加した。
15日は、トカンチンス州日伯文化協会関係者と意見交換を行った。ネルソン・ナカムラ会長からは、より多くの若年層を引きつけるべく会館のリフォームを検討中であることが紹介された他、ルーカス州教育部長からは同州における日本語教育の現状について説明があった。

(2)梅田大使によるサンパウロ大学での講演

8月18日、梅田大使はサンパウロ大学で開催された「日本ブラジル国際法学シンポジウム」の開会式に出席し、日伯関係に関する講演を行った。講演では、日本にとってのブラジルの重要性、刑事司法分野における協力、人的交流拡大、経済関係強化のために必要と思われる制度整備について紹介した。

(3)アマゾナス連邦大学日本語・日本文学学科

(ア)設立
アマゾナス連邦大学に日本語・日本文学科を設立する動きはは, 2009年の日本人アマゾン移住80周年アマゾナス連邦大学設立100周年を見据えた記念事業を検討する流れの中で,特に当時のナカジマ副学長をはじめ元高拓生とそれまで日本語教育を受けることができなかった高拓生子弟(アマゾン高拓会)の強い働きかけが大きな原動力となった。
2009年には,学科設立に先駆け日本語公開講座が,西部アマゾン日伯協会から日本語教師が派遣され開講するなど,当地日系社会の強い協力も同学科設立の大きな力となった。
2011年2月,アマゾナス連邦大学に西部アマゾン地域で初となる日本語・日本文学科が,ミシェリ・ブラジル初代学科長(2012年離任)と34名の学生で始まった。
現在,日本語・日本文学科は毎年,30名(定員)が入学し,現在は教員5名と学生約100名が同学科で学び,今年は2011年に入学した一期生から数名の学生が卒業する見込み。
 
(イ)国際交流
明年には,同学科が中心となり,アマゾナス連邦大学と金沢大学及び鹿児島大学との間でそれぞれ相互留学生交換協定を締結される予定。アマゾナス連邦大学が日本の大学と交換留学プログラムを締結するのは初めてのことであり,将来は,人文科学分野だけではなく,より幅広い分野での学術交流が期待されている。
また,アマゾナス州には石川県及び鹿児島県出身の移住者が多いことから,本プログラムは現地日系社会と日本の両大学を繋ぐ大きな架け橋となることも期待されている。現在,各県人会では交換留学プログラムへの具体的な協力(留学生のホームステイ受け入れ等)も検討されている。
(ウ)地域貢献
アマゾナス連邦大学では地域への貢献が重要視されており,学科設立準備段階の2009年から開講している同大学日本語公開講座には,これまで約300名のマナウス市民が受講している。
開講当初は,外部から講師を招いて授業が行われていたが,今日では日本語・日本文学科の学生が日本語を教えている。

内政

(1)ジルセウ元文官長の汚職容疑逮捕

  1. 8月3日,メンサロン汚職事件の罪で自宅収監状態にあったジルセウ元文官長が、ペトロブラスの汚職事件に係る資金洗浄、収賄等の容疑で連邦警察により逮捕された。
  2. 連邦検察庁及び連邦警察は、ジルセウ氏がルーラ政権下の文官長時代にペトロブラスの汚職スキーム確立の中心的役割を果たし、メンサロン汚職事件による2005年の文官長辞任後も,同社より賄賂を受け取り続けていたと見ている。
  3. 今次第17フェーズでは、ジルセウ元文官長とともに「JDコンサルタント社」の経営者であった同元文官長の兄弟や元補佐官など計8名が逮捕された。同社はジルセウ氏の文官長辞任後に設立され、同氏は実態のないコンサルタント業務の対価として計3,900万レアル(約14億円)の賄賂を受け取っていたとされる。

(2)ルセーフ大統領支持率の低下

  1. 8月6日,当地主要メディアにダタ・フォーリャ社によるルセーフ政権支持率の最新の調査結果が掲載された。同調査によれば,ルセーフ政権を前向きに評価する回答は8%にまで下落し,1990年にダタ・フォーリャ社が政権支持率に関する調査を開始して以来,最低の数字となっている。
  2. 政府を「悪い又は最悪」と評価する回答の率は71%(前回:65%)となり,第一期ルセーフ政権発足の2011年以降,最悪の数字となった。かつて,汚職で弾劾・失職となったフェルナンド・コロール大統領が,弾劾前の1992年9月に受けた68%という数字を超えるものとなっている。
  3. 有権者の66%が,連邦議会が大統領の弾劾手続を行うことに賛意を示している点も注目されているが,回答者の53%が大統領は弾劾には至らないとの見解を示している。

(3)全国反政府デモの発生

  1. 8月16日、本年3回目となる全国的な反政府デモが発生し、全26州及びブラジリア連邦区の計205都市において、市民団体や野党がSNS等を通じ呼び掛けていた反政府デモが実施された。実施都市数は本年3月15日のデモ(252都市)、4月12日のデモ(224都市)を下回った。
  2. 各地とも大規模な暴力事件や破壊行為等は確認されず、デモ行進は全体的に平和裏に行われた(極少数の市民同士の小競り合いや喧嘩等の事案が見られた程度)。警官との衝突も発生せず、催涙弾等が用いられる場面もなかった。
  3. 財政緊縮による国民生活の窮状を訴えつつ、ペトロブラス汚職事件への批判を最大の主題とした前回までのトーンから変化が見られ、今次デモでは、ルセーフ大統領の弾劾を即時行えとの主張が多く見られた(「Impeachment ja(即弾劾)」と記した大型横断幕やプラカードが複数の都市で掲げられた)。また,同事件の裁判で中心的役割を担っているモロ連邦裁判事を賞賛しつつ、ルーラ前大統領の刑事責任を追及する主張が全国で多数見られるなど、PT指導者への批判が一層明確になった。
  4. 今次デモの総参加者数は連邦警察発表では87万9千人、主催者発表では200万人。本年3月15日のデモの総参加者は240万人(主催者発表:300万人)、4月12日のデモは70万1,000人(同150万人)であったところ、今次デモは4月のデモの規模は上回ったが、3月のデモには及ばなかった。
  5. 今次デモでは、これまで関与に慎重であった最大野党PSDBが、テレビ等で事前に市民に参加を呼び掛ける等初めて公式に支援した。ネーヴェス上院議員は、ベロオリゾンテでのデモに約30分参加し、PTの政治家による汚職等を批判する短い演説を行ったが、ルセーフ大統領の弾劾には触れなかった。

(4)大統領支持派によるデモの発生

  1. 8月20日、25州及び連邦区においてルセーフ大統領支持派によるデモが行われた。各地とも大規模な暴力事件や破壊行為等は確認されず、デモ行進は全体的に平和裏に行われた。
  2. 今回のデモは,PTの支持基盤である労働者統一本部(CUT)、家無し労働者運動(MTST)、全国学生同盟(UNE)等を中心とする労組、市民・学生団体の呼び掛けにより行われた。月収が2最低賃金(最低賃金2ヵ月分)までの参加者が全体の24%(16日の反政府デモは6%)、20最低賃金以上の富裕層は5%(同17%)であった。参加者の6割はPT支持者であり、有色人種の割合は16日の反政府デモが20%であったのに対し35%となった。
  3. 今回のデモでは,ルセーフ大統領支持、大統領の弾劾反対を訴えつつも、教育関連予算の削減や労働者の権利剥奪につながりかねないとして、政府が進める財政調整を批判する主張が多数見られた。ルセーフ大統領に対し、政府支出の削減に取り組むレヴィ財務大臣の更迭を求めるシュプレヒコールをあげるグループも見られた。また,大統領弾劾を目指してきたクーニャ下院議長(PMDB)の汚職を糾弾する声も多数聞かれた。
  4. なお,今回の参加者の規模は16日の反政府デモの約12分の1にとどまり、特段の混乱は見られなかった。大統領の弾劾には反対だが、政府が進める緊縮財政は支持しないとの主張が目立った。今次デモの総参加者数は、連邦警察発表では7万3千人、主催者発表では19万人となっている。

(5)クーニャ下院議長の起訴

  1. 8月20日,連邦検察庁は,クーニャ下院議長をペトロブラス汚職事件に関与していたとして起訴した。ペトロブラス汚職事件において,検察側に事件解明のための供述を提供することにより減刑を交渉する司法取引に応じているトーヨー・セタル社のカマルゴ元コンサルタントが,クーニャ下院議長から5百万レアルの賄賂を要求されたと証言し,この資金が同社及びペトロブラス事業を通じて得られた不正資金についての議会での追及をかわすための工作に用いられたとも言われている。
  2. 議会での工作を幇助したとの疑いで,クーニャ議長と同じリオデジャネイロ州選出であったソランジェ・アルメイダ元下院議員も同時に起訴されている。さらに,コロール上院議員(元大統領)も,ペトロブラス汚職事件関与の疑いで起訴された。
  3. 本件起訴は,21日には正式に最高裁(STF)に送達された状態となる。その後,最高裁が起訴内容を審理し,受理するか否かを,11名の判事の間で協議の上,決定する。過半数以上の判事の賛成があれば受理され,公判手続きが開始される(受理されない場合,不起訴)。仮に有罪が確定した場合,最高裁は,直接議員資格につき判断を下すことはできないが,連邦下院に対し,有罪判決とその趣旨を公式伝達する。その結果,下院において,当該議員の議員資格剥奪を決議することも可能(全議員の過半数の賛成票が必要)。

外交

(1)メルケル独首相の訪伯

(1)8月19日から20日にかけて,メルケル独首相が伯を公式訪問した。
(ア)日程
19日:ルセーフ大統領主催ワーキングディナー
20日:伯進出の独企業代表者との懇談,歓迎式典,少人数会合,拡大会合,
共同記者会見,午餐会,両国の各省庁間で合計24の会合
(イ)同行者
閣僚7名(シュタインマイヤー外相,シュミット食料・農業大臣,グレーエ保健大臣,ドブリント交通・デジタルインフラ大臣,ヘンドリクス環境大臣,ミュラー経済協力・開発大臣,グリュッタース文化メディア大臣),副大臣級5名(経済エネルギー省,国防省,教育・研究省,財務省,労働・社会省)。(民間企業関係者の同行は無し。)
(ウ)主な成果物
第一回伯独ハイレベル政府間協議における共同声明
気候変動に関する共同声明
都市開発に関する共同意図声明
持続的発展のための伯独協力における交渉の骨子
環境,教育,保健,イノベーション,薬品認可等の分野における合意文書
(2)ルセーフ大統領は,ロジスティクス・インフラ計画及び風力発電投資計画への独企業の参加を呼びかけるとともに,持続可能なエネルギーを重視している旨表明した。また,湾港,教育,科学技術,イノベーション分野を中心に,投資やジョイント・ベンチャーの拡大等,両国企業の関係強化を促進していく旨述べた。
(3)メルケル首相は,首脳会談においてメルコスール・EU間のFTA交渉を更に加速化させていく旨述べた。双方は本年後半にもリクエスト・オファー交換を行うものとみられている。メルケル首相は,伯の南米における指導力及び国際社会における主要な役割を強調し,近年の伯の力強い経済・社会的発展に言及。更に,海運・航空分野での二重課税防止協定を締結したことや,風力発電や交通・湾港・送電インフラ投資等での独側の関心を強調した。教育,保健,農業等の分野で合意文書が交わされている。なお,次回のハイレベル政府間協議は2017年に独で開催予定。
(4)両国は環境保全・規制に関する合意文書を結んだ。メルケル首相は,両国は野心的なアジェンダを有し,伯は2030年までに森林伐採根絶の目標を有していることに言及。また,独は気候問題及び脱炭素化のための5億ユーロ規模の基金創設,及び今世紀末までの工業の脱炭素化の目標に言及している。
(5)ルセーフ大統領は,ブラジルがドイツも含むG4の一員として取り組んでいる国連安保理改革の重要性を強く主張し,メルケル首相もこれに同意した。両国首脳は,国連創設70周年を迎える本年,国連安保理をより代表性のあるものにするための効果的な交渉を早期に開始し,9月28日の国連総会前に会合を行う旨表明した。