最近の経済情勢 2015年8月
平成27年9月15日
1.経済情勢等(7月発表の経済指標)
(1)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し、7月31日時点では、本年の経済成長はマイナス1.80%で3週連続で下方修正、明年の経済成長は0.20%で前週から据え置きとなった。一方で、本年のインフレ率見通しは9.25%に上方修正。(2)6月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.77%、本年上半期累計で6.17%、12か月累計で8.89%上昇し、政府のインフレ目標の上限である6.5%を大きく上回っている。
(3)5月の鉱工業生産指数は、前年同月比マイナス8.8%で15か月連続のマイナス。また、6月の輸出は前年同月比マイナス4.1%(前月比ではプラス17.0%)で11か月連続でマイナス、輸入は同マイナス16.6%(前月比ではプラス7.8%)で、単月ベースでは本年最大の貿易黒字額を記録。主要輸出品である鉄鉱石の輸出額が前月比マイナス49.8%、輸入品では原油の輸入額が同47.8%と大幅に下落したことが寄与(注:輸出入については、7月の統計が出たら適宜修正)。
(4)5月の小売売上高は、前年同月比マイナス4.5%となり、4か月連続で前月比でもマイナスを記録。
(5)国内主要6都市における6月の失業率は前月から0.2%上昇して6.9%となり、6か月連続で悪化。
2.経済政策等
(1)7月22日、レヴィ財務大臣とバルボーザ企画予算大臣は、本年のプライマリーバランス黒字目標を663億レアル(GDP比1.1%)から87億レアル(GDP比0.15%)に引き下げる旨発表。また、2016~2018年の黒字目標を、これまでのGDP比2.0%から、2016年は0.7%、2017年は1.3%にそれぞれ引下げ、2018年に2.0%を達成するとした。(2)7月22日、ルセーフ大統領は、連邦議会で可決された司法部門職員の給与を大幅に引き上げる法案に対して拒否権を発動した。
3.中銀の金融政策等
(1)7月20日、ボルポン中銀副総裁(国際・企業危機管理担当)は、サンパウロでの投資家との会合において、2016年には強いインフレ緩和要因が存在し、同年末までにインフレ率を目標中央値の4.5%にするとの目標は達成できるとの見通しを示した。また、同会合にて、ボルポン副総裁は、インフレの目標値への収束の目処が立つまでは、自身は利上げに投票するだろうと発言し、通貨政策委員会(Copom)における投票行動を示唆するものとして、議会で問題視された。(2)7月29日、Copomは、政策金利(Selic)を0.5%引上げ、14.25%とすることを決定した。ボルポン副総裁は、上記の発言が物議を醸している状況を考慮し、Copomへの参加を辞退した。Copomメンバーが会合への参加を辞退するのは初めて。
4.為替市場
(1)7月のドル・レアル為替相場は、月の半ばにかけて1ドル=3.1レアル台の小幅な値動きが続いたが、8日に中国株が大幅に下落したことを受けて、一時的に1ドル=3.2レアル台を記録した。(2)下旬に入り、22日に政府が財政黒字目標を引き下げたことを嫌気し、レアル安が大幅進行。さらに、27日に中国株が大幅に下落してリスクセンチメントが悪化し、28日には一時1ドル=3.40レアルを上回った。月末は1ドル=3.4242レアル(買値)で取引を終えた(前月末比10.2%のレアル安・ドル高)。
5.株式市場
(1)7月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は、断続的に下落する値動きとなった。月の当初は、商品市場 鉄鉱石等の急落を受けて株価が下落した。その後は、ギリシャ情勢の好転と中国当局による株価対策を受けて、株価は一進一退の展開が続いた。(2)月の半ば以降は、低調な経済指標及び政治的な混乱を嫌気し、株価を押し下げる要因となった。
(3)月末にかけては、政府が財政黒字目標を引き下げたことにより、国債が投資適格を失うリスクが意識されたことから、株価は継続的に下落した。さらに、中国株の大幅な下落により新興国の株価が全面的に軟調となる中、一時48,000ポイント台を記録した。月末の株価は50,865ポイントとなり、前月末比4.2%の下落となった。