最近の経済情勢 2017年1月号

平成29年1月12日

1.経済情勢等(12月発表の経済指標)

(ア)中銀が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づくGDP成長率予測に関し,12月23日時点では,本年のGDP成長率は▲3.49%で先週から下方修正,明年のGDP成長率は0.50%で10週連続の下方修正とされた。また,本年のインフレ率見通しは6.40%で7週連続の下方修正,明年のインフレ率見通しは4.85%とされた。

(イ)11月の拡大消費者物価指数(IPCA)は単月で0.18%となり,前月の0.26%から下落した。食料・飲料費(▲0.20%)の下落が寄与した。また,本年当初からの累計で5.97%,12か月累計では6.99%の上昇となり,依然として政府のインフレ目標の上限である6.5%をわずかに上回る水準となっている。

(ウ)10月の鉱工業生産指数は,前年同月比▲7.3%で32か月連続のマイナス,前月比では▲1.1%となり,2か月ぶりにマイナスに転じた。

(エ)11月の貿易収支は,輸出額は162.20億ドル(前年同月比+17.5%,前月比+18.2%),輸入額は114.63億ドル(前年同月比▲9.1%,前月比+0.8%)で,差し引き47.58億ドル(前年同月比+297.2%,前月比+103.3%)で21か月連続の貿易黒字を記録した。

(オ)10月の小売売上高は,前年同月比▲8.2%で19か月連続のマイナス,前月比でも▲0.8%となり,4か月連続のマイナスを記録した。

(カ)全国の失業率(9~11月の移動平均)は11.9%となり,前回の公表値(8~10月の移動平均)から0.1%上昇して3か月ぶりに悪化した。
 

2.経済政策等

(ア)12月6日,大統領府は,年金制度改革に関する憲法改正案を連邦議会に提出し,年金支給開始年齢は男女ともに65歳,受給資格期間は25年間とすること等を発表した。

(イ)12月13日,連邦議会上院は,歳出に上限を設定する憲法改正案について2回目の票決を行い,賛成53票,反対16票の多数で可決した(同15日に公布)。

(ウ)12月15日,テメル大統領は,大統領府で行われた記者会見において,成長回復と雇用創出のための連邦政府による経済活性化措置を発表した。

(エ)12月15日,連邦議会は,2017年度の連邦政府予算案(LOA:年間予算法)を可決した(同27日に大統領が裁可)。歳出総額は約3兆5千億レアルのうち,利払費及び債務償還費は約1兆7千億レアル,連邦政府職員の人件費は3,069億レアル,国営企業向け公共投資は900億レアル,社会保障その他向けの公共投資は583億レアルを占めている。また,2017年度の最低賃金は945.80レアルとされた。なお,本予算では,2017年度のGDP成長率は1.3%,インフレ率は4.8%と推計している。

(オ)12月20日,連邦議会下院は,州政府の連邦政府に対する債務の再交渉に関する法案を可決した。

(カ)12月22日,労働省は,労使間協定の一部について法律と同様の効力を有すること等を規定した労働法改正案を発表した。

(キ)12月28日,大統領府は,テメル大統領が,同20日に連邦議会が可決した州政府の連邦政府に対する債務の再交渉に関する法案に対して部分的に拒否権を発動すると発表した。

(ク)12月29日,テメル大統領は,年末の国民向けメッセージにおいて,2017年はブラジルが経済危機を克服し,成長を取り戻す年になると発言した。
 

3.中銀の金融政策等

(ア)12月は政策金利(Selic)を決定する中銀の金融政策委員会(Copom)は開催されていない。次回会合は,1月10・11日に開催予定。

(イ)12月20日,中銀は,金融システムに関する構造的問題改善のための措置を発表した。

(ウ)12月22日,中銀はインフレ報告書(四半期に一度公表)を発表し,2016年のGDP成長率見通しを▲3.4%(前回報告書(9月)では▲3.3%),2017年のGDP成長率見通しを0.8%(同1.3%)とした。また,リファレンスシナリオにおけるインフレ予測は,2016年は6.5%,2017年は4.4%,2018年は3.6%とした。なお,マーケットシナリオにおけるインフレ予測は,2016年は6.5%,2017年は4.7%,2018年は4.5%とされている。
 

4.為替市場

(ア)12月のドル・レアル為替相場は,レアルが緩やかに上昇する展開となった。

(イ)月の前半は,議会で審議中の汚職防止法案をめぐる議会と検察の対立を受けた政情懸念等を受けて,1ドル=3.4レアル台までレアルは下落した。その後は,OPEC加盟国・非加盟国の協調減産合意を受けた原油価格上昇等が好感され,相場は1ドル=3.3レアル台で安定的に推移した。

(ウ)月の後半は,政府による経済活性化措置の発表等が相次いだことが好感され,節目となる1ドル=3.3レアルを割り込んで推移した。月末は1ドル=3.2552レアルで取引を終えた(前月比3.9%のドル安・レアル高)。
 

5.株式市場

(ア)12月のブラジルの株式相場(Ibovespa指数)は,上旬から中旬にかけて緩やかに下落したものの,下旬に入ると改革期待の高まりから回復する値動きとなった。

(イ)月の前半は,為替市場と同様に内政の混乱が嫌気され,株価は60,000ポイントを割り込んでスタートした。その後は60,000ポイントを挟んで小康状態が続いたものの,米国の利上げペースが加速化する観測が高まったこと等を受けて,株価は軟調となった。

(ウ)月の後半は,鉄鉱石価格の下落に加え,エコノミスト等によるGDP成長率予測の下方修正が嫌気され,株価は57,000ポイント台まで下落した。その後は,政府が労働法改正案を発表したことや,テメル大統領が景気の先行きに強気な見通しを示したこと等が好感され,流動性が薄い中で上昇基調に転じた。月末の株価は60,227ポイントとなり,前月比▲2.7%の下落となった。