ブラジル日本商工会議所、日本経済新聞社、サンパウロ州工業連盟主催 外交関係樹立120周年記念セミナーにおける梅田邦夫駐ブラジル大使の挨拶

平成27年9月23日
    ブラジル日本商工会議所、日本経済新聞社、サンパウロ州工業連盟(FIESP)主催 外交関係樹立120周年記念セミナーにおける梅田邦夫駐ブラジル大使の挨拶(2015年9月2日)
 

(はじめに)


    本セミナー主催者たるサンパウロ工業連盟(FIESP)、日本経済新聞社、ブラジル日本商工会議所、本セミナーに協力・後援いただいているエスタード・ジ・サンパウロ紙、ブラジル全国工業連盟(CNI)、ブラジル外務省に対し、日本政府を代表して感謝申し上げます。

    現在、世界は大きな変革期を迎えています。ブラジルで活動する日本企業数は、2009年から2013年の間に倍増し、約7百社となりました、しかしながら、2014年の増加は数社にとどまり、ブラジルの経済が厳しさを増す中、如何にして日本からの投資を増やし、ブラジルの発展に貢献できるかは、大きな課題です。

    本セミナーの開催は、非常に時宜を得たものであり、日伯経済関係を前進するための様々なアイデアを拝聴できると期待しています。

    この機会に、日伯関係の現状とともに、ブラジルへのエールを語らせて頂きます。
 

(1)日本・ブラジル関係


    日ブラジル関係は着実に進展しています。昨年、安倍総理が現役総理として10年ぶりに訪伯し,ルセーフ大統領との首脳会談において、二国間関係を「戦略的グローバル・パートナシップ」として位置づけ、「共同声明」を発出しました。その後、両国政府は着々とフォローアップをおこなっています。

    今年(2015年)、日伯外交関係樹立120周年を迎えており、ブラジル国内では約450の関連行事が開催されています。何百万人のブラジル人に参加いただき、日本文化への理解を深めていただいています。

    今月12日には、「日伯花火祭り」が当地で開催されます。120周年特別事業のために、多くの企業から寄付を頂いており、この場をお借りして感謝申し上げます。一連の行事は、10月末の秋篠宮同妃両殿下のブラジル御訪問、12月初旬のルセーフ大統領の訪日でクライマックスを迎えます。

    政治・安全保障分野では、防衛当局間の交流、安全保障対話が史上初めて開始され、7年ぶりの海上自衛隊練習艦隊のブラジル訪問もありました。国外犯処罰など司法・刑事分野の協力も順調に進んでいます。日本の「交番制度」も導入の動きが拡大しています。

    経済分野では、5月に「賢人会議」がリオで開催され、資源、産業協力、インフラといった優先分野について有益な提言がまとめられ、両国の首脳に報告されました。7月にはヴィエイラ外務大臣、アブレウ農務大臣が訪日し、大統領訪日の準備が既に始まっています。

    また、8月末に東京で開催された「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!2015)」の機会に、ルイザ・トラジャーノ・マガジン・ルイザ社長、青木智恵子・ブルーツリー社長などブラジル人女性経営者33人(ムリェーレス・ド・ブラジルの主力メンバー)が訪日し、総理官邸で安倍総理と懇談されました。

    ペトロブラス汚職事件は、造船分野をはじめ日本企業にも大きな影響を及ぼしています。大統領の指示でタスクフォースが設置されています。対ブラジル投資を考えている多くの日本企業が注視しており、早期解決が望まれます。

    人的交流については、昨年のサッカー・ワールドカップ時には1万5千人の日本人が訪伯しました。現在双方向で約12万人にとどまっている人的交流を拡大するため、日本側はブラジル人一般旅券保持者に対する数次ビザ発行(3年有効)を6月から実施し、伯側も同様の措置を準備中です。

    来年のリオ・オリンピック・パラリンピック、2020年東京大会に向け、人的交流拡大に加え、スポーツ分野の交流も強化したいと考えています。
 

(2)ブラジルへのエール


    ブラジルは、現在、政治・経済両面で大きな困難に直面されています。見方を変えると、ブラジルは大きな変革期にあり、この機会をうまく活用して変貌、飛躍のチャンスを迎えつつあるとも言えます。ブラジルは誇れる点を多々有していますが、本日は3点のみ紹介し、ブラジル頑張れとのエールを送りたいと思います。

    第一点は、ブラジルには民主主義、司法の独立、報道の自由、表現の自由が定着していることです。3月、4月、8月の反政府デモは「平和裏」に行われました。ブラジル政府と議会の関係は、難しい局面を迎えていますが、司法当局は独立してペトロブラス汚職を徹底して追及しています。自由、民主主義、報道の自由といった価値の定着したブラジルは、現在の困難を乗り越え、汚職の少ない、より公正な将来に向けて前進しつつあると考えます。

    第二点は、ブラジルは世界でも最も寛容性と多様性に富んだ社会であることです。人種や宗教の違いをお互いに受け入れ、尊重する社会です。寛容性と多様性を尊重するブラジル社会の持ち味は、多くの人を惹きつける大きな魅力です。

    第三点は、ブラジルの「問題解決力」です。ブラジルは、不毛の地と言われたセハードを大豆等の一大生産地に変貌させ、今や「世界の食料安全保障」に大きな貢献をされています。90年代初めには、ハイパー・インフレを克服し、マクロ経済の安定を達成されました。また、数年前まで大きな遅延が頻発していた航空便は、今や遅れはなくなり、信頼性と利便性は大きく改善されています。

    これらの事例が示すことは、ブラジルの問題克服能力は高いということです。経済の活性化を妨げている複雑な税制等に対する「処方箋」は、ブラジルの専門家はよく理解されています。後は、如何に実行するかです。財政調整および構造調整の取り組みが進展することを期待しています。

    最後に、セミナーの成功、日本・ブラジルの関係強化を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。有難うございました。(了)