最近の経済情勢 2017年5月号

平成29年5月19日
ブラジル・マクロ経済情勢
(1)経済情勢等(4月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場
 

1.経済情勢等(4月発表の経済指標)

(1)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し、4月20日時点では、本年のGDP成長率は0.43%で先週から上方修正、明年のGDP成長率は2.50%とされた。また、本年のインフレ率見通しは4.04%で7週連続の下方修正、明年のインフレ率見通しは4.32%とされた。

(2)3月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.25%となり、前月の0.33%からやや下落した。また、過去12か月累計で4.57%となり、政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の中央値付近で推移している。

(3)2月の鉱工業生産指数は、前年同月比▲0.8%で2か月ぶりにマイナスに転じた一方、前月比では+0.1%となり、2か月ぶりにプラスに転じた。

(4)3月の貿易収支は、輸出額は200.85億ドル(前年同月比+25.6%、前月比+29.8%)、輸入額は129.40億ドル(前年同月比+11.9%、前月比+18.6%)で、差引き71.45億ドル(前年同月比+61.2%、前月比+56.8%)となり、25か月連続の貿易黒字を記録し、単月ベースでは史上最高の黒字額を記録した。

(5)2月の小売売上高は、前年同月比▲3.2%で23か月連続のマイナス、前月比でも▲0.2%となり、3か月連続でマイナスを記録した。

(6)全国の失業率(1~3月の移動平均)は13.7%となり、前回の公表値(12~2月の移動平均)から0.5%上昇して5か月連続で悪化し、2012年に統計を開始して以来の最高値を更新した。
 

2.経済政策等

(1)4月5日、テメル大統領はラジオ番組のインタビューに応じ、連邦政府により提出された一連の経済対策により、国際的な格付会社によりブラジルの格付は投資適格級の回復に近づいていると発言した。

(2)4月10日、財務省及び企画開発行政管理省は,2017年度LDO(予算編成方針法:予算の基本的構造やプライマリーバランス等の財政上の目標を規定)案を発表し、2018年の連邦政府のプライマリーバランス赤字額は▲1,290億レアルの赤字(GDP比▲1.8%)として、2017年の目標である▲1,390億レアルの赤字(同▲2.1%)より改善するとされた。

(3)4月19日、マイア下院議員は、連邦議会下院特別委員会において、女性の受給開始年齢を原案の65歳から62歳に引き下げる等の修正を行った年金制度改革に関する憲法改正案の報告書を提出した。

(4)4月26日、連邦議会下院は、労働時間、休暇の分割取得といった16の事項については労使間の協定が法律に優先しうること等を規定した労働法改正案を可決した。
 

3.中銀の金融政策等

(1)4月12日、中銀の金融政策委員会(Copom)は、政策金利(Selic)を1.00%引き下げて11.25%とする旨を全会一致で決定した。なお、政策金利の引下げの決定は5会合連続となった。

(2)4月17日、ゴールドファイン中銀総裁は、構造調整を伴う政策金利(Selic)の下落は信用コストの低下につながり、信用コストの構造的・持続的な低下は、経済の効率性・生産性を向上させるミクロ経済改革の一環であると発言した。
 

4.為替市場

(1)4月のドル・レアル為替相場は、引き続き1ドル=3.0~3.1レアル台の比較的狭いレンジで徐々にドル高・レアル安が進行する展開となった。

(2)月の前半は、年金制度改革案の議会審議が難航しているとの報道等を受けて、レアルはやや軟調に推移した。

(3)月の後半は、北朝鮮情勢をめぐる地政学リスクの後退と中銀による事実上のドル売り・レアル買いの介入によりレアルが上昇する場面があったものの、年金制度改革に関する憲法改正案の採決が先送りされたこと等が失望され、その後はやや軟調に推移した。月末は1ドル=3.1768レアルで取引を終えた(前月比1.8%のドル高・レアル安)。
 

5.株式市場

(1)4月の伯の株式相場(Ibovespa指数)は、前半は内政動向の停滞を受けて下落したものの、後半は世界的なリスクオンの動きにより上昇して値を戻す展開となった。

(2)月の前半は、年金制度改革案の議会審議が難航しているとの報道や大規模な汚職捜査の影響が懸念されたことで、株価指数は一時62,000ポイント台まで続落した。

(3)月の後半に入り、北朝鮮情勢をめぐる地政学リスクの後退や仏大統領選の第一回投票の結果を受けて世界的にリスクオンの動きが広がったこと等を受けて、株価指数は堅調に推移した。月末の株価指数は65,403.25ポイントとなり、前月比+0.6%の上昇となった。