最近の経済情勢 2016年4月号

平成28年5月10日

(1)経済情勢等(3月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,3月24日時点では,本年の経済成長率は▲3.66%で10週連続の下方修正,明年の経済成長率は0.35%で2週連続の下方修正であった。また,本年のインフレ率見通しは7.31%,明年のインフレ率見通しは6.00%とされた。

(イ)2月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.90%となり,前月の1.27%から下落したものの引き続き高い上昇率を記録した。特に,文教費が+5.90%,食料・飲料費が+1.06%となったことが寄与した。

(ウ)1月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲13.8%で23か月連続のマイナス,前月比では+0.1%となった。

(エ)2月の貿易収支は,輸出額は133.5億ドル(前年同月比+10.4%,前月比+18.7%),輸入額は103.1億ドル(前年同月比▲31.0%,前月比▲0.2%)で,差し引き30.4億ドルとなり12か月連続で貿易黒字を記録した。

(オ)1月の小売売上高は,前年同月比▲10.3%で10か月連続のマイナス,前月比でも▲1.5%で2か月連続のマイナスを記録した。

(カ)全国の失業率(客年11~1月の移動平均)は9.5%となり,前月の公表値(客年10~12月の移動平均)から0.5%上昇して4か月ぶりに悪化した。この結果,2015年平均の全国の失業率は8.5%となり,2014年の6.8%から大幅に悪化した。また,国内主要6都市における2月の失業率は8.2%となり,前月から0.6%上昇した。

(2)経済政策等

(ア)3月3日,ブラジル地理統計院(IBGE)は,本年第4四半期(10~12月)のGDP実質成長率は,前期比▲1.4%,前年同期比▲5.9%になったと発表した。また,2015年のGDP実質成長率は前年比▲3.8%,名目GDPは5.90兆レアル(約1.5兆ドル),1人当たりの名目GDPは28,876レアル,1人当たりの実質GDPは前年比▲4.6%になったと併せて発表した。

(イ)3月21日,伯財務省及び企画予算省は,財政運営の質を向上させるため,州政府に対する支援策,歳出上限の設定,重点分野に対する歳出の確保及び中央銀行への預金に対する金利の付与の4つの政策を議会に提出することを発表した。

(ウ)3月23日,伯財務省は,客月19日に発表した2016年度のプライマリーバランス目標の変更につき,再度変更のうえ連邦議会に提案する旨発表し,2016年度のプライマリーバランスの赤字額は最大で966.5億レアル,GDP比▲1.55%に達するとされた。

(3)中銀の金融政策等

3月2日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨賛成多数で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は5会合連続となった。

(4)為替市場

(ア)3月のドル・レアル為替相場は,政権交代期待の高まりに加えて,中国による景気対策への期待感,米国の堅調な経済指標,資源価格の回復等を受けた世界的なリスクオンの流れから,政局関連の報道に反応して乱高下を繰り返しつつも,大幅なドル安・レアル高が進行した。

(イ)上旬は,原油価格の上昇,全人代を控えた中国による景気対策への期待感からレアルが買われたのに加え,ルーラ前大統領の連邦警察による事情聴取及び身柄拘束請求の報道を受け,政権交代観測が高まったとして市場は好意的に反応し,1ドル=3.6レアル台までレアル高が進行した。

(ウ)中旬は,ルーラ前大統領の閣僚就任観測の報道が嫌気され,一時1ドル=3.8レアル台までレアル売りが進行したものの,連邦裁判所がルーラ前大統領の閣僚就任を差止める仮処分を発出したこと等を好感し,一時1ドル=3.5レアル台までレアルが急騰した。

(エ)下旬は,中銀による為替介入(ドル買い・レアル売り)の実施に対する市場の見方が交錯する中で,連邦議会において最大の議席数を占める与党ブラジル民主運動党(PMDB)の政権離脱の動き等を受けて再び政権交代期待が高まり,月末は1ドル=3.5922レアルで取引を終えた(前月比▲10.6%のドル安・レアル高)。
 

(5)株式市場

(ア)3月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,為替市場と同様に,政権交代期待の高まり,原油・鉄鉱石の市況回復及び世界的なリスクオンの動き等を受けて,大幅に上昇する展開となった。

(イ)上旬は,資源価格の上昇により資源関連株が急騰したほか,ルーラ前大統領の連邦警察による事情聴取及び身柄拘束請求の報道を受け,政権交代期待が高まったことから株価は大幅に上昇し,4日は49,000ポイントを回復した。その後も49,000ポイントを挟んで展開となった。

(ウ)中旬は,資源価格の上昇に一服感が出たほか,ルーラ前大統領の閣僚就任観測の報道が嫌気され,一時47,000ポイントまで下落したものの,連邦裁判所がルーラ前大統領の閣僚就任を差止める仮処分を発出したこと等を好感し,50,000ポイント台を回復した。

(エ)下旬は,失業率の大幅な悪化等を受けてやや反落する局面もあったものの,米国の早期追加利上げ観測が後退したことと,PMDBの政権離脱の動き等を受けて政権交代期待が高まり,株価は堅調に推移した。月末の株価は50,055ポイントとなり,前月比+17.0%の大幅な上昇となった。