最近の経済情勢 2018年3月号

平成30年3月7日
ブラジル・マクロ経済情勢

(1)経済情勢等(2月発表の経済指標)
(2)経済政策等
(3)中銀の金融政策等
(4)為替市場
(5)株式市場

 

(1)経済情勢等(2月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し,2月23日時点では,2018年のGDP成長率は2.89%で2週連続の上方修正,2019年のGDP成長率は3.00%とされた。また,2018年のインフレ率見通しは3.73%で4週連続の下方修正,2019年のインフレ率見通しは4.25%とされた。

(イ)ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した2017年第4四半期(10~12月)のGDP成長率(速報値)は,前年同期比+2.1%で3四半期連続のプラス,前期比+0.1%で4四半期連続のプラスを記録した。この結果,2017年のGDP成長率は+1.0%となり,2年連続の大幅なマイナス成長(注:2015年,2016年ともに▲3.5%)から脱して,3年ぶりにプラスを記録した。また、2017年の名目GDPは6兆5,599億レアル,1人当たりの名目GDPは31,587レアル,1人当たりの実質GDPは前年比+0.2%となった。

(ウ)12月の鉱工業生産指数は,前年同月比+4.3%で8か月連続でプラスを記録したほか,前月比では+2.8%となり,4か月連続でプラスを記録した。この結果,2017年通年の鉱工業生産指数は前年比+2.5%となり,4年ぶりにプラスに転じた。

(エ)12月の小売売上高は,前年同月比+3.3%で9か月連続でプラスを記録したほか,前月比では▲1.5%となり,2か月ぶりにマイナスに転じた。この結果,2017年通年の小売売上高は+2.0%となり,3年ぶりにプラスに転じた。

(オ)全国の失業率(11~1月の移動平均)は12.2%となり,前回の公表値(10~12月の移動平均)から0.4%上昇して10か月ぶりに悪化した。

(カ)1月の貿易収支は,輸出額は169.68億ドル(前年同月比+13.8%,前月比▲3.6%),輸入額は141.99億ドル(前年同月比+16.4%,前月比+12.7%)で,差引き27.68億ドル(前年同月比+2.1%,前月比▲44.6%)となり,35か月連続で貿易黒字を記録した。

(キ)1月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.29%となり,前月の0.44%から下落した。また,過去12か月累計では2.86%となり,政府のインフレ目標(4.5%±1.5%)の下限値を下回る水準で推移している。

 

(2)経済政策等

(ア)2月5日,テメル大統領は,2018年会期連邦議会の開会にあたり書簡を送付し,年金制度改革は国の将来にとって重要な課題であり,現行制度は社会的には不平等であり,財政的には持続可能なものではないとして,改革案の承認の必要性を強調した。

(イ)2月16日,テメル大統領は,リオデジャネイロ州の治安部門に連邦政府が介入する大統領令に署名した。なお,連邦による州への介入期間中の憲法改正を禁止する憲法第60条の規定により,年金制度改革に関する憲法改正案の採決は事実上困難となった。

(ウ)2月19日,政府は,ブラジル経済に関する15の優先課題を発表するとともに,リオデジャネイロ州に対する連邦政府の介入が決定されたことを受けて,年金制度改革に関する憲法改正案の下院本会議における採決が延期されたことについても併せて発表した。

(エ)2月23日,格付会社フィッチ社は,ブラジルの長期国債(外貨及び内貨建て)の格付けを"BB"から"BB-"(投資適格級から3段階下の格付け)に1段階引下げるとともに,格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。

 

(3)中銀の金融政策等

     2月7日,中銀の金融政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を0.25%引き下げて年率6.75%とする旨を全会一致で決定した。なお,政策金利の引下げの決定は11会合連続となった。

 

(4)為替市場

(ア)2月のドル・レアル為替相場は,上旬に世界的なリスクオフの動きを受けてレアルは大幅に下落した後,中旬以降は1ドル=3.2レアル台の狭いレンジで推移する展開となった。

(イ)月の前半は,米国の長期金利上昇等を受けて世界的なリスクオフの動きが強まり,一時1ドル=3.3レアル台までレアル安が進行した。その後は,ブラジルのカーニバル期間中に一転してドル安の流れになったことから,休場明けは1ドル=3.2レアル台まで戻した。

(ウ)月の後半は,政府が年金制度改革の先送りを発表したものの特段の材料視はされず,1ドル=3.2レアル台の狭いレンジでの小動きとなった。月末は1ドル=3.2475レアルで取引を終えた(前月比1.9%のドル高・レアル安)。

 

(5)株式市場

(ア)2月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,上旬に世界的な株安の影響で大幅に下落した後,中旬以降はリスクオンの動きが強まり反騰する展開となった。

(イ)月の前半は,米国の長期金利上昇に端を発した世界同時株安の様相を呈したことから,株価指数は一時80,000ポイント台まで下落した。その後は,ブラジルのカーニバル期間中にリスクセンチメントが改善したこともあり,休場明けの14日に株価指数は83,000ポイント台を回復した。

(ウ)月の後半は,世界的なリスクオフの動きが後退したことに加えて,原油価格の回復や企業決算への期待から上昇基調が強まり,株価指数は史上最高の87,000ポイント台まで上昇した。月末の株価指数は85,353.59ポイントとなり,前月比+0.5%の上昇となった。