最近の経済情勢 2016年11月号

平成28年11月14日

(1)経済情勢等(10月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,10月28日時点では,本年の経済成長率は▲3.30%で4週連続の下方修正,明年の経済成長率は1.21%とされた。また,本年のインフレ率見通しは6.88%で7週連続の下方修正,明年のインフレ率見通しは5.00%とされた。

(イ)9月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.08%となり,前月の0.44%から大きく下落した。食料・飲料費(▲0.29%)が一転して大幅なマイナスを記録したことが寄与した。また,本年当初からの累計で5.51%,12か月累計では8.48%の上昇となり,依然として政府のインフレ目標の上限である6.5%を上回る水準となっている。

(ウ)8月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲5.2%で30か月連続のマイナス,前月比でも▲3.8%となり,4か月ぶりにマイナスに転じた。

(エ)9月の貿易収支は,輸出額は158.02億ドル(前年同月比▲2.1%,前月比▲7.0%),輸入額は119.87億ドル(前年同月比▲9.2%,前月比▲6.7%)で,差し引き38.15億ドル(前年同月比+29.5%,前月比▲7.8%)で19か月連続の貿易黒字を記録した。

(オ)8月の小売売上高は,前年同月比▲5.5%で17か月連続のマイナス,前月比でも▲0.6%となり,2か月連続のマイナスを記録した。

(カ)全国の失業率(7~9月の移動平均)は11.8%となり,前回の公表値(6~8月の移動平均)から横ばいであった。
 

(2)経済政策等

(ア)10月10日,連邦議会下院は,本会議において歳出に上限を設定する憲法改正案について1回目の票決を行い,賛成票,反対111票の多数で可決した。

(イ)10月16日,テメル大統領は,ゴア(インド)で開催された第8回BRICS首脳会議において,ブラジル経済は危機を乗り越え,軌道に乗りつつあり,2017年のブラジル経済の予測は改善されていると述べた。

(ウ)10月25日,連邦議会下院は,本会議において歳出に上限を設定する憲法改正案について2回目の票決を行い,賛成359票,反対116票の多数で可決し,上院に送付されることとなった。
 

(3)中銀の金融政策等

     10月19日,中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を0.25%引き下げて14.00%とする旨を全会一致で決定した。なお,政策金利の据え置き以外の決定は10会合ぶり,政策金利の引下げは4年ぶりとなった。
 

(4)為替市場

(ア)10月のドル・レアル為替相場は,1ドル=3.1~3.2レアル台の比較的狭いレンジで徐々にドル安・レアル高が進行する展開となった。

(イ)月の前半は,3日に行われた第1回統一地方選で連立与党が勝利したことに加え,下院で歳出に上限を設ける憲法改正案が圧倒的な賛成票を得て可決されたこと等が好感され,1ドル=3.2レアル前後までレアル高が進行した。

(ウ)月の後半は,中銀が市場の予想どおり利下げを決定したものの,声明文の内容がタカ派との見方が強まったことに加え,歳出の上限を設定する憲法改正案への期待と国内実需による自国通貨買い等の要因でレアル高が進行したものの,月末にかけて予想比で強い米国のGDP等を受けてやや反落した。月末は1ドル=3.1936レアルで取引を終えた(前月比2.1%のドル安・レアル高)。
 

(5)株式市場

(ア)10月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,ほぼ一貫して大きく上昇する値動きとなった。

(イ)月の前半は,通貨レアルと同様に統一地方選における連立与党の勝利に加え,原油高を受けてエネルギー関連株を中心に株価は上昇し,60,000ポイント台を回復した。

(ウ)月の後半は,テメル大統領の景気回復に自信を示す発言が好感されたことに加え, 主要輸出産品である鉄鉱石の価格上昇や大手金融機関の好決算等が相次いだことから,株価の上昇トレンドが継続した。月末の株価は64,925ポイントとなり,前月比+11.2%の大幅な上昇となった。