最近の経済情勢 2019年12月号

令和元年12月13日

1.経済情勢等(11月発表の経済指標)

(1)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に関して,11月22日付公表資料によると,GDP成長率予測については,2019年は0.99%で先週から0.07%上昇,2020年は2.20%で先週から0.03%上昇。インフレ率予測については,2019年は3.46%で先週から0.13%上昇,2020年は3.60%で先週から変わらず。

(2)9月の鉱工業生産指数(季節調整済み)は,前月比0.3%,前年同月比1.1%となった(12ヶ月累積は▲1.4%)。アパレルや自動車が指数上昇を牽引,消費財が回復傾向となっている。

(3)9月の小売売上高は,前月比+0.7%,前年同月比+2.1%を記録した(12ヶ月累積は1.5%)。家具・家電が上昇したことで成長ペースが加速した。

(4)全国の失業率(8~10月の移動平均)は11.6%となり,7~9月の移動平均値(11.8%)から0.2%低下,前年同期比では0.3%低下した。

(5)10月の貿易収支は,輸出額は195.76億ドル(前年同月比▲10.56%,前月比▲3.52%),輸入額は170.29億ドル(前年同月比+5.73%,前月比+3.23%)で,差引き25.47億ドル(前年同月比▲56.02%,前月比▲32.85%)となった。1月から11月の累積値は▲410億ドルとなった。

(6)10月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で+0.10%となり,前月の▲0.04%から0.15%下落した。12ヶ月の累計では2.54%となり9月発表の2.89%から低下した。

 

2.経済政策等

(1)5日,ボルソナーロ大統領はエレトロブラス社の民営化法案に署名,同法案は議会に提出され,政府の資本参加は運営管理権を失う40%となった。アルブケルケ鉱山エネルギー大臣は,民営化は議会の運営次第だが2020年後半に行われることを期待すると述べた。

(2)6~7日,ブラジル沿岸の深海部に存在する岩塩層下(プレソルト)大規模油田の開発権をめぐる入札が実施された。全鉱区のうち一部しか落札されず,伯政府は,両日の入札で最大1,423億レアルの収入を見込んでいたが、約750億レアルと半分にとどまった。

(3)12日,上院議会は年金制度改革に係る修正憲法を公布した。政府は改革により10年間で8,000億レアルの財政支出削減効果があると見込んでいる。

(4)14日,ブラジリアで第11回BRICS首脳会合が行われ,多国間貿易システムの重要性を強調し,新開発銀行(NDB)の加盟国拡大に言及する共同声明が採択された。

(5)ボルソナーロ大統領は,18日,ファーウェイ・ブラジル代表事務所CEOのウェイ・ヤオ氏と面談後,CEOからブラジルでの第5世代移動体通信システム(5G)の整備に参画したい意向を伝えられたと述べた。

(6)政府は,金融取引税を含まない税制改革案を11月中に国会に提出するとの見方があったが,提出されなかった。税制改革案は4段階に分けられており,第1段階として社会統合基金(PIS)及び社会保障賦課金(Cofins)の税率を統合,第2段階では工業製品税(IPI)を見直すとされている。

 

3.中銀の金融政策等

     金融政策委員会が10月29日及び30日に開催され,政策金利(Selic)を0.50%引き下げ,年率5.00%とすることを決定し,政策金利は過去最低の水準となった。次回会合は,12月10日及び11日。

 

4.為替市場

(1)11月の為替レートは,1ドル=3.96~4.27レアル台で推移。

(2)月の前半は,4.00レアル台を挟んで始まったが,過去最大規模の油田入札が不調に終わったことや,ルーラ元大統領の釈放,米中貿易交渉に不安があることを要因にレアル安となった。

(3)月の後半,ゲデス経済相が米ドルとレアルの均衡を保つ必要があるとの見解を示したことで,8月の為替介入時の水準である4.20レアルを超えてレアル安が進行,史上最安値を更新して4.27台となった。

 

5.株式市場

(1)11月のブラジルの株式相場(Ibovespa)は,108,000ポイントを挟んだ展開。

(2)月の前半は,油田入札の不調に伴い下落する局面があったが,米国の中国に対する新たな関税発動の延期可能性の報道を受けて,貿易合意への期待が高まり,108,000ポイント台後半まで上昇した。

(3)月の後半は,レアルが史上最安値を更新したことで,株式市場の不安定さが増大したが,108,000レアル台付近で推移して,終値では107,983ポイントとなった。