最近の経済情勢 2017年2月号

平成29年2月10日

(1)経済情勢等(1月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し,1月27日時点では,本年のGDP成長率は0.50%で5週連続の横ばい,明年のGDP成長率は2.20%とされた。また,本年のインフレ率見通しは4.70%で4週連続の下方修正,明年のインフレ率見通しは4.50%とされた。

(イ)12月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.30%となり,前月の0.18%から上昇した。交通費(+1.11%)の高騰が寄与した。この結果,2016年累積のIPCAは6.29%となり,政府のインフレ目標(4.5%±2%)の範囲に収まった。

(ウ)11月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲1.1%で33か月連続のマイナス,前月比では+0.2%となり,2か月ぶりにプラスに転じた。

(エ)12月の貿易収支は,輸出額は159.41億ドル(前年同月比▲5.0%,前月比▲1.7%),輸入額は115.25億ドル(前年同月比+9.3%,前月比+0.5%)で,差引き44.15億ドル(前年同月比▲29.2%,前月比▲7.2%)で22か月連続の貿易黒字を記録した。また,2016年通年の輸出額は1,852.35億ドル(前年比▲3.1%),輸入額は1,375.52億ドル(前年比▲19.8%)で,差引き476.83億ドル(前年比+142.2%)と過去最高の貿易黒字を記録した。

(オ)11月の小売売上高は,前年同月比▲3.5%で20か月連続のマイナス,前月比では+2.0%となり,5か月ぶりにプラスに転じた。

(カ)全国の失業率(10~12月の移動平均)は12.0%となり,前回の公表値(9~11月の移動平均)から0.1%上昇して2か月連続で悪化し,2012年に統計を開始して以来の最高値を更新した。また,2016年平均の失業率は11.5%となり,2015年の8.5%から大幅に悪化した。

 

(2)経済政策等

(ア)1月17日,メイレレス財務大臣は,スイス・ダボスで開催されている世界経済フォーラムに出席し,改革の重要性とブラジルに対する高い関心を強調しつつ,ブラジルのおかれている危機を克服する措置により,本年第1四半期にも成長を回復するとともに,全国の失業率も徐々に回復すると発言した。

(イ)1月31日,財務省は,2016年度の連邦政府のプライマリーバランス赤字が▲1.542.55億レアルとなり,目標の▲1,704.96億レアルを上回ったと発表した。

 

(3)中銀の金融政策等

(ア)1月11日,中銀の金融政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を0.75%引き下げて13.00%とする旨を全会一致で決定した。なお,政策金利の引下げの決定は3会合連続となった。

(イ)1月31日,ゴールドファイン中銀総裁は,サンパウロで開催された投資家との会合にテメル大統領と共に出席し,長期的なインフレ目標は他の新興国と同様に3%前後に近づくと発言した。

 

(4)為替市場

(ア)1月のドル・レアル為替相場は,議会休会中で国内の材料が乏しい中で,ドルの軟調を受けて相対的にレアルが緩やかに上昇する展開となった。

(イ)月の前半は,トランプ次期米大統領の発言等への警戒感からドルが軟調に推移したことに加え,堅調な資源価格や各種経済指標が好転したことを受けて,1ドル=3.1レアル台までレアル高が進んだ。

(ウ)月の後半は,英国のハードブレグジット懸念からリスクセンチメントが後退し,一時的に1ドル=3.2レアル台に戻したものの,中銀による事実上のドル売り・レアル買いの介入でレアル安の動きに歯止めがかかった。その後は,トランプ米大統領の保護主義的な政策への警戒感が広がり,レアルは再び上昇基調に入った。月末は1ドル=3.1486レアルで取引を終えた(前月比3.3%のドル安・レアル高)。

 

(5)株式市場

(ア)1月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,ほぼ一貫して上昇する値動きとなった。

(イ)月の前半は,好調な資源価格等を背景に,株価は上昇基調でスタートした。その後も,各種経済指標が好転したことに加え,中銀が市場の予測を超える利下げに踏み切ったことが好感され,株価は63,000ポイント台まで続伸した。

(ウ)月の後半は,トランプ米大統領の就任式を控えて小動きが続いたものの,就任式後は大手金融機関の好決算等を材料に,株価は一時66,000ポイントまで急速に上昇した。その後は,高値を警戒した利食い売りも入ったことで,月末の株価は64,670.78ポイントとなり,前月比+7.4%の上昇となった。