最近の経済情勢 2015年11月号

平成27年11月17日

(1)経済情勢等(10月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,10月30日時点では,本年の経済成長はマイナス3.05%で16週連続で下方修正,明年の経済成長はマイナス1.51%で4週連続で下方修正となった。また,本年のインフレ率見通しは9.91%,明年のインフレ率見通しは6.29%とされた。
(イ)9月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.54%となり,前月比0.36%の上昇となった。特に,居住費が1.3%増となったことが寄与した。本年当初からの累計で7.64%,12か月累計で9.49%の上昇となり,本年当初からの累計でも政府のインフレ目標の上限である6.5%を既に上回っている。
(ウ)8月の鉱工業生産指数は,前年同月比マイナス9.0%で18か月連続のマイナス,前月比でもマイナス1.2%となった。また,9月の輸出額は161.5億ドル(前年同月比マイナス17.7%,前月比+4.3%),輸入額は132.0億ドル(前年同月比マイナス35.8%,前月比+3.2%)で,差し引き29.4億ドルとなり7か月連続で貿易黒字を記録した。
(エ)8月の小売売上高は,前年同月比マイナス6.9%となり,前月比でもマイナス0.9%で7か月連続のマイナスを記録。
(オ)全国の失業率(6~8月の移動平均)は8.7%となり,前月の公表値(5~7月の移動平均)から0.1%上昇して8か月連続して悪化した。また,国内主要6都市における9月の失業率は7.6%となり,前月から横ばいであった。

(2)経済政策等

(ア)10月5日,連邦政府の省庁再編及び関係人事が官報公示され,経済チームを構成するレヴィ財務大臣,バルボーザ企画予算大臣及びトンビーニ中銀総裁(当館注:中銀総裁は閣僚ポスト扱い)はいずれも留任となった。また,財務省及び企画予算省の組織について,省庁再編の対象とはならなかった。
(イ)10月15日,大手格付会社であるFitch Rating社がブラジルの格付けを1段階引下げ,投資適格級の中で最も低い水準とされた。また,格付けの見通しについては,「ネガティブ」とされた。
(ウ)10月27日,財務省及び企画予算省は,2015年度の基礎的財政収支の目標を変更するため,2015年度LDO(予算編成方針法)の修正案を議会に提出した。これにより,政府全体の基礎的財政収支の目標は,これまでの87億レアル(対GDP比0.15%)の黒字から,489億レアル(対GDP比マイナス0.85%)の赤字に引き下げられた。

(3)中銀の金融政策等

10月21日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,前回会合に引き続き,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨全会一致で決定した。

(4)為替市場

(ア)10月のドル・レアル為替相場は,前月までに急速に進行したレアル安・ドル高の一方的な流れが一服し,1ドル=3.9レアル前後で推移した。
(イ)月の前半は,米国の雇用統計が予想を大幅に下回ったことを受けて年内利上げ観測が後退し,リスクオンの動きが高まってレアル高が進行し,一時1ドル=3.7レアル台まで戻した。その後は,軟調な中国の貿易統計や米国の経済指標等を受けて,1ドル=3.8レアル台で一進一退を繰り返す展開となった。
(ウ)月の後半は,レヴィ財務大臣辞任の噂に端を発した政情不安からレアル安が進行し,1ドル=3.9レアル前後で推移した。その後も,欧米の金融政策の見通しや各種指標を受けて小幅な動きとなり,月末は1ドル=3.8558レアルで取引を終えた(前月比2.3%のレアル高・ドル安)。

(5)株式市場

(ア)10月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,上旬に大幅に上昇したものの,中旬から下旬にかけて一転して大幅に下落して値を戻す展開となった。
(イ)上旬は,米国の年内利上げ観測の後退によるリスクオンの流れで株価は続伸し,9日には49,000ポイント台まで回復した。
(ウ)中旬には,中国の輸入額が予想以上に落ち込んだこと等を受けて株価は反落し,47,000ポイント台で小幅な値動きとなった。
(エ)下旬に入り,米国の年内利上げ観測が再び高まったことや,大手企業の決算が軒並み不調だったこと等を受けて株価は続落し,月末の株価は45,869ポイントとなり,前月比1.8%の上昇となった。

(6)その他参考事項(外国人及び外国企業による農地取得規制緩和の動き)

(ア)連邦議会下院において,外国人及び外国企業によるブラジルの農地取得規制に関して,規制を緩和する法案が議論されている。
(イ)各紙報道によると,連邦総弁護庁(AGU),大統領府文官庁,国家植民農地改革院(INCRA)及び法務省は,国家の主権が侵害される,アマゾンにおける不当な伐採を引き起こす,ブラジルの土地の価格を高騰させ,農地改革を目的とした連邦政府による土地の取得が妨害される等の理由で,法案に反対の立場。
(ウ)一方で,アブレウ農務大臣は,規制の緩和には賛成しているものの,最大で10万~20万ヘクタールとするといったような,一定の上限は設けるべきとの立場。