最近の経済情勢 2016年7月号

平成28年9月28日

(1)経済情勢等(6月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,6月24日時点では,本年の経済成長率は▲3.44%で先週から横ばい,明年の経済成長率は1.00%とされた。また,本年のインフレ率見通しは7.29%で6週連続の上方修正,明年のインフレ率見通しは5.50%とされた。

(イ)5月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.78%となり,前月の0.61%から上昇し,2か月連続の上昇となった。居住費が+1.79%,食料・飲料費が+0.78%,保健・衛生費が+1.62%となったことが寄与した。また,本年当初からの累計で4.05%,12か月累計で9.32%の上昇となり,依然として政府のインフレ目標の上限である6.5%を上回る水準となっている。

(ウ)4月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲7.2%で26か月連続のマイナス,前月比では+0.1%となり,2か月連続のプラスとなった。

(エ)5月の貿易収支は,輸出額は175.71億ドル(前年同月比+4.8%,前月比+14.3%),輸入額は111.34億ドル(前年同月比▲20.5%,前月比+5.9%)で,差し引き64.37億ドルで15か月連続の貿易黒字となり,5月としては過去最高の黒字額を記録した。

(オ)4月の小売売上高は,前年同月比▲6.7%で13か月連続のマイナス,前月比では+0.5%となり,2か月ぶりにプラスとなった。

(カ)全国の失業率(3~5月の移動平均)は11.2%となり,前回の公表値(2~4月の移動平均)から横ばいであった。
 

(2)経済政策等

(ア)6月7日,キンテラ運輸・港湾・民間航空大臣は,交通分野のコンセッション入札に参加する投資家に対して,より大きなリターンを保証するよう準備を行っている旨発言した。同大臣によると,投資家の関心を引くため,入札計画は再構築され,新たな政策パッケージが発表されることとなる。

(イ)6月14日,伯財務省は,公的機関全体の歳出額の上限を前年の歳出額に前年のインフレ率を加味した金額とする憲法修正案を発表した。

(ウ)6月24日,伯財務省は,英国のEU離脱(Brexit)を問う国民投票で離脱派勝利の結果を受けて,伯は十分な外貨準備高を有しており,経済状況は堅固で安全である等コメントしたプレスリリースを発出した。

(エ)6月29日,メイレレス財務大臣は,2017年度のプライマリーバランス目標は本年度に続いて赤字となり,成長のために上限を設ける歳出のみならず,歳入に関する現実的な見直しも考慮されると発言した。
 

(3)中銀の金融政策等

(ア)6月8日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨を全会一致で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は7会合連続となった。

(イ)6月8日,ゴールドファイン氏の中銀総裁就任が連邦議会上院において正式に承認された。

(ウ)6月13日,ゴールドファイン中銀総裁は,総裁就任演説において,これまで実施されてきた,いわゆる新3本柱(拡張的な財政政策,低利融資による貸付け拡大,中銀の介入を伴う為替相場)から,かつての3本柱である,プライマリーバランス黒字目標,インフレターゲット,自由な為替相場に戻すべきであるという点は事実上コンセンサスとなっており,それによって遠くない将来に,ブラジルの経済は回復し,社会は発展すると語った。

(エ)6月29日,中銀は四半期インフレ報告書を発表し,基本シナリオ(為替レート:1ドル=3.45レアル,政策金利(Selic):14.25%)に基づく本年のインフレ率は6.9%,明年は4.7%,2018年第2四半期は4.2%になるとし,GDP成長率については,本年は▲3.3%と予測しており,前回3月の報告書による見通しから0.2%上方修正した。

(オ)6月30日,国家通貨審議会(注:財務大臣(議長),企画予算大臣及び中銀総裁で構成される金融システムに関する国の最高機関)は,2018年度の政府のインフレ目標を従来通り4.5%にするとともに,目標レンジを2017年度と同様に±1.5%に設定すると決定した。
 

(4)為替市場

(ア)6月のドル・レアル為替相場は,前半は米国の早期利上げ観測の後退,後半はBrexitを問う国民投票を主な取引材料として,乱高下しつつも大幅なドル安・レアル高が進行する流れとなった。

(イ)月の前半は,予想比で弱い米国の雇用統計を受けて早期利上げの観測が後退したことに加え,正式に中銀総裁に就任したゴールドファイン氏が為替介入に消極的との見方が広がったことから,8日には1ドル=3.3レアル台まで一気にドル安・レアル高が進行した。その後は,23日のBrexitを問う国民投票を控えて世界的にリスクオフの動きが強まり,1ドル=3.5レアル近くまでレアル安が進行した。

(ウ)月の後半は,英国のEU残留期待が強まり,世界的にリスクオンの流れになったことから,再びドル安・レアル高が進行した。その後は,Brexitを問う国民投票で離脱派勝利の結果を受け,全面的なリスクオフの流れの中でもレアルの下落はわずかにとどまり,月末にかけては米国の早期利上げ観測がさらに後退したことから,急速なドル安・レアル高が進行した。月末は1ドル=3.2130レアルで取引を終えた(前月比▲11.0%のドル安・レアル高)。
 

(5)株式市場

(ア)6月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,米国の早期利上げ観測の後退やBrexitを問う国民投票等を主な取引材料として,乱高下しつつも上昇基調の値動きとなった。

(イ)月の前半は,米国の早期利上げ観測が後退したことが好感され,株価は50,000ポイントを回復した。その後は,Brexitを問う国民投票を控えてリスクオフの流れが強まり,株価は一時48,000台まで下落した。

(ウ)月の後半は,英国のEU残留期待が強まったことに加えて,政府による財政再建の取組等が好感され,株価は上昇基調となった。その後,Brexitを問う国民投票で離脱派勝利の結果を受けて世界同時株安の展開となり,株価は一時50,000ポイントを割ったものの,月末にかけては買戻しの動きが強まり,原油価格の上昇も好感され株価は堅調に推移した。月末の株価は51,527ポイントとなり,前月比+6.3%の上昇となった。