最近の経済情勢 2016年2月号
平成28年3月1日
(1)経済情勢等(1月発表の経済指標)
(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく経済成長予測に関し,1月22日時点では,本年の経済成長率は▲3.00%で先週からほぼ横ばい,明年の経済成長率は0.80%で先週から下方修正となった。また,本年のインフレ率見通しは7.23%,明年のインフレ率見通しは5.65%とされた。(イ)1月19日,IMFは世界経済見通し(WEO)の改訂版を発表し,ブラジル経済の本年の成長率予測は▲3.5%とされ,前回発表の客年10月の報告書における▲2.5%から大幅に下方修正された。
(ウ)12月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.96%となり,前月の1.01%に引き続いて高い上昇率を記録した。特に,食料・飲料費が1.50%増,交通費が1.36%増となったことが寄与した。この結果,2015年累積のIPCAは10.67%の上昇となり,政府のインフレ目標の上限である6.5%を大幅に上回った。
(エ)11月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲12.4%で21か月連続のマイナス,前月比でも▲2.4%となった。また,同12月の輸出額は167.8億ドル(前年同月比▲4.0%,前月比+21.6%),輸入額は105.4億ドル(前年同月比▲38.7%,前月比▲16.4%)で,差し引き62.4億ドルとなり10か月連続で貿易黒字を記録した。この結果,2015年の貿易収支は196.8億ドルとなり,2年ぶりに通年で貿易黒字を記録した。
(オ)11月の小売売上高は,前年同月比▲7.8%となった一方,前月比では+1.5%と2か月連続でプラスとなった。
(カ)全国の失業率(8~10月の移動平均)は9.0%となり,前月の公表値(7~9月の移動平均)から0.1%上昇して10か月連続して悪化した。また,国内主要6都市における12月の失業率は6.9%となり,前月から▲0.6%下落した。
(2)経済政策等
1月28日,バルボーザ財務大臣は,経済社会開発審議会(経済社会政策の方針を決めるため,政府,労働者,雇用者,研究者等が集まり議論する審議会)において,景気及び雇用の回復を目的とした,合計830億レアルの融資拡大策を発表した。(3)中銀の金融政策等
(ア)1月19日,トンビーニ中銀総裁は,IMFがブラジルの経済成長率予測を下方修正したことを受け,「ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)の決定により,IMFはブラジルの経済成長率見通しを再検討することになる」との書面を公表した。(イ)1月20日,ブラジル中銀の通貨政策委員会(Copom)は,政策金利(Selic)を14.25%に据え置く旨賛成多数で決定した。なお,政策金利を据え置く決定は4会合連続となった。
(4)為替市場
(ア)1月のドル・レアル為替相場は,グローバルなリスクセンチメントの悪化を背景に下落基調となり,ほぼ1ドル=4レアルを超える水準で推移した。(イ)月の前半は,中国株の大幅な下落に端を発したグローバルなリスクセンチメントの悪化により,取引初日から1ドル=4レアル台に突入した。その後は,1ドル=4.0レアル台で小幅な動きとなった。
(ウ)月の後半に入り,大方の市場予測に反して中銀による利上げが見送られたこと等を受けてレアルが売られ,1ドル=4.1レアル台まで下落した。その後,月末にかけて米国が利上げを見送ったこと等を受けて徐々に相場は落ち着きを取り戻し,月末は1ドル=3.9992レアルで取引を終えた(前月比▲1.0%のレアル安・ドル高)。
(5)株式市場
(ア)1月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,為替市場と同様にグローバルなリスクセンチメントの悪化を背景に一貫して下落する流れとなり,月末に少し値を戻す展開となった。(イ)上旬から下旬にかけて,中国株の大幅な下落に端を発する世界同時株安に加えて,原油や鉄鉱石のスポット価格の下落を受け,ほぼ一貫して株価は下落基調となり,26日には終値で37,000ポイント台まで急落した。
(ウ)27日以降,原油価格の上昇や日銀によるマイナス金利導入等を受けてリスクセンチメントが改善し,株価は反騰した。月末の株価は40,406ポイントとなり,前月比▲6.8%の下落となった。