「野口大使のブラジル便り」第2号
令和8年6月10日
「ブラジルの重要鉱物資源」
ブラジルのレアアースを含む重要鉱物資源が世界の注目を集めている。ブラジルの魅力は、未だ30%しか探査が行われていないにもかかわらず、既にレアアースでは世界第2位の埋蔵量が確認されていることであり、そのポテンシャルは大きいものと考えられている。また、ブラジルの特徴は、岩石ではなく、粘土の中のレアアースであり、より希少価値のある重レアアースを多く含むほか、岩石の中のレアアースよりもより抽出が容易である点も指摘されている。重要鉱物は、リチウムイオン電池、高性能モーター、風力発電のタービン、半導体などの製造に不可欠であり、2050年の炭素中立実現に向けて蓄電池・モーター・半導体などの部品の生産が拡大すると予測されている。他方、一部の国に偏在する傾向にあること、多額の初期投資が必要になる場合があること、開発まで長い時間がかかること、現地政府の許認可などの行政手続きが必要になるなどの課題もある。こうした中で、我が国含め各国がブラジルの重要鉱物資源に注目している。世界各国が中国からのレアアース供給に依存しているなか、レアアースの供給源の立ち上げは、我が国にとっても喫緊の課題である。
我が国は、高市政権のもとで経済安全保障を重視している中で、この分野にけるブラジルとの協力関係を深めている。3月9日には、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がゴイアス州政府との間で重要鉱物に関する覚書に署名し、私も立ち会う機会を得た(写真)。この署名を契機として、ゴイアス州での協力を強化することとしている。また、重要鉱物に関してブラジルが重視しているのは、鉱石をただ輸出するのではなく、付加価値をつけた上で輸出することを重視している点である。一方、東芝、双日、CBMM(ニオブの生産・販売を担うブラジル企業)が超急速充電に対応するニオブチタン酸化物を用いた次世代リチウムイオン電池の開発に成功している。
米国の動きも活発である。国務省、財務省、戦争省などの動きが活発であり、国務省は2月初めに各国政府を招いた重要鉱物資源に関する会議をワシントンD.C.で開催した他、在ブラジル米国大使館は、シティバンクなどと共に、3月18日、サンパウロにおいて、各国政府、民間企業などを招いた「ブラジル米重要鉱物資源フォーラム」を開催した。また、米USA Rare Earth 社は4月20日、ブラジル・ゴイアス州でレアアース開発を担うセラベルジ社を28億ドルで買収することを発表した。更に、同じくゴイアス州でレアアース開発を担うアクララ社は、米ルイジアナ州での分離工程を念頭に、バージニア工科大学での実証プラント事業に取り組んでいる。米国務省は、ゴイアス州との間で、重要鉱物資源に関する協力覚書も締結している。米国にとって、ブラジルは重要鉱物に関しても重要なパートナーなのである。
今後とも、ブラジル連邦政府、州政府、民間企業などとも緊密に連携して、我が国の経済安全保障を確保する取り組みをブラジルにおいても着実に実施していきたい。