最近の経済情勢 2017年7月号

平成29年8月4日
ブラジル・マクロ経済情勢

(1)経済情勢等(6月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場

 

(1)経済情勢等(6月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し、6月23日時点では、本年のGDP成長率は0.39%で3週連続の下方修正、明年のGDP成長率は2.10%とされた。また、本年のインフレ率見通しは3.48%で4週連続の下方修正、明年のインフレ率見通しは4.30%とされた。

(イ)ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した2017年第1四半期(1~3月)のGDP成長率は、前年同期比▲0.4%で12期連続のマイナス、前期比+1.0%で9期ぶりにプラスを記録した。

(ウ)5月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.31%となり、前月の0.14%から上昇した。また、過去12か月累計では3.60%となり、政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の中央値を下回る水準で推移している。

(エ)4月の鉱工業生産指数は、前年同月比▲4.5%で2か月ぶりにマイナスに転じた一方、前月比では+0.6%となり、2か月ぶりにプラスに転じた。

(オ)5月の貿易収支は、輸出額は197.92億ドル(前年同月比+12.7%、前月比+11.9%)、輸入額は121.31億ドル(前年同月比+8.9%、前月比+13.2%)で、差引き76.61億ドル(前年同月比+19.1%、前月比+10.0%)となり、27か月連続の貿易黒字を記録するとともに、単月ベースでは史上最高の黒字額を2か月ぶりに更新した。

(カ)4月の小売売上高は、前年同月比+1.9%で25か月ぶりにプラスを記録したほか、前月比でも+1.0%となり、3か月ぶりにプラスに転じた。

(キ)全国の失業率(3~5月の移動平均)は13.3%となり、前回の公表値(2~4月の移動平均)から0.3%下落して2か月連続で改善した。

 

(2)経済政策等

(ア)6月1日、テメル大統領は、2017年第1四半期のGDP成長率が前期比で1%のプラス記録したことについて、新たな投資に自信をもたらすとともに、経済回復のため政府が取り組んできた措置の重要性を強化するものだと発言した。

(イ)6月6日、連邦議会上院経済委員会は、労働法改正案の採決を行い、賛成14票、反対11票の賛成多数で可決した。

(ウ)6月20日、連邦議会上院社会問題委員会は、労働法改正案の採決を行い、賛成9票、反対10票の反対多数で否決した。

(エ)6月26日、テメル大統領は、支払手段によって異なる小売価格を認める法案の裁可にあたり、本法律は消費者に対する社会的公正をもたらすとともに、小売業に活気をもたらすものであると発言した。

(オ)6月28日、連邦議会上院憲法司法委員会は、労働法改正案の採決を行い、賛成16票、反対9票の賛成多数で可決した。

 

(3)中銀の金融政策等

(ア)6月は政策金利(Selic)を決定する中銀の金融政策委員会(Copom)は開催されていない。次回会合は、7月25・26日に開催予定。

(イ)6月22日、中銀はインフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し、2017年のGDP成長率見通しを0.5%に維持した。また、条件付インフレ予測は、2017年は3.8%、2018年は4.5%、2019年第2四半期は4.3%とした。なお、マーケットシナリオにおけるインフレ予測は、2017年は3.7%、2018年は4.4%、2019年以降は4.25%とされている。

(ウ)6月29日、国家通貨審議会(CMN)は特別会合を開催し、2019年のインフレ目標を4.25%±1.5%、2020年のインフレ目標を4.0%±1.5%に決定した。

 

(4)為替市場

(ア)6月のドル・レアル為替相場は、内政動向の不確実性が高まり、今後の改革の進展に対して悲観的な見方が広がったことで、レアルはやや軟調に推移した。

(イ)月の前半は、ルセーフ・テメル正副大統領の選挙当選無効訴訟をめぐる選挙高等裁判所の判断を控えて、警戒感からレアル売りがやや優勢な展開となった。

(ウ)月の後半は、労働法改正案が上院の委員会で否決されたことや原油価格の下落が嫌気され、レアルは1ドル=3.3レアル台まで下落した。その後は、1ドル=3.3レアルを挟んでもみ合う展開が続いた。月末は1ドル=3.3082レアルで取引を終えた(前月比2.5%のドル高・レアル安)。

 

(5)株式市場

(ア)6月の伯の株式相場(Ibovespa指数)は、月の半ば過ぎまでは内政動向の不確実性の高まりから軟調に推移したものの、月末にかけて資源価格の持ち直し等が好感されて値を戻す展開となった。

(イ)月の前半は、内政動向の不確実性が主な取引材料となり、株価はやや軟調に推移した。

(ウ)月の後半は、労働法改正案が上院の委員会で否決されたことや原油価格の下落が嫌気され、株価指数は一時60,000ポイント台まで下落した。その後は、資源価格の持ち直し等から買戻しの動きも入った。月末の株価指数は62,899.97ポイントとなり、前月比+0.3%の上昇となった。