トピックス 2018年6月号

ブラジル政治情勢(5月の出来事)

[内政]

[外政]

 

トピックス

 

【内政】

(1)テメル大統領就任2年の総括スピーチ

5月15日,同月12日に大統領就任2年(代行時代を含む)を迎えたテメル大統領は,閣僚や政府機関のトップを集めて過去2年間を総括するスピーチを行った。同大統領は,インフレや雇用指数の改善,利下げ,貿易黒字幅の更新,ペトロブラスの立て直し,歳出上限の導入,労働法改正などを挙げ功績をアピールした。他方,「2年でブラジルは元に戻った」というスローガンには,別の解釈の可能性から「2年でブラジルは後退した」との皮肉も巷でささやかれた。

(2)テメル大統領とバルボーザ元連邦最高裁長官の出馬辞退

5月8日,バルボーザ元連邦最高裁長官は個人的な都合により出馬を辞退することを発表。5月22日,テメル大統領もまた大統領選の出馬を断念し,メイレレス前財務大臣の出馬を支持することを発表した。

(3)テメル政権の支持率と大統領選核候補者の支持率

全国運輸連盟(CNT)が発表した世論調査(5月9日~12日実施,25州127市,2002人対象)によると,テメル政権の支持率は,良い4.3%,悪い71.2%,普通21.8%,分からない2.7%であった。
ルーラが不出馬の場合の大統領選各候補者の支持率は,ボルソナーロ(PSL)18.3%,シルヴァ(REDE)11.2%,ゴメス(PDT)9%,アルクミン(PSDB)5.3%,ディアス(PODEMOS)3%,ハダッド(PT)2.3%,コロル(PTC)1.4%,ダヴィラ(PCdoB)0.9%,ボウロス(PSOL)0.6%,アモエド(NOVO)0.6%,メイレレス(MDB)0.5%,ロシャ(PRB)0.4%,マイア(DEM)が0.2%であった。決選投票ではボルソナーロとシルヴァがぶつかった場合のみ引き分け,その他の組み合わせはボルソナーロが当選となる。

(4)トラック運転手スト

5月21日,ディーゼル価格の値下げを求めるトラック運転手らが抗議活動を開始し,瞬く間に全国各地に広まった。燃料不足による空の便のキャンセル,給油所の閉鎖,交通機関の麻痺,教育機関の休校,医療品や食料品の欠品や価格高騰などが国民生活を11日間もの長きに亘り圧迫した。政府は一度目の合意が不発に終わるやいなや軍隊を投入する論議を呼ぶ決定を行った。二度目のトラック運転手との合意で大幅な譲歩を行いストライキは終了に向かった。

(5)労働省の組合登録不正事件

5月30日,連邦警察は,労働省による労働組合の登録を巡り汚職と不正があったとして、「不正登録オペレーション」を発動し,レオナルド・アランテス労働省次官とロジェリオ・アランテス伯農地改革院(Incra)部長を含む23人の逮捕令状を執行した。

【外政】

(1)伯米関係:ペンス米副大統領の訪伯延期

(ア)5月4日,ペンス副大統領は,5月末乃至7月初めに予定されている米朝首脳会談の準備に集中するため,5月末に予定されていた訪伯を延期した。
(イ)5月22日,サリバン国務副長官が訪伯し,ガルヴァオン外務大臣代行と会談。両社は,両国民のため更なる経済的繁栄と治安維持に向けた共通の取組への支援を再確認。

(2)コロル上院外交・国防委員長の訪朝

コロル上院外交・国防委員長は,4月末から5月初旬にかけ,北朝鮮を訪問(Ri Su Yong最高人民会議外交委員会委員長招聘)。Kim Yong-nam 最高人民会議常任委員会委員長他と会談。

(3)ヌネス外相のアジア歴訪

(ア)ヌネス外務大臣は,5月7日から25日にかけて,シンガポール,タイ,インドネシア,ベトナム,中国(北京,上海),日本,韓国の7か国を訪問。ASEAN諸国では,首相,外相等のハイレベルと会談し,二国間関係強化・協力等について協議。

(イ)中国では,15日,ヌネス大臣は北京において王毅外交部長及び鐘山商務部長と会談し,二国間の戦略パートナーシップの強化を確認。ヌネス大臣は,中国の対伯投資拡大が二国間貿易の拡大に繋がる旨発言。21日,ヌネス外務大臣は,上海において,BRICS新開発銀行(NDB)のカマート総裁と会談。NDB米州地域事務所を本年度中にブラジルに開設することが決定された。

(ウ)日本では,17日,ヌネス大臣は麻生副総理兼財務大臣,河野外相,石井国交大臣と会談。日伯外相会談では,本年の日本人ブラジル移住110周年の機会も生かし,両国関係を更に強化していくことを確認。北朝鮮問題に関して,ヌネス大臣は,国際社会が一致して圧力を継続することの重要性につき,日本の立場に対する支持を表明した。その他,ヌネス大臣は日伯経済委員会メンバーとも会合した。

(エ)韓国では,23日,ヌネス大臣は,李洛淵首相と会談。ヌネス大臣は,韓国政府の伯産豚肉輸入再開決定に謝意を表すと共に牛肉にも同様の決定が行われることに期待を示した。李首相は,韓国産梨の輸入解禁に謝意を示し,イチゴの対伯輸出,造船及び鉄道分野に対する投資に関心を有していると述べた。25日,ヌネス大臣及びリマ産業貿易大臣は,韓・メルコスールFTA交渉開始発表に係る会合に出席した。

(4)中東情勢

5月14日,伯外務省はガザ地区におけるイスラエル軍とパレスチナ人の衝突に関してプレスリリースを発表。当事者双方に対し,穏健化を求めると共に,イスラエルには国際法及び国際人道法を完全に遵守するよう呼びかけた。

(5)ベネズエラ情勢

5月21日,伯外務省は,ベネズエラにおいて5月20日に実施された大統領選挙に関して非難声明を発表。声明では,ベネズエラ政府が自由で,公正で,透明で,民主的な選挙の実現を求める国際社会の度重なる呼びかけに応じなかったことに深い遺憾の意を表明すると共に,同選挙は正統性と信頼性を欠いていたと批判。
 

トピックス

(1)日・ブラジル外相会談

(2)河野外務大臣のサンパウロ訪問

(ア)サンパウロ日系社会との交流 
5月19日夜,サンパウロを訪問中の河野太郎外務大臣は,ブラジル日本文化福祉協会を訪問した。
まず,同協会内にある移民史料館を視察した後,若手日系ブラジル人8名と約45分間の懇談を行った。懇談では,大臣から,日本をルーツとして誇りを持ち,ブラジルに社会に貢献されていることは喜ばしく,日本と日系社会の絆を深めていくためにも,次世代日系社会を率いる皆様の力が不可欠であり,協力を改めてお願いしたい旨述べた。参加者からは,外務省招へい事業による訪日経験について触れつつ,訪日をきっかけとして日系社会におけるボランティア活動に従事するようになった,引き続き日本とブラジルの架け橋としての活動を続けていきたい旨の発言があった。
 
ブラジル日本移民史料館視察   ブラジル日系団体主催歓迎レセプション
ブラジル日本移民史料館視察       ブラジル日系団体主催歓迎レセプション
ブラジル日系団体主催歓迎レセプション   若手日系ブラジル人との懇談
ブラジル日系団体主催歓迎レセプション    若手日系ブラジル人との懇談
(ウ)開拓先没者慰霊碑及び日本館視察
 
5月20日,河野太郎外務大臣は,サンパウロ市内イビラプエラ公園内の開拓先没者慰霊碑及び日本館を視察した。
開拓先没者慰霊碑においては,ブラジル日本都道府県人会連合会幹部の案内の下,献花を行った。引き続き,ブラジル日本文化福祉協会(文協)幹部の案内の下で,日本館敷地内の日伯修好100周年(1995年)記念碑を視察したほか,すべて日本から持ち込まれた資材で建設された純和風の家屋内を視察した。
視察後に行われた懇談では,文協関係者から,日本館とサンパウロ日系社会を巡る歴史について説明があるとともに,「ブラジル日本人移住110周年を控えた本年,河野大臣をお迎えできることは極めて大きな慶事であり,歓迎の意を表したい」旨発言があった。
 
開拓先没者慰霊碑での献花   開拓先没者慰霊碑での献花
開拓先没者慰霊碑での献花   開拓先没者慰霊碑での献花
   日本館視察
日本館視察    日本館視察
 
(3)"フィールドミュージアム"構想に関するプレスツアー(在マナウス総領事館)
 
 5月7日及び8日,JICAブラジル事務所の主催で技術協力プロジェクト「"フィールドミュージアム"構想によるアマゾンの生物多様性保全プロジェクト」の日本メディアを対象としたプレスツアーがマナウス市にて開催された。
INPA本部構内の「科学の家」の内観の一つ   開所となった「フィールド・ステーション」の外観の一つ
INPA本部構内の「科学の家」の内観の一つ    開所となった「フィールド・ステーション」の外観の一つ
 
(ア)全体概要
 
【7日】国立アマゾン研究所(INPA)本部視察
マナティー幼生の飼育水槽で授乳模様を視察後,若年から成体のマナティーの飼育水槽を視察。次に隣接するCasa da Ciência(科学の家:いわゆる自然博物館)にて日伯双方による本件プロジェクトに関する説明の後,同館内展示の視察が行われた。
【8日】クイエイラス・フィールドテーション開所式
マナウス市街西端から片道3時間半の船旅(水路で約120km)を経て,「フィールドステーション」(研究者が比較的長く滞在可能な観察拠点)で開所式が行われた(深い森林のただ中にあり現在陸上からのアクセスは皆無)。冒頭,日伯双方のコーディネーターから事業や本件施設についての説明が行われ,続いて下記2(2)と(3)の代表者が挨拶した。次に協力記念プレートの除幕,昼食をはさんで,地元コミュニティーに書籍(INPA研究者によるアマゾン特有キノコ類の本)の贈呈を行い,周辺観察や懇談を経て閉会した。
 
(イ)参加者
 
以下,総勢7日は約30名,8日は約80名。また,8日のクイエイラスのステーション開所式では科学技術革新通信省(MCTIC)国際部のナナヒラ特別補佐官他,地元コミュニティーの住民も参加した。
(a)メディア:当国駐在の特派員(時事,共同,毎日,日経,読売,TBS),サンパウロ新聞他当地メディア等9名。
(b)日本側:斉藤JICAブラジル事務所長及び宮本次長,関口在マナウス日本国総領事,山中在ブラジル日本国大使館公使。事業カウンターパート機関である京都大学の山極総長(クイエイラスに先乗りしたため8日のみ)及び幸島教授(日本側コーディネーター)等,一部資金援助をしている(株)伊藤忠商事から猪股中南米支配人兼伊藤忠ブラジル会社長及び猪俣伊藤忠本社サステナビリティ推進室長代行,日系旅行会社(クイックリー・トラベル社及びATS社)等。
(c)伯側:事業カウンターパート機関のINPA(国立アマゾン研究所)のルイス・フランサ所長(8日のみ)及びヴェラ・ダ・シルヴァ博士(伯側コーディネーター)等INPAの本件事業関係者。
 
(ウ)意義
 
(a)"フィールドミュージアム"(FM)は動植物をなるべく自然な本来の姿で見られるように創意工夫する,世界でも希有な革新的なコンセプト。研究者の科学的な研究拠点や各保護区等をネットワーク化することから成り立ち,本件で成功すればロールモデルとして他地域での導入も期待できる。本件事業でFMは,(1)INPA本部が所在し市民に開放された施設(科学の家(自然博物館),散策可能な保全林(科学の森),水生哺乳類水槽を含む数種類の動物展示がある),(2)マナウス市街の北方遠郊にある観察タワー,(3)マナウス市街の北西遠郊にあるクイエイラス「フィールドステーション」,等のネットワークから構成される。
(b)また,新概念であるフィールドミュージアムの推進に加え,日本側の先端研究技術(例えば透明度ほぼゼロの水中にて音波探査技術を用いて対象生物個体の運動の様子を解明等)を駆使した共同研究によって,これまで未解明部分の多いアマゾンの生態系(特に水生哺乳類・魚類・熱帯雨林上層部)の理解を進めることも,本件技術協力事業の成果の一つして期待される。
(c)本件協力事業は,学術機関,民間企業とブラジル機関が共同でアマゾンの生態系を保全し,地域社会の持続的発展に寄与(住民も参加)するとともに,生物多様性の研究を行う取り組みであり,その成果は世界に発信できる産官学の連携としても期待できる。とりわけ,同事業を通してアマゾンに生息する動植物等生物多様性について専門家のみならず,国内外の一般の市民が認識できるよう,ネットワークを構築する等啓発活動の強化が目標とされているところ今後の展開に注目したい。