最近の経済情勢 2017年12月号

平成29年12月11日
ブラジル・マクロ経済情勢

(1)経済情勢等(11月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場

 

(1)経済情勢等(11月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し,11月24日時点では,2017年のGDP成長率は0.73%で5週連続の横ばい,2018年のGDP成長率は2.58%とされた。また,2017年のインフレ率見通しは3.06%で先週から下方修正,2018年のインフレ率見通しは4.02%とされた。

(イ)ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した2017年第3四半期(7~9月)のGDP成長率は,前年同期比+1.4%で2四半期連続のプラスを記録したほか,前期比でも+0.1%で3四半期連続のプラスを記録した。

(ウ)10月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.42%となり,前月の0.16%から上昇した。また,過去12か月累計では2.70%となり,政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の下限値を更に下回る水準で推移している。

(エ)9月の鉱工業生産指数は,前年同月比+2.6%で5か月連続でプラスを記録したほか,前月比では+0.2%となり,3か月ぶりにプラスに転じた。

(オ)10月の貿易収支は,輸出額は188.74億ドル(前年同月比+37.6%,前月比+1.2%),輸入額は136.76億ドル(前年同月比+20.2%,前月比+1.4%)で,差引き51.98億ドル(前年同月比+122.3%,前月比+0.5%)となり,32か月連続で貿易黒字を記録した。

(カ)9月の小売売上高は,前年同月比+6.4%で6か月連続でプラスを記録したほか,前月比では+0.5%となり,3か月ぶりにプラスに転じた。

(キ)全国の失業率(8~10月の移動平均)は12.2%となり,前回の公表値(7~9月の移動平均)から0.2%下落して7か月連続で改善した。

 

(2)経済政策等

(ア)11月6日,テメル大統領は,与党指導部との会談において,年金制度改革は個人的な目標ではない,年金制度改革なしには雇用の創出に貢献できず,社会保障関連の赤字をカバーしうる政府の投資を妨げるであろうと発言した。

(イ)11月8日,メイレレス財務大臣は,テメル大統領及び与党指導部との会談の後に報道陣のインタビューに応じ,年金制度改革を年内に承認することにより,2018年以降の経済成長と財政の安定化に寄与すると発言した。

(ウ)11月22日,ブラジル連邦議会下院は,年金制度改革に関する憲法改正案について,民間企業の被雇用者の最低納付期間を25年から15年に短縮する等の修正案を発表した。

 

(3)中銀の金融政策等

     11月は政策金利(Selic)を決定する中銀の金融政策委員会(Copom)は開催されていない。次回会合は,12月5・6日に開催。

 

(4)為替市場

(ア)11月のドル・レアル為替相場は,1ドル3.2~3.3レアル台の比較的狭いレンジで推移したものの,年金制度改革の採決をめぐって神経質な展開となった。

(イ)月の前半は,原油価格の上昇を受けてレアルが買われる場面もあったものの,その後は年金制度改革の議会通過をめぐる情勢に不透明感が広がったことに加え,原油価格の反落を受けてレアルは一時1ドル=3.3レアル台まで下落した。

(ウ)月の後半は,米国のロシアゲート疑惑関連報道等を受けてドルが売られたことに加え,年金制度改革の年内の採決に楽観的な見方が広がったことを受けて,レアルは堅調に推移した。その後は,月末にかけて年金制度改革の採決に不透明感が高まったことで,レアルは再び下落した。月末は1ドル=3.2681レアルで取引を終えた(前月比0.1%のドル安・レアル高)。

 

(5)株式市場

(ア)11月の伯の株式相場(Ibovespa指数)は,為替市場と同様に,年金制度改革の採決をめぐって神経質な展開となった。

(イ)月の前半は,テメル大統領が年金制度改革について年内の議会通過ができない可能性を示唆したことで大きく下落し,その後も原油価格の反落を受けて資源銘柄を中心に売られる展開となり,株価指数は一時70,000ポイント台まで大幅に下落した。

(ウ)月の後半は,消費関連銘柄等で買戻しの動きが出たことに加え,年金制度改革の年内の採決に楽観的な見方が広がったことを受けて,株価指数は74,000ポイント台まで再び上昇に転じた。その後は,月末にかけて年金制度改革の採決に不透明感が高まったことで,株価指数は反落した。月末の株価指数は71,970.99ポイントとなり,前月比▲3.1%の下落となった。