最近の経済情勢 2017年4月号
平成29年4月17日
ブラジル・マクロ経済情勢
(1)経済情勢等(3月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場
(2)伯地理統計院(IBGE)が発表した2016 年第4四半期(10~12 月)のGDP 成長率は、前年同期比▲2.5%で11 期連続のマイナス、前期比▲0.9%で8期連続のマイナスを記録した。この結果、2016 年のGDP 実質成長率は▲3.6%となり、2015 年の▲3.8%からわずかに改善したものの、2年連続で大幅なマイナス成長を記録した。また、2016 年の名目GDP は6兆2,669 億レアル、1人当たりの名目GDP は30,407 レアル、1人当たりの実質GDP は前年比▲4.4%となった。
(3)2月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.33%となり、前月の0.38%からやや下落し、前年同月の0.90%を大きく下回る水準となった。また、過去12 か月累計で4.76%となり、政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の範囲内で推移している。
(4)1月の鉱工業生産指数は、前年同月比+1.4%で35 か月ぶりにプラスに転じた一方、前月比では▲0.1%となり、3か月ぶりにマイナスに転じた。
(5)2月の貿易収支は、輸出額は154.72 億ドル(前年同月比+16.0%、前月比+3.8%)、輸入額は109.12 億ドル(前年同月比+5.9%、前月比▲10.5%)で、差引き45.60 億ドル(前年同月比+49.9%、前月比+67.7%)となり、24 か月連続の貿易黒字を記録した。
(6)1月の小売売上高は、前年同月比▲7.0%で22 か月連続のマイナス、前月比でも▲0.7%となり、2か月連続でマイナスを記録した。
(7)全国の失業率(12~2月の移動平均)は13.2%となり、前回の公表値(11~1月の移動平均)から0.6%上昇して4か月連続で悪化し、2012 年に統計を開始して以来の最高値を更新した。
(2)3月6日、テメル大統領は、10 日から開始されるFGTS(勤続年数保障基金:雇用者が、各従業員の給与支払額に応じて各従業員名義の専用口座に預金しておくための基金)の休眠口座からの引き出しにより、ブラジル経済に少なくとも300 億レアルが注入され、借金の支払い、家族のレジャー活動又は将来の投資に活用される追加的収入になると発言した。
(3)3月7日、メイレレス財務大臣は、経済社会開発審議会(経済・社会政策の方針を決めるため、政府、労働者、雇用者、研究者等が集まり議論する政府の審議会)の会合において、ブラジル経済は回復の兆候を示しており、政府の施策により本年第1四半期にも回復軌道に戻るであろうと発言した。
(4)3月7日、大統領府は、新たなPPI(投資パートナーシップ・プログラム)を発表し、エネルギー、交通及び衛生分野に集中するプロジェクトの投資総額は450 億レアルと予測され、直接・間接的に20 万人の雇用を創出するとした。
(5)3月8日、メイレレス財務大臣は、一部報道にあった外国為替取引に課税される金融取引税(IOF)の増税について、政府としては検討していないとして否定したうえで、年金制度改革の議会承認には楽観的であり、憲法改正案は4月にも下院で採決されるだろうと発言した。
(6)3月16 日、テメル大統領は、格付会社のムーディーズがブラジルの格付見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げたことと、PPI に含まれる4空港のコンセッションが成功したことは、ブラジル経済に対する信頼回復の表れであると発言した。
(7)3月21 日、大統領府は、連邦議会で審議中の年金制度改革案について、州政府及び市政府の職員を改革案の適用対象から除外した修正案を提出する旨発表した。
(8)3月22 日、財務省は、2017 年のGDP 成長率見通しをこれまでの1.0%から0.5%に下方修正すると発表した。また、連邦議会に提出したプライマリー収支評価報告書によれば、現時点での2017 年度のプライマリーバランス見通しは▲1,972 億レアルの赤字(政府目標は▲1,390 億レアルの赤字)になり、財源不足は582 億レアルに達すると発表した。
(9)3月29 日、財務省及び企画開発行政管理省は、2017 年度のプライマリーバランス目標を達成するため、現時点で見込まれる財源不足の582 億レアルについて、歳出削減により421 億レアル、歳入増加策により161 億レアルをそれぞれ捻出して埋め合わせると発表した。
(10)3月31 日、テメル大統領は、ディオゴ・オリヴェイラ企画開発行政管理大臣代行を正式に企画開発行政管理大臣に任命した。同氏は2016 年5月以来、大臣代行を務めてきた。
(2)3月30 日、中銀はインフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し、2017 年のGDP 成長率見通しを0.5%(前回報告書(12 月)では0.8%)に下方修正した。また、条件付インフレ予測は、2017 年は4.0%、2018 年は4.5%、2019 年第1四半期は4.6%とした。なお、マーケットシナリオにおけるインフレ予測は、2017 年は4.1%、2018 年は4.5%、2019 年以降は4.5%をわずかに下回るとされている。
(2)月の前半は、米国の早期利上げ観測を受けてレアルが下落したほか、金融取引税(IOF)の増税報道や原油価格の下落が嫌気され、一時1ドル=3.2 レアル近くまでレアル安が進んだ。その後は、米国のFOMC 会合を控えて小動きとなった。
(3)月の後半に入り、米国の利上げペース加速への警戒感が後退したことで、1ドル=3.0 レアル台までレアル高が進んだ。その後は、年金制度改革をめぐる政局の不透明感を背景に反落する場面があったもの、方向感のないまま推移した。月末は1ドル=3.1220 レアルで取引を終えた(前月比0.4%のドル高・レアル安)。
(2)月の前半は、予想比で弱い2016 年第4四半期のGDP 成長率や原油価格の下落が嫌気され、株価指数は64,000 ポイント台まで続落した。
(3)月の後半に入り、米国の利上げペース加速の観測が後退したことが好感されて反騰する場面もあったものの、食肉不正問題や原油価格の下落が嫌気されて続落し、株価指数は一時62,000ポイントまで大きく下落した。その後は、値頃感から買戻しの動きが入ったことや、鉄鋼大手バーレ社のCEO 交代等が好感され、株価指数は堅調に推移した。月末の株価指数は64,984.07 ポイ
ントとなり、前月比▲2.5%の下落となった。
(1)経済情勢等(3月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場
1.経済情勢等(3月発表の経済指標)
(1)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP 成長率予測に関し、3月 24 日時点では、本年のGDP 成長率は0.47%で先週から下方修正、明年のGDP 成長率は2.50%とされた。また、本年のインフレ率見通しは4.12%で3週連続の下方修正、明年のインフレ率見通しは4.50%とされた。(2)伯地理統計院(IBGE)が発表した2016 年第4四半期(10~12 月)のGDP 成長率は、前年同期比▲2.5%で11 期連続のマイナス、前期比▲0.9%で8期連続のマイナスを記録した。この結果、2016 年のGDP 実質成長率は▲3.6%となり、2015 年の▲3.8%からわずかに改善したものの、2年連続で大幅なマイナス成長を記録した。また、2016 年の名目GDP は6兆2,669 億レアル、1人当たりの名目GDP は30,407 レアル、1人当たりの実質GDP は前年比▲4.4%となった。
(3)2月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.33%となり、前月の0.38%からやや下落し、前年同月の0.90%を大きく下回る水準となった。また、過去12 か月累計で4.76%となり、政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の範囲内で推移している。
(4)1月の鉱工業生産指数は、前年同月比+1.4%で35 か月ぶりにプラスに転じた一方、前月比では▲0.1%となり、3か月ぶりにマイナスに転じた。
(5)2月の貿易収支は、輸出額は154.72 億ドル(前年同月比+16.0%、前月比+3.8%)、輸入額は109.12 億ドル(前年同月比+5.9%、前月比▲10.5%)で、差引き45.60 億ドル(前年同月比+49.9%、前月比+67.7%)となり、24 か月連続の貿易黒字を記録した。
(6)1月の小売売上高は、前年同月比▲7.0%で22 か月連続のマイナス、前月比でも▲0.7%となり、2か月連続でマイナスを記録した。
(7)全国の失業率(12~2月の移動平均)は13.2%となり、前回の公表値(11~1月の移動平均)から0.6%上昇して4か月連続で悪化し、2012 年に統計を開始して以来の最高値を更新した。
2.経済政策等
(1)3月2日、テメル大統領は、健康上の理由で辞表を提出したジョゼ・セーハ前外務大臣に代わり、新たにアロイジオ・ヌネス上院議員(PSDB)を外務大臣に指名した。(2)3月6日、テメル大統領は、10 日から開始されるFGTS(勤続年数保障基金:雇用者が、各従業員の給与支払額に応じて各従業員名義の専用口座に預金しておくための基金)の休眠口座からの引き出しにより、ブラジル経済に少なくとも300 億レアルが注入され、借金の支払い、家族のレジャー活動又は将来の投資に活用される追加的収入になると発言した。
(3)3月7日、メイレレス財務大臣は、経済社会開発審議会(経済・社会政策の方針を決めるため、政府、労働者、雇用者、研究者等が集まり議論する政府の審議会)の会合において、ブラジル経済は回復の兆候を示しており、政府の施策により本年第1四半期にも回復軌道に戻るであろうと発言した。
(4)3月7日、大統領府は、新たなPPI(投資パートナーシップ・プログラム)を発表し、エネルギー、交通及び衛生分野に集中するプロジェクトの投資総額は450 億レアルと予測され、直接・間接的に20 万人の雇用を創出するとした。
(5)3月8日、メイレレス財務大臣は、一部報道にあった外国為替取引に課税される金融取引税(IOF)の増税について、政府としては検討していないとして否定したうえで、年金制度改革の議会承認には楽観的であり、憲法改正案は4月にも下院で採決されるだろうと発言した。
(6)3月16 日、テメル大統領は、格付会社のムーディーズがブラジルの格付見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げたことと、PPI に含まれる4空港のコンセッションが成功したことは、ブラジル経済に対する信頼回復の表れであると発言した。
(7)3月21 日、大統領府は、連邦議会で審議中の年金制度改革案について、州政府及び市政府の職員を改革案の適用対象から除外した修正案を提出する旨発表した。
(8)3月22 日、財務省は、2017 年のGDP 成長率見通しをこれまでの1.0%から0.5%に下方修正すると発表した。また、連邦議会に提出したプライマリー収支評価報告書によれば、現時点での2017 年度のプライマリーバランス見通しは▲1,972 億レアルの赤字(政府目標は▲1,390 億レアルの赤字)になり、財源不足は582 億レアルに達すると発表した。
(9)3月29 日、財務省及び企画開発行政管理省は、2017 年度のプライマリーバランス目標を達成するため、現時点で見込まれる財源不足の582 億レアルについて、歳出削減により421 億レアル、歳入増加策により161 億レアルをそれぞれ捻出して埋め合わせると発表した。
(10)3月31 日、テメル大統領は、ディオゴ・オリヴェイラ企画開発行政管理大臣代行を正式に企画開発行政管理大臣に任命した。同氏は2016 年5月以来、大臣代行を務めてきた。
3.中銀の金融政策等
(1)3月は政策金利(Selic)を決定する中銀の金融政策委員会(Copom)は開催されていない。次回会合は、4月11・12 日に開催予定。(2)3月30 日、中銀はインフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し、2017 年のGDP 成長率見通しを0.5%(前回報告書(12 月)では0.8%)に下方修正した。また、条件付インフレ予測は、2017 年は4.0%、2018 年は4.5%、2019 年第1四半期は4.6%とした。なお、マーケットシナリオにおけるインフレ予測は、2017 年は4.1%、2018 年は4.5%、2019 年以降は4.5%をわずかに下回るとされている。
4.為替市場
(1)3月のドル・レアル為替相場は、前月に引き続き1ドル=3.0~3.1 レアル台の比較的狭いレンジで推移する展開となった。(2)月の前半は、米国の早期利上げ観測を受けてレアルが下落したほか、金融取引税(IOF)の増税報道や原油価格の下落が嫌気され、一時1ドル=3.2 レアル近くまでレアル安が進んだ。その後は、米国のFOMC 会合を控えて小動きとなった。
(3)月の後半に入り、米国の利上げペース加速への警戒感が後退したことで、1ドル=3.0 レアル台までレアル高が進んだ。その後は、年金制度改革をめぐる政局の不透明感を背景に反落する場面があったもの、方向感のないまま推移した。月末は1ドル=3.1220 レアルで取引を終えた(前月比0.4%のドル高・レアル安)。
5.株式市場
(1)3月の伯の株式相場(Ibovespa 指数)は、年初から続いていた上昇基調に一服感が出て、やや軟調に推移する展開となった。(2)月の前半は、予想比で弱い2016 年第4四半期のGDP 成長率や原油価格の下落が嫌気され、株価指数は64,000 ポイント台まで続落した。
(3)月の後半に入り、米国の利上げペース加速の観測が後退したことが好感されて反騰する場面もあったものの、食肉不正問題や原油価格の下落が嫌気されて続落し、株価指数は一時62,000ポイントまで大きく下落した。その後は、値頃感から買戻しの動きが入ったことや、鉄鋼大手バーレ社のCEO 交代等が好感され、株価指数は堅調に推移した。月末の株価指数は64,984.07 ポイ
ントとなり、前月比▲2.5%の下落となった。