最近の経済情勢 2016年9月号

平成28年9月28日

(1)経済情勢等(8月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,8月26日時点では,本年の経済成長率は▲3.16%で先週から上方修正,明年の経済成長率は1.23%とされた。また,本年のインフレ率見通しは7.34%で先週から上方修正,明年のインフレ率見通しは5.14%とされた。

(イ)7月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.52%となり,前月の0.35%から上昇した。豆類,牛乳の大幅な値上がり等により,食料・飲料費が+1.32%と再び上昇したことが寄与した。また,本年当初からの累計で4.96%,12か月累計で8.74%の上昇となり,依然として政府のインフレ目標の上限である6.5%を上回る水準となっている。

(ウ)6月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲6.0%で28か月連続のマイナス,前月比では+1.1%となり,2か月ぶりにプラスを記録した。

(エ)7月の貿易収支は,輸出額は163.31億ドル(前年同月比▲10.6%,前月比▲2.5%),輸入額は117.52億ドル(前年同月比▲27.2%,前月比▲8.0%)で,差し引き45.78億ドル(前年同月比+91.8%,前月比+15.3%)で17か月連続の貿易黒字を記録した。

(オ)6月の小売売上高は,前年同月比▲5.3%で15か月連続のマイナス,前月比では+0.1%となり,2か月ぶりにプラスに転じた。

(カ)全国の失業率(5~7月の移動平均)は11.6%となり,前回の公表値(4~6月の移動平均)から0.3%上昇して2か月連続で悪化した。
 

(2)経済政策等

(ア)8月11日,メイレレス財務大臣は,歳出の伸び率の上限を前年のインフレ率とする憲法改正案の承認プロセスについて,議会においてかなりの進展があり,本年10月末までに下院を通過することは可能だと語った。

(イ)8月12日,メイレレス財務大臣は,ブラジル経済の主要な推進力は国内市場であり,不安的な為替レートは経済回復につながらず,ドルの価値や輸出額に依存する必要はないと語った。

(ウ)8月17日,伯財務省は,各種の財政関連指標及び経済指標の改善を受けて,2017年のGDP成長率見通しを,これまでの1.2%から1.6%に上方修正すると発表した。

(エ)8月25日,政府は,現職のキム世銀総裁の再選を支持する旨表明した。

(オ)8月31日,伯財務省及び企画予算省は,2017年度年間予算法(LOA)案を議会に提出した。予算総額は,1兆3,164億レアル(約42兆1,000億円)。そのうち,裁量的歳出は,2016年度見通しの2,522億レアル(約8兆700億円)から,2,492億レアル(約7兆9,800億円)に削減する一方で,義務的歳出は9,883億レアル(約31兆6,300億円)から1兆670億レアル(約34兆1,400億円)に増加する。メイレレス財務大臣は,現時点のデータによれば増税する必要はないため,本法案においても増税を見込んでいないと語った。
 

(3)中銀の金融政策等

     8月31日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨を全会一致で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は9会合連続となった。
 

(4)為替市場

(ア)8月のドル・レアル為替相場は,1ドル=3.1~3.2レアル台の狭いレンジで安定的に推移した。

(イ)月の前半は,上院において弾劾手続が相次いで進展したこと等が好感され,1ドル=3.1レアル台までレアル高が進行した。

(ウ)月の後半は,NY連銀総裁による米国の早期利上げを示唆する発言等への警戒感からレアル売りが入ったことに加え,上院で予算関連法案の審議が先送りされたことが嫌気され,1ドル=3.2レアル台まで下落した。その後は,月末の弾劾審議の結審を控えて方向感のない展開が続き,為替相場は1ドル=3.2レアル台の狭いレンジで推移した。月末は1ドル=3.2267レアルで取引を終えた(前月比▲0.7%のドル安・レアル高)。
 

(5)株式市場

(ア)8月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,月の前半に上院において弾劾手続が進展したこと等が好感されて上昇した一方,月の後半は資源価格の下落や米国の早期利上げに対する警戒感等から下落する値動きとなった。

(イ)月の前半は,原油価格の上昇や主要企業の好決算に加え,上院において弾劾手続が順調に進展したことが好感され,15日に株価は59,000ポイント台まで上昇した。

(ウ)月の後半は,米国の早期利上げに対する警戒感が高まったことに加え,それまで堅調に推移していた資源価格が反落したことが嫌気され,株価は下落した。月末の株価は57,901ポイントとなり,前月比+1.0%の小幅な上昇となった。