最近の経済情勢 2019年10月号
令和元年10月8日
1.経済情勢等(9月発表の経済指標)
(1)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に関して,9月27日公表資料によると,GDP成長率予測については,2019年は0.87%で先週と変わらず,2020 年は2.00%で先週から変わらず。インフレ率予測については,2019年は3.43%で先週3.44%から0.01%減少,2020年は3.79%で先週から0.01%減少した。(2)7月の鉱工業生産指数(季節調整済み)は,前月比▲0.3%,前年同月比▲2.5%となり,3年連続のマイナス(12ヶ月累積は▲1.3%)。前月比では26セクターのうち11セクターで生産が減少。
(3)7月の小売売上高は,前月比+1.0%,前年同月比+4.3%を記録,6月分について前月比+0.1%から+0.5%に上方修正された。
(4)全国の失業率(6~8月の移動平均)は11.8%となり,3~5月の移動平均値(12.3%)から0.5%低下した。
(5)8月の貿易収支は,輸出額は187.51億ドル(前年同月比▲13.00%,前月比▲6.19%),輸入額は155.69億ドル(前年同月比▲17.09%,前月比▲12.34%)で,差引き31.82億ドル(前年同月比▲14.68%,前月比+42.75%)となり,54か月連続で貿易黒字を記録。1月から8月の累積値は▲334億ドル(前年同月比▲6.2億ドル)となった。
(6)8月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で+0.11%となり,前月の+0.19%から0.08%下落した。12ヶ月の累計では3.43%,政府のインフレ目標(4.25%±1.5%)内の水準で推移している。
2.経済政策等
(1)9月2日,連邦会計検査院(TCU)は,2018年度に実施した社会保障院(INCC)及びボルサファミリア,労災保険,禁漁期間手当などに係る調査結果について,昨年の社会補助関連の不正支給総額は22億5,000万レアルに達すると指摘した。(2)9月4日,上院憲法司法委員会(CCJ)は,年金制度改革法案を承認した。今後,上院本会議で2回の審議・承認が予定されるが,アルコルンブレ上院議長は,上院修正案を再承認の必要がない基本法案と,地方公務員(州・市)の年金制度を含む上院修正案に分離して,並行審議することを予定。
(3)9月6日,ゲデス経済相は,社会保障院(INSS)の歳出拡大の影響で,歳出上限法の緩和政策の検討について,前年度予算にインフレ率をかけた以上の拡大はできないとして法改正の中止を決定した。ゲデス経済相は,2020年予算の96%を占める義務的支出を少なくとも、最低100億レアル削減することによる,裁量的支出枠の拡大を検討している。
(4)9月11日,政府のマクロ財政報告書(Boletim Macro Fiscal)は、2019年のGDP成長率を,FGTS預金や凍結預金引出の効果により,前回の0.81%から0.84%に上方修正した。
(5)9月24日,議会上院は年金制度改革法案の1回目の採決を予定していたが,10月以降に先送りされることが決定した。
(6)9月26日,中銀は第3四半期のインフレ報告書を公表し,本年度のGDP成長率を0.9%,来年度を1.8%と予想した。報告書では,政策金利について更に引き下げの余地があると指摘された。
3.中銀の金融政策等
金融政策委員会は9月17日及び18日,政策金利(Selic)を0.50%引き下げ,年率5.50%と過去最低の水準とすることを決定した。次回会合は,10月29日及び30日。4.為替市場
(1)9月の為替レートは,1ドル=3.98~4.19レアル台で推移。(2)月の前半は,4.15レアル台で始まったが,香港やイタリア,英国の政治的リスクが前月より和らいだことでリスクオフの見方が後退してレアル高が進行,約一ヶ月ぶりに4.00レアル/ドルを下回った。
(3)月の後半は,伯中銀が利下げを行い,年内の追加利下げを示唆したことでレアル安が進行,4.10レアル/ドル台へと上昇した。その後,英国で合意なきEU離脱を阻止する法案が成立,米国の中国に対する関税措置の発動が延期されたことを背景に,レアル安が加速し,終値は4.1551レアル/ドル。
5.株式市場
(1)9月のブラジルの株式相場(Ibovespa)は,安定的に105,000ポイント近くへ上昇。(2)月の前半は,海外でのリスク要因が後退したことから,101,000ポイント台から徐々に上昇して8月下旬に下落した分を回復した。
(3)月の後半は,米国の中国からの輸入品に対する追加関税を10月1日から10月15日に延期され,FRB・ECBなど主要国にて金融緩和策が発表され,伯中銀も利下げを発表したことを受けて,株式市場はポジティブに反応し,105,000ポイントを回復した。